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夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第一四章:薫の青春時代
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14-04 将来の夢

 薫は高校生になった。一般に富裕層の子女が通うのは”名門”と呼ばれるお嬢様学校や超進学校が多いが、サイバーテック・ロイドの創業者でいまや世界的複合企業体の総帥の江藤英樹の方針で、ごく一般的な公立高校に通っている。


 これは英樹をはじめ江藤家の人々が全て一般的な公立高校の出身で、いくら富裕層になったからといって浮世離れした生活をして堕落するのをよしとしないためだった。実際、薫の母の江藤香織も愛媛県内の県立高校に通っていたから、娘も同じようにしようというものだった。


 ただ当時の江藤家は東京に拠点を移していたので、薫はサイバーテック東京本社近くにある都立東京第15高校に通っていた。この高校は日本人だけでなく元”難民”や移民の子女も学んでいた。その中には”奴ら”に機械娘や機械化人に改造された生徒もいた。


 「おはようございます、今日から担任をします鄭栄嶺てい えいれいです。私は留学で日本に来ましたが、そのまま住民登録した中国人です。担当は化学ですので、教科選択によっては授業を担当することになりいます」


 戦後、国家の枠組みが崩れ、多数の国では住民登録が認められさえすれば元の国籍に関係なく就職も進学も可能になっていた。日本も戦時体制による労働力不足や戦没者を多く出したことから、比較的多くの住民を受け入れていた。


 そのため地域によっては元外国人の割合が半数超えていた。特に東京第15高校が所在する地域住民はサイバーテック・ロイドが労働者として多数雇用して居住していたので、日本人の割合が少なかった。


 薫の場合、日本人として登録されていたが実際は父親が中国人のハーフだった。父は張健軍といい現在では”張健軍式核融合炉”として名前を残している科学者だった。この核融合炉の実用化により、世界のエネルギー問題は解決に向かっていたほどだった。この核融合炉の特許権は相当安く提供されているが、今でも薫の元に莫大な富をもたらしていた。しかし薫は資産には興味はなかった。日々の生活に必要な金銭があれば充分だと思っていた。


 住民登録で日本人になっていることよりも嫌だったのは、”普通人”となっていることだった。この普通人は”奴ら”に人体改造されていないという意味で、なんらかの人体改造された場合”機械人”と登録されていた。この登録上の区分は住民サービスの種類を選択するためのもので、差別する意図はなかったが、一部には差別する心無いものもいた。


 薫の自我は機械脳が司っており、機械化人よりも機械にちかいものと思っていた。なのに、自分は普通の人間として扱われている。いくら、それで差別されることはないとしてもだ。だから薫は自分の住民登録証を見るのが嫌だった。


 入学式の日、薫は義母の尚美と一緒にいったが、その顔には眼鏡をしていた。薫は両目とも義眼なのに。



 「薫さん、あなた眼鏡する必要はないはずでは? 」

 「ううん、あたし今日からイメチェンしようと思うのよ。高校で将来の夢を見つけたいのよ」


 薫は将来の夢を高校生活で探そうとしていた。

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