三話、後悔のペドリン
僕の友人の話をしよう。
友人は優しい母と逞しい父を持つ一人っ子だった。普通に食べていける平凡な家庭に生まれた友人は不満なく育った。
ソレが壊れたのは友人が小学生に上がってすぐの事だった。
世界で一番お前が好きよと寝る前に囁いてくれた母が、友人の知らない場所で浮気して身籠ってしまった。
父は怒り狂った。けれど、根の優しい父は浮気させた原因が自分にあると責めて後悔の挙げ句自殺した。
母は哭いた。
浮気した原因は一瞬の気の迷い、貴方はとてもイイ人よ。一度だって私を疑い責めやしなかった。と。
それでも、産んだ。
父が違う友人の妹を。
友人はやっと安堵した。これで全てが平和になった。これで肩を張らずにいられる、と。
神は残酷だ。この家族がどんな悪い事をしたっていうのだ。浮気への罪なら父の死で十分だった。
だのに――、飲酒運転をしていた軽トラックに轢かれ母が他界した。その事故に共に遭遇した友人と妹は不幸中の幸いで擦過傷だけで済んだ。
しかし。友人は、生きていて嬉しい、そんな素直に思える筈がなく何故一緒に逝かせてくれなかったのだと泣いた。
妹は兄の心なんて知らずに無邪気に笑っていた。
友人は全てを見てきたのだ。父がこの世を去る瞬間も、友人と繋いでいた手を離し、友人を突き飛ばし、胸に抱いた生後三ヶ月の乳のみ子を守った母の最期も。
それらの過去を詰め込んだ小さな頭で考えて、母の冷たくなってゆく胸の中で笑う妹を抱きかかえながら言った。
「にぃにはリンをおいてかないから。にぃにはずっとリンのことをすきでいるからね」
産まれる運命じゃなかった、望まれない子に笑いかけると彼女は無垢な笑顔を返した。
純粋に守らなくちゃいけないと、直感的に思った。
その後、両親を亡くした二人は施設に入らず、父の妹に引き取られた。
ああ、友人の話だよ。僕の話じゃない。勘違いしないでくれ。
で、参考程度に聞かせてくれ。こんな家庭環境で育った兄がシスコンになるのは当然の話だろう?
そう、そうだよな。僕は正しい。今も前も変わらず正しく妹を守っているにも関わらずどこをどう間違えて他人にチョコを作る様な子にしてしまったのか……いや、今の言葉は忘れてくれ。
とにかく僕は今日という日を待ちわびていた。
二月十四日、バレンタインデーを。
起床すぐにパソコンを起動し、複雑な心境のまま、監視カメラの映像を確認する。
妹はまだ寝ている。
何だ、あの寝顔。僕を殺そうとしているのか? 可愛すぎるよ、こんにゃろー。
確かに時計はまだ午前二時を指していない。日が変わったばかりでカーテンの外はまだお日様も眠ってる頃だ。
あの行事を重んずる妹の事だ。きっと今日も宇里漉にチョコを作ると踏んでいる。それも僕にバレたくないから早朝に作るだろう。
思っただけで死にたくなってきた。くそっ、宇里漉め。明後日半殺しにしてやる。
午前四時――妹に動きはない。
すうすうと可愛らしい寝息を立てているであろう妹の寝顔を見ながら、ヨダレを垂れるのを我慢した。
もしかしてこのまま妹は何も作らずいつもの様に、寝たままの土曜日を過ごすって言うのか?
