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夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第一二章:機械娘前史(前編)
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禁断の”機械娘”への改造画像

 日本など世界各国の情報機関や研究機関が保有していながら、現在ではほどんど公開されない映像に”奴ら”による”機械娘”への改造の様子を収めたものが大量に残されている。これらは”奴ら”の支配地域にあった改造キャンプなどから回収されたもので、あまりにもショッキングな映像であった。その殆どが「心を持った人間」を「操られるだけの無機質と有機物が合成された人形」に改造されるからだ。


 2044年現在では、アンドロイドやガイノイドなど最初から全てを設計した上で機械として作るのが一般的であり、サイバーテック・ロイドでは其方の部門の売り上げの方が大きいほどである。しかし”奴ら”側は大戦中に国際連邦機構側のパワードスーツ部隊に対抗するために、テロリストや兵士を急造する手段として多用したのが、徴用した住民をサイボーグにする禁断の行為だった。


 こうしたのも”奴ら”の支持者や協力者だけでは、国連機構軍に対抗したり支配地域を維持することが出来ないため、洗脳による戦力化の手段のためであった。そのため”奴ら”の最盛期には国連機構軍はサイボーグ部隊との辛い戦いを強いられていた。なぜなら通常の軍隊と違い元は無辜の住民を相手にしなければならなかったからだ。


 国連機構軍ではサイボーグ戦闘員の男性型を”機械兵”、女性型を”機械娘”と呼んでいたが、道具に成り下がったとはいえ”奴ら”に改造された被害者を破壊しているため、現場からは苦悩の声が数多くだされた。


 この”奴ら”の非人道性が世界に知れると、急速に勢力が衰えることになり、2030年6月12日に”奴ら”の最後の拠点があった中央アジアのコンロン・シティーが陥落したのを最後に大規模な活動は収束したが、今も小規模なテロ行為は続いている。


 日本の国家情報局が所蔵する資料に、半島戦役の際に押収した”機械娘”の製造場面を収めた画像がある。そこに”奴ら”側の科学者が開発したナノマシーンによる人体組織の機械化の様子であった。それを最初に前田所長と江藤会長に見せられたとき薫はショックのあまり気を失ったほどであった。


 改造されたのは主に”奴ら”の支配を受け入れないレジスタンス部隊の構成員のほか、町や村で拉致された普通の市民が多かったが、中には”奴ら”へ心の底から忠誠心を誓った者もいた。薫が見せられたのは拉致してきた一般女性を戦闘用パワードスーツのコアになる”機械娘”に改造した際のものだった。


 最初の場面では様々な衣装を着た大勢の女性が映し出されていた。多くは私服と思われるものを着用していたが、中には看護師などの作業着を着た女性もいた。彼女らは次々と服を脱ぐように強制された上、左腕にナンバーを刻印されていった。ここから先は”奴ら”は機械の部品の素材としか彼女らを扱わなくなった。


 彼女らは全身のあらゆる毛を取り除くために水槽のようなところに漬けられ一切の毛がない姿にされ、そこを出ると今度は全身の皮膚に油脂のようなものを機械によって塗られていった。そして脂まみれになった彼女らは”奴ら”が”鋼鐵の子宮”と呼んでいた改造装置に入れられていった。


 この”鋼鐵の子宮”は人型の鋳型のような形状をしており、被害者の女性は作業用”機械娘”によって首から下を嵌められると装置は作動した。その時、中では人体組織を溶解し機械細胞と融合させる反応が行なわれており、文字通り”身体が溶ける”激痛を受けるため泣き叫んだり気絶するものが続出していた。


 首から下が機械細胞に置き換わると、上から頭部を多い被せるマスクが嵌められ、頭蓋骨内部の脳漿を電脳化する作業とマスクと頭部の融合作業が行われ、彼女らの機械生命体への改造が終了したが、此処までに要した時間は六時間といわれている。このような手段をとったのも”奴ら”は精密な駆動装置を製作するよりも人間の神経細胞を使った方が早く大量に戦闘マシーンを生み出せるからだという恐ろしい理由だといわれている。


 ”鋼鐵の子宮”から出た彼女らの身体は、無機質な機械化筋肉細胞に覆われたグロテスクな姿に変貌していた。そのうえ自我は完全に消滅しており最早人間の心が甦ることはない状態であった。そして規則正しく行進した先には、サイバーテック・ロイドのパワードスーツをデット・コピーした女性用戦闘スーツが待っており、そこで彼女らはスーツに完全に融合させられる作業が行なわれ永久一体化されたうえで、戦闘用”機械娘”として前線に送られた・・・


 その後の彼女らの多くは、最早人間の心を取り戻せないので、完全に破壊されるまで戦い続けた。そのため多くは身も心も永遠に失われたとされている。まさに”奴ら”が人類をモノを作り出すための素材にしか見ていなかった証左だといえる。 

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