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一話、驚愕のペドリン

 やあ、諸君。こんにちは。

 僕は佐藤諒。元気に高校生をやっている。周囲の人間からは幼女愛好家及び妹崇拝主義者と認知されている。


 しがないシスコンさ。


 僕の妹は鼻ぺちゃで胸ぺちゃで目がクリクリしていて胸ぺちゃだ。大事な事なので二回言っておくよ。

 世間一般に美人と分類されるかはさておき、僕の世界で一番可愛いのは間違いない。

 ああ、失礼。妹について語るとしたらここの規定の七万字をゆうに越えてしまうから今は自重するが、是非機会があれば語るよ。

 だから、ブラウザバックしようだなんて愚かな事を考えている諸君、少し待ってくれないか?

 何も諸君の貴重な時間を無駄にする為に書いているのではないのだから、もう少し我慢してくれ。

 さて、こうして筆を取ったのは他にもない妹が可愛いからだ。仕方がない。

 ああ、だから少し待ってくれって。もう少しで僕の可愛い×∞の妹を登場させてあげるから。ね。



 事の発端はつい二日前、二月十二日の午後授業中であった。

 僕は窓越しに見える隣の小学生(僕の幼女フィルターアイズによると小学二年生である)が、グラウンドでかけっこをしているのを見て物思いに耽っていた。


 ――いやあ、どうしてロリはこんなにも可愛いのだろう。一度で良いから監禁したいな。でも、法律に引っかかるから無理だな。いやしかし、互いの合意の上の監禁だとしたら刑は軽くなるかも。けれど、僕が犯罪者となったら妹はどうなる? どう想う? 僕を軽蔑し非難するだろう。なら、タイムマシンを作って幼女時代の妹を拉致監禁すれば事は上手く収まるな。