宇里漉への思いもそんな程度であったということだ。ザマーミロ。
大体、妹が『にぃに、今日中にウリスキさんにわたしてくれる?』って問うてきたら僕は笑顔で『勿論だよ、マイハニー』と答えお前の家に行かなければならないのだ、宇里漉。
若干の嘘があるが気にしないで欲しい。
午前五時――ついに、妹に変化が現れた。
漆黒の一対の翼を背に蓄えた美少女になっていたとか、そんなんじゃない。
妹はモコモコの布団を足で押しやり、数回寝返りを繰り返すとむくりと起き上がった。
妹がこんな時間に起きるのはまずまず有り得ない。寝過ぎで昼夜逆転して起きてしまったというのなら話は別だが、今日はそんな選択肢はない。
遂に、この時が来てしまったのか。妹がチョコを作ろうとする時が。
今日の第一の目的達成された事に僅かな喜びを感じるが、忘れてはならない。妹のこれから行う所業を。
残念な事に僕は妹の手伝いどころか製作の中断すら出来ない。やったら僕の未来は一つだからね。
それどころか起きている事自体悟られてはいけない。僕の今まで辛うじて取り繕えていた素敵なにぃにが消えてしまう。
年数回の会話が十年に数回の会話に変わってしまう様な事があれば宇里漉を巻き添えにして死んでやる。
余談はさておき、起き上がり部屋を出て案の定リビングへ向かう妹を見る為に、カメラを切り替える。
「くぁ」
腰まで伸びる黒髪を掻きながら、欠伸を漏らす妹に悶絶する。僕を殺す気か! と、音を立てずに叫んだ。
妹はリビングへ向かうと思いきやそのまま洗面所へ直行した。
そりゃそうだ。妹だって女の子なんだから身なりを気にする年で起きたらすぐに行くのが当たり前だろう。ついでに排泄も済ませるだろうから……と、監視カメラの映像から目線を外し音声を切った。
数分後横目で妹の状態を確認すると――洗面所から、チョコ板や生クリーム等を持つ妹が出てきた。
「何で!?」
いやいや、ちょっと待て。僕の家の冷蔵庫は洗面所なんかになかったぞ。
あ、そうか。僕や鈴華さんにバレないように、隠していたのか。可愛いな、妹よ。
っと、危ない。思わず大きな声を出してしまっていたが、それどころではない妹は何も気づいてないみたいだ。
キッチンで荷物を広げた妹はポケットから小さなメモ帳を取り出した。ぎっしり書き込まれたソレには、手順が書かれてある様だ。
ナニナニ? 『まず始めに手を洗おう。次にボールにチョコを入れて割ろう』……って余りにもアバウト過ぎやしないか?
おいおいおい! 本当に拳でチョコを割ってるよ、この子! 身を守る為と習わせた空手を十分に活用してるよ!
「ふぅ、いい感じ……」
自信ありげに妹が見る先では、猟奇的な殺害現場の様に悲惨な姿となったチョコがボウルから飛散していた。
贔屓目ありにしても、こりゃ酷い。最早チョコがチョコとして持つ魅力を最大限に損なっている。
「うーんと、次はカルシウムを入れるのか」
カルシウムか。成る程、バカな宇里漉の為に気を使っているのか。流石僕の妹だな。宇里漉ぶっ殺す。
「牛乳と……あ、このお薬入れよ」
うんうん、カルシウムといったら牛乳だよね。あと、チーズとか乳製品が良いって聞くよ。……だから、ちょっと待って。
それ、確かにカルシウムだけど鈴華さんのカルシウム錠剤だからね? 普通の食事に入れないどころか、チョコにも使わないモノだからね?
普通の材料しかない筈なのに、宇里漉曰くう●こ以下のブツになった訳はそこにあるのか。成る程。
「固まらないなぁ。あ、片栗粉入れよ」
ダメダメダメダメ! 片栗粉は固まりそうな感じに聞こえるけど実際固まらないから! ただトロミがついて終わるから!!
こうなったら、いっそ妹にバレないようにリビングで隠れて手伝おう。
「……ぐへぇ」
自室の戸を開けて一歩踏み出しただけで、悪臭が鼻孔にこびりついた。何だこの匂い。絶対チョコなんて作っていない。
しかし、ここで僕が製作援助しなければ受け取る宇里漉は確実に死ぬ。
死んで欲しいと望んではいるが、死なれたら妹に迷惑がかかるので死なせない程度のモノを作り上げよう。
匍匐全身でリビングへ這い出ると、そこは異世界でした――と、錯覚する程の煙の間には妖精が飛んでいる。
一体どうしたんだ、とブンブン首を振るとそれらは消えてなくなった。
残るのは鼻に付く甘ったるく吐き気を催す香り、あ。もしかして、僕はこの匂いで幻覚を見たのか?
