甲子園初戦カウントダウン
この日は甲子園に向けて出発の日だ。
榛名は雪が溶け、春の訪れを感じさせる。
ごはんを済ませた大夢はいつも通り朝一のバスで学校に向かう。
「それじゃ行ってきます」
「しっかりやってこいよ!」
玄関の中で親に見送られ、
歩いてバス停に向かい、イヤホンをつけて一番後ろの席に座る。
ほとんどガラガラなので大夢の指定席がそこだった。
大夢は背番号18をつける。
投手としての登録だが、外野手としての出場もあり得る。
甲子園ではどんな活躍をするのか、非常に楽しみだ。
高崎から東京、東京から関西まで新幹線と電車を使い、甲子園に辿り着いた。
初めて見る光景に大夢は心躍らせていた。
中には行ったことあるから新鮮味がないなどと空気の読めない奴もいたが。
春の選抜は全国から選ばれた32校が熱戦を繰り広げる。
北海道 札幌第一
東北 八戸学院光星 石巻工業
関東 横浜 市立船橋 高崎商業 高崎 東海大甲府
東京 創価
北信越 上田西 福井商業
東海 愛工大名電 菰野
関西 関大北陽 北大津 京都すばる 西脇工業 智弁和歌山 福知山成美
中国 関西 如水館 益田翔陽
四国 鳴門 小豆島中央
九州 西短大付 日南学園 九州学院 鹿児島実業 沖縄尚学
21世紀枠 旭川東 大町岳陽 与論
今年の大会は特徴的だ。
公立高校が前回の倍くらい。
何校かの過去の21世紀枠出場校が実力で出場を勝ち取っていた。
基本的に私立優勢ではあるが、番狂わせの可能性もあり、
久しく見られていない公立高校の優勝も充分ありうる。
初戦の高崎商業は九州学院と当たる。
相手エースは1年生ながらプロスカウト注目の球磨川猛。
スピードボールが持ち味ではあるが、
球速以上に威力のあるストレートも投げられる。
持ち球はスライダー、フォーク、シンカーと多彩。
この試合を前にして、
既に高校通算本塁打25を突破していた高商の主軸、前田恒輝を意識する。
大夢は・・・ひたすらバントの練習をしていた。
150キロのスピードボール。
最初は手が出なかったが、段々慣れてきた。
豪速球に硬球と、常に危険との隣り合わせである。
慣れてからが本当に怖くなる。
しかし、大夢はいつも通りにやるだけと冷静だった。
何よりも、支えてくれる家族や仲間のために。
裕登と悠平はアルプスで応援する。
率先して2年生補欠の手伝いもしていた。
俺たちもいつかは・・・。