プロローグ
大夢は、いじめを苦にする妹の遺書をこっそり見つけた。
悔しくて悔しくてたまらなかった。
確かに、親は会社を経営したりしている分、
色んな外部との付き合いがある。
必ずしも良い人というわけではない。
自分たちの成功を恨む人間も少なからずいるだろう。
大夢はどうしたらいいか分からず祖父の大吉に相談した。
大吉は、
「大夢の気持ちはよーくわかった。あゆみがどれだけ辛いか、自分もいじめられっ子だったしよくわかるし、味方もしたくなるだろう。だが、いじめっ子をやっつけたところで彼らと同類になってしまう。理不尽なことは何一つしていない。育った環境も違えば価値観も当然違うわけだ。そこは割り切って大夢は甲子園で活躍して見返してやったらいい。女の子はまだグラウンドに立てない。だから、大夢しかやれないことをやってきなさい。思いっきりスポーツマンシップにのっとり、いつも通りのことをしてくるだけでいいさ。」
大夢は赤く染まった両眼を、真顔でうなずいた。
大吉自身もいじめられっ子だったが、いじめっ子にやり返すエネルギーを全部ピッチングに費やした。
弱小と言われた高校で県準優勝を成し遂げている。
特に大夢は大吉でさえ成し遂げられなかった甲子園という切符を手にしていたから、
なおさら期待をしていたが、配慮してあまり強くは表現しなかった。
「じいちゃんにできるのなら、俺にもできる」
大夢は前を向いていた。
特別な才能はないが、与えられたチャンスをものにし、厳しい戦いの中生き残ってきた。
目指すは甲子園優勝、そして妹の日常を取り戻すことだ。