まさかねぇ、とバカに出来ないのが妹ズクッキングである。念には念をサージカルマスク着用の後、N95マスク、更にそこらに落ちてたビニール袋で顔を覆った。
息苦しいが幻覚予防には、重装備に越したことはない。ところで妹はこの悪臭の中でよく平然としていられるな。
「次は……ゆせんで溶かす。ゆせんってなんだろう? お湯と、せんべいのこと?」
煎餅チョコになるのはまだ良しとして、チョコにお湯を入れたら、脂肪分と分離して固まらなくなるんだよ。知ってた?
うん、知らないからやろうとしてるんだよね。
妹が冷蔵庫に頭を突っ込んで煎餅を探している(煎餅はキッチンの下の戸棚に入ってるんだけど)隙に、ボウルを用意して熱湯を張った。
そしてチョコとカルシウム錠剤と牛乳と片栗粉が既に入り乱れ、えげつない色になっているボウルを上に乗せた。
最後にゴムベラで軽くかき混ぜた。
「せんべい、ない。……あ、何か変なことになってる」
それが普通の状態だよ。今までのが変だったんだよ。
「大丈夫かなぁ? 美味しくなくなってたらどうしよう。よしっ、お湯入れよ」
僕の努力を無駄にしようって言うのかい、妹よ。あー、こうなりゃ最終手段。
「げふんげふん。我は神である。その状態を湯煎にかける、という。だから、心配しないでそこのゴムベラでかき混ぜてよろしい」
「わぁっ、神さま……ありがとうございます」
妹は熱心なクリスチャンでも、信仰者でもない。ただ単に神を信じる純粋な子なのだ。
穢れなく疑う事を知らない妹が、学校で騙されてないか不安になる。
「うーん。中々いい感じにならないなぁ。もう少し何か入れたら良いのかなぁ?」
「我は、そこに置いてある赤い香辛料を入れるべきだと思うぞ」
「わあー、ありがとうございます」
妹は純粋に単純な経口殺人兵器を製作する。当然その香辛料が何でどんな味なのか知らないから、神の意思に沿ってドバドバ入れる。
けっけっけ、ザマーミロ。宇里漉がどんな顔で泣くのか想像するだけで楽しみだ。
「あ、全部入れちゃった。もう一本入れるべきかなぁ?」
「流石にそれは止めとこう。ウリスキ死んじゃうから」
「……ウリスキさん? 神さまがウリスキさんを知ってるの? すっごーい」
「あー今のは忘れて。じゃなくて。失言だ。記憶から抹消してやろう」
「はーい」
純粋。なんと純粋なのだ。これで、料理もレシピ通りに純粋に作ってくれたら、僕も味見しようかな?なんて気が沸いたのにこれじゃ味見も命がけだ。
……するけどね。
「かっらぁあっまずぅうう!!?? ……い、今のは成功する為の呪文である。き、気にしないで良い。取り合えず我に水をくれないか?」
「はーい」
妹がそっぽ向いてる隙に、ボウルの端に付いたチョコを舐め取れば素敵な世界が待っていた。
味の表現は不可能だ。刺激的で官能的かつ、生死をさ迷わせる作用がある、とでも言おうか。
幸い悶え苦しむ姿は発生原因の分からぬ煙によって、全てかき消された。
お陰で僕の姿は見えない事になっているし、妹の姿もこちらからじゃ曖昧にしか把握出来ない。
妹のくれた水に口付けると――「ブフォアッ!!??」――吹いた。
「雨?」
ごめん、それは僕の口から出た液です。
「ソ、ソソ、ソナタ、我の水に何を入れたっ……!?」
「美味しくなるように、チョコとニンジン入れたの。美味しかった?」
「……ああ、勿論。オイシカッタヨ」
「わーい、やったー」
何故チョコを入れた。元の原因であるチョコを。僕は普通の純水が欲しかった。
ん。目を凝らしてみれば細長いオレンジ色の何かが入っている。ストローだと思っていたが、これが人参か。
うむ、固い。生の人参だ。……何故入れたのだ?