 そんな僕の内心を知ってか知らずか、教師が授業に集中しない僕を当てた。


「おい佐藤、授業を聞いていたら分かるよな?エーミールがベンチに座り損ねた時の心情は一体どんなだったか」

「タイムマシンの作り方を習得する為なら妹とロリ以外の何を捨てても良い」

「エーミールのベンチへの執着酷いな!?」


 上手く切り抜け、僕は再び自分の世界へ入った。

 ん? クラスメートからの視線? そんな物感じないね。だって僕は彼等に認められているから。

 そんな僕のアダ名は――



「おい、ペドリン。今日は一体どんな事を妄想していたんだ?」


 ――ペドリン。

 小児性愛のペドフィリアと僕の妹の名前の凜を足して付けられた。

 他人に妹の名前を呼ばれるのは不愉快極まりないが、以前付けられたぺシス(ペドフィリア+シスコン)よりマシだから許している。

 ほら、ぺシスって一見ぺ●スと捉えてしまうじゃないか。僕はシスコンだが、モザイク入る程卑猥ではない。


「いやあ、宇里漉(うりすき)なら分かってくれると思うのだが、僕はタイムマシンを作りたいんだ」

「その心は」

「過去に戻ってロリ時代の妹の拉致監禁」

「うーむ。俺はタイムマシンに大賛成だがロリ時代というのはいただけない。俺は未来派だな」

「その心は」

「妹の成長したおっぱいが走らずとも動くだけでホヨンホヨン上下するのを色んな角度から舐め回したい」


 そう。宇里漉は僕と同様シスコン仲間である。

 残念ながら彼はペドフィリアではない、おっぱい愛好家なのだ。勿論妹のおっぱいだけなので、常に彼とは妹談義を繰り返している。

 しかし、これでぺちゃ愛好家ならもっと深い心友になれた筈だろう。


「僕は理解出来ない。しかし、宇里漉もぺちゃを理解出来ないから同じだな」

「それでは、目的の為にタイムマシン作りにでも励むか」

「ペドリンに宇里漉、今日も妹談義に熱を注いでいるんですか? 相変わらずアホですねー」


 と、後ろから飛び入り参加してきたのは伊藤。こんな僕らに抵抗なく話しかけてくる彼もまた――


「どう考えても姉さまの方が良いに決まってますよ!」


 ――シスコン仲間である。

 僕と宇里漉とは違い、姉ではあるがシスコンであり理解者なので、僕らは彼をこう呼んでいる。


「やあ、外道どうしたんだ? 妹談義している僕らに話しかけるって事は妹に乗りかえる気になったのか?」

「そうだ、外道。俺らに話しかけるんなら、シスコンだけじゃなく妹魂(シスコン)にならないと」

「毎回思うんですけど、その外道って悪口ですよね!?」

「何を言ってるんだ、外道。僕らが外道に対して悪口なんて言う筈ないよ。数少ない同士に」

「おう。俺らは妹という道から外れたお前に哀れみ込めて外道という名を与えたんだぞ。被害妄想甚だしいぞ、外道」

「もう良いですよ。アダ名には触れません……」


 いつものやり取りにしょんぼり肩を落とす伊藤を見て、ふとある事に気がついた。真ん丸としてテカテカ脂っこい伊藤の頬が、乾燥し痩けている。


「外道、何か(やつ)れてないか? もしかして何かあったのか?」

「分かってくれるんですか、僕の心身の変化を。実はですね昨日の夜、ある光景を見てしまって」

「姉宛のラブレターか? そういや、俺の妹もラブレターを貰ってたな。勿論相手は二度と妹の名前を呼べない様に遊んであげたぞ。外道もそうすりゃ良い」

「恐怖でしかないですよ!? 大体僕と佐藤は筋骨隆々のお前と違ってモヤシボーイなんですからね!?」

「お前も男なら妹を脅かす(ゴミムシ)から守る為に、武道習えよ」

「おい宇里漉、外道の話を最後まで聞いてやろうよ。もう少しで六時間目のチャイムがなるんだから僕らの妹談義が再開出来なくなるよ」

「そうだな。おい話せ、外道」


 妹以外心底どうでも良い主義の僕らにとっては、姉の話なんて微塵も興味ないというのに聞いてやるのだから早く言えばどうなのだか。


「相変わらずペドリンも宇里漉も僕の話聞く気ゼロですよね。僕が妹じゃなく姉が好きだからって……そうそう。話に戻りますけど、実は姉さまが鼻歌混じりでチョコを作ってるのを見ちゃいまして……」

「どう考えても夜食だろ」

「姉さまは甘いものが好きですが、最近控えてるんですよ。しかもその作ってるチョコが妙にクオリティ高くて……」

「外道の姉の体型から考えても夜食だね」

「確かに姉さまはぽっちゃりしていますけど、夜食にしないですから!?」


 伊藤は周知のお坊っちゃんデブであり、その姉もまたぽっちゃり枠から大きく外れたデブちゃんである。

 どうでも良い事だが、姉はその体型とは反して目鼻立ちは整っていて、清潔感があり性格も良く、金持ちなので言い寄るハイエナは少なくないらしい。

 本当にどうでも良い事だけど。

 因みに、僕はガリガリとぽっちゃりの二択なら迷わずぽっちゃりを選ぶ。

 ぽっちゃりロリ体型こそ正義だという持論もそうだが、なによりもマシュマロみたいなあの柔らかさには虜になってしまった。

 しかし、僕の妹はBMIが17.4とやせ形極まりない。誠に遺憾である。


「じゃあ、どうして」

「見てしまったんですよ。姉さまがそのチョコの上にピンク色のチョコペンで"佐藤くんへ❤"と書いているのを!!」

「それがどうかしたか?」

「妹以外になると二人とも異常に鈍感になりますよね。つまり、姉さまが特定の異性にチョコレートを渡そうとしてるって事ですよ」

「へー。良かったね」

「へー。良かったな」

「どうでも良い!? 僕の今の大事件がどうでも良いんですか!?? もう少し興味示してくださいよ!! もし、妹が誰かにチョコを作ってたらどうするか考えてみたらどうですか!?」


 妹が他人にチョコレートを送るなんて馬鹿げた事をチラリと考えてみた。

 もし妹が相手の事を好きだとしたら?

