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熟練度カンストの飛翔者

 バギーはすぐさま、追撃を開始した。

 途中から鹿の部族の方から来たバギーも合流する。


「お待たせしましたわね! わたくしが参りましたわよ!」


「妾も……おほん。私も一緒だ」


「デヴォラ! 竜胆ちゃん……は妾って言ってもいいんだぞ……。むしろ俺はそっちの方が好み……」


「そ、そうかや!?」


「竜胆、風花は元気?」


「ああ、元気元気じゃ! 菖蒲と牡丹と三人でお昼寝をしておるところじゃ。妾たちもさっさと敵を片付けて戻らねばな!」


 そう言って、ツインビームサーベルを掲げてみせる竜胆である。

 彼女は蓬莱の地から離れてしまえば、肉体的には普通の人間だ。


 だが、デヴォラと早苗は銃の名手だし、竜胆はツインビームサーベルの使い手に育っている。


「妾な、弾丸を見切れるようになったぞ。だからこのビームサーベルで打ち返せるようになったのじゃ」


「どこかのスターな戦争みたいな使い方をマスターしたのか……。かっこいいな」


「ユーマくんがいつもやってるじゃない」


「俺は実体剣だからなあ」


「別にいいじゃありませんのっ……と!」


 疾走するバギーは、丘を飛び越えて行く。

 俺の後ろに座っていたクラウドが、じーっと隣のバギーを見てから、俺を見返した。


「ハーレム? ちょっと引くわー」


「うるさいぞ」


「俺はジョカ様だけを愛しているからな!!」


「わらわは愛されているのじゃ~」


 バカップルめ。


「妾と口調が被ってるのう……。やっぱり私にした方がよくない?」


「よくない。頼む! 一人称妾のままでいてくれ竜胆ちゃん……!!」


「ユーマがそんなに言うなら……」


「お前たちあまりにも緊張感がなさすぎないか!?」


 バララに突っ込まれてしまった。

 すまんすまん。


 高速で疾走するバギーは、混沌の大地ををどこまでも突き進む。

 日が暮れる頃合いに、それが見えてきた。


「あれですわね! なるほど、空に浮かんでいますわ。……空に向かって何か伸びていますわね」


 岩盤と一体化した宇宙船が、宙に浮かんでいる……ように見える。

 だが、それはどうやら、空高く伸びた棒のようなものによって宇宙から引き上げられているらしい。


「軌道エレベーターだな。どうやらこの辺りがラグランジュポイントらしい。つまり……」


「あれを破壊すれば終わりだな?」


 さすがクラウド、飲み込みが早い。

 軌道エレベーターにダメージを叩き込むと、ポキっと折れて宇宙船が落ちてくる。

 今回はそれをやるだけの話だ。


 だが、簡単にさせる気は向こうもあるまい。

 豹の部族が光りに包まれ、大地に降り立ってくる。


 誰もが全身に、ハリネズミのようにSF武器を装備している。


「現れたな、灰王ユーマ!! よもやこの地まで攻め入ってくるとは……!!」


 見たことあるやつがいるな。

 ディアマンテの海岸に侵略してきていた奴か。


「若長、お前が倒せなかったのがあの男か。ならばあれはこの俺様が」


 若長と呼ばれた男の隣に、大柄な巨漢がいた。

 そいつが得意げになんか武器を両手に構えてこっちに向かってこようと……。


「賞金首発見! 行くぞジョカ様!」


「うんむ!!」


 首にジョカをしがみつかせたクラウドが、跳躍しながら背後に銃をぶっ放し、その反動を使って猛スピードで飛翔していくではないか。

 なんだあの技。


「デッドエンド・シューッ!!」


「ウグワーッ!?」


 あっ、巨漢が物理的に粉々になった。

 後で聞いた話なのだが、あいつがネフティスに攻め込んできた豹の部族のトップだったらしい。


 クラウドは敵の真っ只中で、その重要人物を仕留めた直後、ゆっくりと残心を決めた。

 俺が言えた義理ではないが、あいつも大概いい度胸だよな。


「戦闘隊長がやられた!」


「な、なんだこいつ!!」


 いきなり全ての段取りとか流れを無視して、てっぺんだけ殺しにくる男だからな。

 たち悪いよなあ。

 あれで、豹の部族が士気を上げて襲いかかってくる……という流れがズタズタになった。


 呆気に取られているわけだ。


「き、貴様! 灰王ユーマ! これが貴様らのやりか」


 ここで、デヴォラと早苗が射撃した。

 運転は既に竜胆に変わっている。


 二発の弾丸が、見事に若長の額に二つの風穴を空ける。

 物も言わず、やつは死んだ。


 豹の部族が目に見えて動揺する。


「攻撃を防ぐ結界のようなものがありましたわね。ですけれども、今回用意したのはマリア様謹製の結界粉砕弾ですもの。相手が一撃で自分を殺せる準備をしてきたと思うべきでしたわね。それにしても……早苗さんは流石ですわね! わたくしが空けた穴を正確に衝き、追い打ちしましたわね」