まあ、置いといて。
「うーんと、次は型どりかー。うちに型ないな」
「手で丸めるたけで良い。そちらの方が気持ちも伝わるであろう」
「そっか。わたしの気持ちが……よろこんでくれるかなぁ?」
「……ソナタが作ったモノを貰って喜ばないやつ等おらん。安心しろ」
妹の顔は見えないが、絶対満面の笑みだ。そうに違いない。宇里漉が食べて喜ぶ姿を想像しているのか、小躍りしそうな口振りだった。
反対に僕は石の入った雪玉をぶつけられた少年の様に、不貞腐れて机を蹴った。
神が机を蹴るなんて世も末だと妹は驚くだろうか。いい、別にどうでも。
他人から見れば『たかが妹が他人にチョコを作り渡す』事も、僕からすれば大事だ。
長くに渡って慈しみ愛を注いだ可愛い妹がチョコを渡すなんて、前代未聞だ。
去年までは鈴華さんからのお小遣いの範囲内で買ったチロルさんを僕にくれた。
『はい、にぃに』
妹が笑ってくれるだけで、心身全てが浄化されていったのを今でも覚えている。
そんな妹が……。
頬を伝う温かい液体が、涙であると知ったのはそれから数秒後の事である。
厳重に覆ってしまったから、涙を拭う事は出来ない。
悪あがきでビニール袋の上から擦るが、ビニールが張り付きマスクが濡れる結果となった。
「よしっ、これでおしまいっ。後はレイカさんが起きる前に後片付けしないと……」
「誰が起きる前だって?」
「ひっ」
「ひっ、じゃないわよ。大体こんな悪臭漂わせちゃ睡眠妨害になるわよ」
「うー、ごめんなさい」
「泣くなっつーの。はい、さっさと片付けるわよ」
いつものラフなノースリブとハーフパンツ姿のレイカさんが、眉間に皺を寄せて入ってきた。
しっかり口元をタオルで覆ってる。分かってるね。
さあさ、僕も感傷に浸ってる暇はない。バレない内にさっさとリビングから出ていかないと飛び火が――
「コソコソしてるビニール野郎も片付けに参加するのよ?」
――巻き添えくらって、炎上エンドかよ。
早く逃げれば良かった!! ここで現れたら妹が気づくじゃないか。
「ビニール野郎じゃないよ、レイカさん。神さまなんだよ」
「ぶふっ! アイツが?」
妹の純粋さに今日程感謝した日はない。むしろ、そこまで信じられると僕が悪い人間に思えてくる。
「うんっ、にぃにのチョコ作りに手伝ってくれたんだよー」
「そ、そうだ。我はソナタの兄の為のチョコ作りに協力した神である……え? にぃにのチョコ? 宇里漉じゃないの? どういうこと?」
「分からないけどさ、諒の話し方めっさキモいのはどうしたの?」
「そうっ、にぃにの日頃の感謝をこめて作ったのー。ありがとうございます、神さま」
レイカさんの言葉は一旦端に避けて、状況を整理しようか。
ナニナニ? バレンタイン当日である今日作ったのは、僕へのチョコレート。
それも本人自身の口から僕のチョコレートというのは間違いない。
ならば、何故昨日宇里漉にもチョコを渡したのか。
あれか? 僕は兄として好きだが宇里漉は男として好きだ的な? 殺すぞ、ペドスキ。
「おととい、練習にウリスキさんに作ったからうまくいったと思うのー」
おいおい、聞いたか宇里漉よ。お前は実験台だったのだ。何故お前が選ばれたのかは謎だが、光栄に思え。
殺人兵器でも、妹の初めてのチョコを食べれたんだから。
「はー、いやー、はー。うん、いやそうだよね。大体そうかなって考えてた。うん、へへっ」
「おい、諒神キモいぞ」
「鈴華さん。少し部屋にとじ込もって、この喜びを舞にして全身に嘘じゃないぞと叩き込みたいんだけど良い?」
「このシスコンが。騒ぎにならない様にしろよ」
