12-02 元に戻れない”機械娘”
”ガーディアン・レディ”の第二シーズンのストーリーの一つに「戻れない」というのがある。これは秘密結社「メタルカパニー」に拉致された女性が機械生命体に改造される事件を扱ったもので、ガーディアン・レディの活躍で改造施設を発見し、拉致された女性たちを保護するまでを描いている。
この話の中で、最初に拉致された女性は機械生命体に既に改造されたため、もう元の人間の姿に戻れないという悲劇があった。機械生命体になった彼女らの一部は「メタルカパニー」に反旗を掲げたために抹殺され、残った者も元は人間という事を知らなかったメンバーによって”破壊”されるなど残酷なシーンもあった。
この時、唯一機械生命体で生き残った愛美が、もう人間に戻れない改造人間の悲哀を描いたことが話題になったが、この時あまり公にならなかった事があった。劇中登場した機械生命体にされた女性は実際に”奴ら”の手によって改造された”機械娘”であったことだ。
現在、江藤薫らサイバーテックが開発している機械娘は、原則として人間に戻れることが前提であるが、”奴ら”の手による”機械娘”は強制的にサイボーグに改造された者達であった。この事は現在は当局の緘口令により触れられることはないが、現在も被害者の女性は存在している。
”機械娘”の改造の程度は各々差があり、内臓の一部のみを機械化された者からほぼ全身を機械化細胞を埋め込まれ体表をメタリックな外骨格に覆われたものまでいた。彼女らは”奴ら”陣営を殲滅しようとする国際連邦機構軍のパワードスーツ隊に対抗するために、”捨て石”のように投入されていた。
”奴ら”から奪還した地域では、女性人口が大幅に減ってしまい、殆ど年老いた者だけしかいない場合が多かった。後には高齢化した住民と過酷な支配を生き延びた僅かな男性と”機械娘”で構成された社会が出現していた。”機械娘”の多くは生殖能力を失っていたことから人口の将来的な減少は明らかであった。
現在、組織培養による人間体への復元技術が進歩したので”機械娘”をある程度まで元の身体に戻せるようになったが、全員が受けられるわけではないので”機械娘”のままの女性が世界各国にいるが、その総数は本人が認めない事例も多く、おそらく数千万人単位だといわれているが、大戦中の被害者の総数は不明である。推測ではあるが、行方不明とされた数億人の何割かが該当するといわれている。
作中に出た愛美のように全身をメタリックな外骨格に覆われた”機械娘”は、ほぼ全身の組織が機械細胞に侵食されているので、もはや元には戻れなくなっている。このような状態のものが”ガーディアン・レディ”に出演していた。
”機械娘”にされた愛実役をした役者などは、全て戻れない身体の女性たちであった。彼女らは自分の身体を維持するために働かなければならないので、番組に出演したが視聴者の一部から”奴ら”の犠牲者に対する冒涜との指摘もあった。
このように”機械娘”は社会の一員として働いているが、そういった”機械娘”のひとりが実は江藤薫である。彼女の場合、脳腫瘍のため眼球と視神経と大脳皮質の大部分を切除したため、ほぼ寝たきりになったので達川技師により”奴ら”の技術を使い電脳化と義眼化、運動神経系の一部機械化とダメージを受けた内臓の人工臓器化などの処置を受けている。なお生殖能力は残されているので将来子を授かる能力はある。
薫もそのことを知っているが、やはり今も一部機械化された身体に嫌悪感があるようで、前田祐三所長によれば彼女は義眼や人工臓器の調子が悪かったりすると相当機嫌が悪いという。