「射撃の正確さが私の取り柄だもの」


 デヴォラと早苗が、イエーイ、と手を打ち合わせた。

 それを横目に、俺とバララと竜胆が走り出している。


「纏え、土の嵐を。奪え、敵の視界を」


 風と土が巻き上がった。

 それが、俺と竜胆の周囲を渦巻き始める。


 敵から見ると、俺たちの姿が視認しにくくなるわけだな。


「行くぞユーマ! 妾に続けえ!! とあーっ!!」


 ツインビームサーベルが展開され、当たるを幸いと豹の部族を叩き切り始める。

 相手もやられるばかりではなく、トライエッジやらシングルタイプのビームサーベルを使って攻撃してくる。

 なるほど、装備は象の部族の比じゃないな。


 だが、練度が違う。

 ツインビームサーベルが、回転しながら攻撃を次々に弾く。

 そして返す刃が豹の部族の連中を溶断する。


 俺は俺で、怪しい動きをする連中がいないかを見張っていた。

 豹の部族は、混沌の精霊とSF武器を同時に扱ってくる。

 SF武器だけに頼っているのは雑魚だと思っていいだろう。


「獣の腕よ! 足よ!」


 そら来たぞ。

 人間を越えた速度で、半獣人化した連中が飛びかかってくる。


 こいつは荒神憑きとなった竜胆なら対処できるだろうが、人間モードではちょっと大変だ。

 俺がやろう。


 双剣モードである緑のテュポーンで、相手の攻撃を受け、受け流し、弾き飛ばし、一瞬でも隙があれば叩き切る。


「な、なんだこいつ!!」


「こいつを抜けない!」


「ウグワーッ!!」


「まるで壁だ!?」


「だめだ! 迂回しろ! 遠回りして……! ウグワーッ!?」


 銃声が響いた。

 豹の部族の男が倒れる。


 残心を終えて満足したクラウドが戦線に戻ってきたのだ。

 あいつ自己満足のために戦ってるからなあ……。

 戦力として数えるには不安定過ぎる……!


「ユーマさん!! 来ますわよーっ!!」


 デヴォラの声が響いた。

 同時に、バギーが真横につけられる。


「来るって……ああ、SFサイドの攻撃だな」


「ユーマくん、そういう物言いするよねえ。でもこっちだとSFは通じないと思うな」


 いつの間にか、デヴォラのバギーに早苗が乗っている。


「これ使って。エルド教が開発した、個人用のジェットパックだって」


「ジェットパック!? なんでもありだなエルド教!! 実は三大宗教で最強なんじゃねえのか」


 ということで、俺は早苗から受け取ったジェットパックを背負った。

 バララが当然みたいな顔をして、俺にぎゅっとしがみついてくる。


「私も行くぞ。それで空を飛ぶのだろう」


「よくぞ先入観なしで飛べると思ったな」


「混沌の精霊に親しんでいるからな。どういう形でも、そこに込められた意図を察すれば理解できる。さあ行くぞ!」


「へいへい。ジェットパック点火!」


 俺はバララを連れて飛び上がった。

 下でうちの奥さんたちが手を振っている。


 飛び上がりながら、降りてくるSF兵器群を叩き切る。

 双剣ではリーチが足りない。

 即座にテュポーンを変形させ、赤い長剣へと変える。


「しっかり掴まれバララ! 回転するぞ!」


「分かった! 風よ! 渦巻け!」


 おお!

 俺の周囲に強烈な旋風が巻き起こる。


 俺はこれとジェットパックを用いて高速回転し、刃の嵐となった。

 触れるSF兵器群を片っ端から切り裂いていく。


 そうしてひたすらに上昇すると……。

 眼前に、宇宙船の姿が。


 視線を感じる。

 この宇宙船の中にいる侵略者が、俺を見ているのだ。


 出てくるな。

 暗黒大陸編、これにて完としてくれよう。

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