 相手の顔を思い出してチョコを湯煎で溶かし、相手の喜ぶ顔を想像して型に入れて、相手がどんな反応をするか妄想してラッピングし、頬を紅潮させ愛の言葉を垂れ流しながら相手に渡す。

 はっはっは。全くもって馬鹿げている。


「ソイツを煮えたぎる塩酸の入った大釜に入れて、骨まで溶かしたら方取り冷凍してソイツの家族に送りつけてやる」

「ペドリンに同意見。死んでも尚心に残る恐怖を刻み付けてやる」

「僕は流石に二人程の猟奇的な事を考えもしないですよ。精々姉さまの交遊関係諸々を探偵雇って全て把握する位しか」

「外道も相当だよ。俺ら一般ピーポーとは違ってお坊っちゃんのお前はよ」

「妹で想像したから辛さは分かりますよね? 僕がこんなになる理由も。その、佐藤くん探しに協力してくれますか?」


 心の底からどうでも良いと思ったのを訂正する。妹で置き換えて考えて初めて伊藤の気持ちを理解した。

 シスターに思い人がいるという事への憎しみを、嫌と言う程。

 宇里漉に目配せすれば、涙目の彼は瞳に炎を燃やしていた。きっと妹とダブらせて伊藤の姉を見ていたのだろう。

 そりゃ、ほっとけないってね。


「良いよ。やるよ」

「おう。俺達に出来る事なら何でもするぜ。まず俺から提案だが全国の佐藤さんを一人残らず殺していくってのはどうだ?」

「それ、凄い聞いた事があるお話ですね!? リアル●ごっこ!? リアル鬼●っこですよね!!?」

「それは止めよう。僕が死ぬのはともかくとして、妹が死ぬ事になる。そしたら、僕は全世界の人間を悲しみと怒りで呪い殺してしまうかもしれない」

「……取り合えず、チャイムもなったことですし、明日までに姉の交遊関係諸々を表にして持って来るのでお開きにしますか」

「そうだな、続きは明日の放課後っつー事で」


 教師の登場と共に、各々、興奮の覚めぬまま席へ戻り授業へと戻った。

 僕もまた自分の世界へ戻った。

 窓の外には見慣れた小学校のグラウンドが映る。時間的に今外を駆けているのは屋外クラブの子供達か。

 うーむ。僕の幼女フィルターアイズは真ん中でボールを蹴る女の子を五年生と告げている。

 小五なんて老けすぎだ。幼女愛好家の僕にとってはもう彼女は対象外である。

 僕の幼女ラインは小二迄、それ以降はババァだ。きっと彼女達はお婆ちゃんの知恵の一つや二つそらんじているに違いない。

 妹は、いつまで経ってもババァになんてなりはしないけどね。例外、例外。


 ――ああ、変な胸騒ぎがする。


 伊藤の話を聞いたからであろうか。

妹も他人に感化され想ってもない人に遊び感覚でチョコを作っているかもしれない、なんて妄想が飛び交う。

 まさか、あの妹に限ってそんなことはない。

 他人に対してはおろか僕にすら興味を示そうとはしない妹が、大の苦手である料理を自発的に行うだなんて事を。

 まさか、まさかね。




 ――神は死んだ。


 罰当たりな誰かの台詞が頭の中で木霊している。何故か、そんなの分かっている。

 不安が的中したのだ。

 玄関を開けてすぐ僕にまとわりついたのは甘ったるいチョコの匂いと、鼻につく焦げ臭さ。

 確信した。これはアレを作っていると。

 すぐさま自室に戻りパソコンを開いて、キッチンの監視カメラの映像を開き出した。

 なんと、そこに現れたのは小学生の時のエプロンを付けて経口型殺人兵器もといチョコを作る妹の姿だった。

 ん? 何で監視カメラがあるかって? そりゃ、妹を想う兄の気持ちだよ。トイレと風呂以外の家中の至る所に監視カメラを設置して、いつでも妹を見れる様にしている。

 しかも、ワンクリックで録画モードに切り替えられる優れた監視カメラだ。

 即効録画しつつ妹の狂行に全神経を走らせる。

 どうやら苦戦しながら作っているのは単純なハート型のチョコ板もとい二階の僕の部屋まで悪臭漂う異物の様だ。

 例え素晴らし過ぎるクオリティであれど、妹が初めて作った貴重なチョコである事には変わらない。

 貰う奴はなんと幸運の持ち主なのだか……と、妹がチョコペンで書き始めた名前を見て僕の思考は停止した。


「っっ!!!!???」


 ――ウリスキさんへ


 この世に二つとない僕の友人である宇里漉の名字を書き終えた妹は満足気に微笑んでいた。



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