ありがとうございます!! と九十度の綺麗な礼をすると、部屋へ駆け込んだ。
その間、後から聞いた話によるとこんな会話が繰り広げられていたらしい。
「むむ? 神さま、にぃにの声と似てる?」
「あー違う違う、アレは凛の言った通り神だから。凛の事をずっと守ってきた、ね」
「わーい、神さま大好きー」
「それ、本人に言ってやりな。喜ぶから。……まったく、兄さんに似て変人だねぇ。この子らは」
――数時間後、僕は自作の四十分の求愛ダンスも含めた歓喜の舞を躍り終え、ベッドに横たわっていた。
散々動き回り、疲れはあるものの、妹を考えるだけで全身は癒えまだ動ける気になる。
きっと今なら平泳ぎで太平洋横断できるんじゃないな。犬かきしか出来ない僕だけど。
「にぃに、起きてる?」
待ちに待った、妹の声。
扉越しではなく、直に。出来れば耳元で囁いて欲しいという下心を抑制し、何事もなかったかの様に汗を拭った。
「起きてるよ」
「開けても良い?」
「僕が開けるね。はい、どうぞ」
「……ありがと」
僕と目が合うとプイと目線を反らし逃げる様にパタパタ僕の部屋へ入る妹の後ろ姿を見て、ただの照れ隠しであれば良いと望んだ。
妹はまるで僕の前の部屋を知ってるかの様な口振りで「あれ、なんか減ってる」と呟いた。
「そりゃ、凛が来た数年前よりかは片付けたからね」
「ふうん」
嘘です。たった今、妹が部屋の前に来た瞬間にそこに置いといた妹の幼い頃の写真をベッドに隠しました。
まあ、妹が知ってる筈ないけど。
「あのね、にぃに。にぃにに渡したいモノがあるの。これ」
待ってましたとばかりに手汗を拭い顔をつき出した、が予想とは違ったモノが来た。
「手紙?」
「にぃにへの思い。わたし口下手だからお手紙にしたの。あと、チョコも」
「あ、ありがと」
赤面した妹は僕に手紙とチョコの入った箱を押し付けると、慌てて部屋を出ていった。
狼じゃあるまいし襲わないんだからもう少しいても良かったのにと思う反面、妹の残り香を一ミクロンも残さず吸い取る。
僕の吸引力、そこんじょそこらの掃除機に負ける気はしないね。
「はは、やった。やった」
妹からのチョコ。それに思わぬ副産物の手紙。これは後で読もう。
今は何よりもこのチョコの処理だ。
宇里漉に渡すモノだとばかり思って唐辛子をドバドバ入れさせたのを今になって後悔している。
ラッピングを開けただけで、香りに泣きそうになる。
しかし、僕は諦めない。捨てるなんて事出来ないし、ましてや他人にあげるなんて事もしない。
僕だけの為に作られた共同チョコ。味わってやろうじゃないの。
ひょいと口に人欠片放って見れば――
「かっらぁあっまずぅううぅい!!??」
――愛と死の味がした。
僕の妹は可愛い。とにかく可愛い。無条件で可愛い。何も僕の妹に限った話じゃないな。
諸君らの妹も可愛いだろうよ、僕の妹には負けるけどね。
本日十四日、実に素敵な日である。
どうだ、これで分かったか? 僕がこうして筆を取った理由が。
単に可愛すぎる妹を自慢したかっただけに過ぎないという事を。
すまんすまん、無駄にしてしまった時間は元に戻らない。後悔する時間すら無駄であるから、この事を忘れて前に進むんだな。
なんちって。
しかし、僕と妹の物語はこれだけじゃ終わらない。僕らが息絶えても尚未来は続く。
今回はそんな僕らの一瞬を切り取っただけに過ぎないのだからね。
さて、次はどの様になるのやらね。もう少しお付き合い願いたい。
タイトル『後悔のペドリン』→何であの時、唐辛子入れちまったんだろう……という後悔。
挿絵イラストは某ユーザー様より頂きました。許可を得て使用しております。