初戦突破
松葉慎平の言った、大夢にしかできないこと・・・
全ての球種とコースを予測し、
まるで精密機械のごとくミートしてバットコントロールする。
あとは反応速度の問題だ。
すべてにおいてリスキーなのをわかっていながら敢えて挑戦するスタイルは好きだぜ。
あれがピッチングにも応用されている。
俺も彼の能力を丸々盗みたかったが、未完成のまま気が付けば今は高校新3年、
それでも追い求め続けていたら甲子園という舞台に立つまでに至った。
幼馴染とはいえ、まだまだ謎な部分が多い。
他の人から理解されないで浮いていたのを知らん顔できるわけないじゃん。
色々つらかっただろうな、大夢。
大夢は塁上からサインを見た。
盗塁、と思いきや好きな時に走っていいぞ、とのこと。
大夢は初球を走った。
ストレートのウエスト気味に投げており、
キャッチャーはスムーズに送球。
大夢はアウトになったが、表情は清々しかった。
監督からはお叱り、ではなく「あのバッテリー警戒してたな、大夢の走塁の前評判高いぞ」
と言って選手たちの笑いを誘っていた。
和やかなベンチワークもさることながら、
試合は7回、8回と進んでいった。
大夢はライトの守備に入り、無難に打球を処理していった。
控え投手とは思えないほどの軽快な動きを実況から観客まで評価していた。
9回に大夢はセカンドゴロに打ち取られるがゲッツーを避けて自ら塁に出た。
ヒットエンドランで軽快な走塁を見せた。3塁ランナーになった。
そして、味方にタイムリーが飛び出し、大夢は初めてホームベースを踏む。
野球やってりゃホームベース踏むことくらい1点入った程度ではあるが、
甲子園、というだけで何か格別なものに聞こえるのだ。
全ての高校球児の憧れる場所だ。
全員がなし得るものではない、貴重な体験だ。
大夢は結局野手出場のみ。
恒輝の活躍も光った。
終盤、九州学院の反撃を振り切って7-4で快勝した。
次の相手は大町岳陽を大差で破った小豆島中央高校に決まった。