12-01 ”奴ら”に狙われた機械娘
いま、今井美由紀らが詳細も知らされず「改造」された機械娘であるが、表面上は人間が装着するタイプのパワードスーツの一種である。このようなタイプは消防士や核分裂型原発廃炉作業など危険な作業現場で用いられるのが一般的であるし、自衛隊の機兵部隊など軍事目的で使われる場合もある。
次の見本市、正確には国際汎用人型機械ショーでサイバーテック・ロイドが披露する予定のパワードスーツのひとつが”機械娘”であるが、いままでにもこの種の女性専用スーツが登場したことは数え切れないほどあるし、目新しいものでもない。だが、江藤薫らの開発チームが”奴ら”から大小さまざまな妨害活動や諜報活動のターゲットになってきた。
その原因のひとつはサイバーテック・ロイド創業者の江藤英樹が”奴ら”を誘き寄せようと意図して流したこともあるが、機械娘のテクノロジーの多くが”奴ら”が開発したものを発展させたものであるためだ。
これらの技術は当初”奴ら”に協力した科学者や技術者が生み出したものであったが、大戦が終結し資金的にも人材的にも縮減した”奴ら”では、最早改善することも再生産することも出来なくなったものであり、再び世界を恐怖に陥れるためには必要となる技術を奪うためであった。
これら”奴ら”による陰謀もあることは予見できたことから、若い娘を新型機械娘に改造する設備も、被験者もぎりぎりまで設置も決定もしなかったのは、可能な限り時間稼ぎをして”奴ら”の失策を招いたり、裏切り者をあぶりだすためもあった。
裏切り者の横山副首長などであることがわかったが、機械娘の被験者の選考過程が漏れたため殺害や負傷に至った例もあり、大きな犠牲をだしていた。そのため”機械娘の被験者はアルバイトから選ぶ”という無茶ともいえる選考方法をしたのも、”奴ら”に被験者を拉致される事をおそれたためであった。
それでも藤井明奈のように選考会場に向かう途中に津田美咲と間違われて洗脳プローグを脳髄に打ち込まれた犠牲者もいたので完全なものではなかった。そのため”奴ら”に対し隙を見せておびき出す作戦は必ずしも正しいものではなかったといえる。
それはさておき、本来”奴ら”が最初に開発した”機械娘”とサイバーテック・ロイドの機械娘の最大の違いといえば、前者は人体をほぼ機械生命体に改造してしまうが、後者は駆動機関との同調や制御システムとのリンクの為に被験者の体内にプローグを入れるが、外骨格と一体化しても戻すことが容易なことが挙げられる。
”奴ら”の”機械娘”は、偶然開発されたナノマシーンによる人体組織の機械化により、被験者を洗脳するとともに身体も”奴ら”の諜報活動や破壊活動などに従事しやすい形に改造された女性であった。無論、男性型も存在したが、若い女性を改造素材にした理由としては、生殖可能な女性人口を減らすことで、人類の急激な人口減少を引き起こそうとしたといわれている。
事実、”奴ら”側の支配地域の多くは、男女比の人口バランスの崩壊による人口減少が実際におきており、若い女性が殆ど”機械娘”にされた地域も存在した。このことは大戦初期に”奴ら”に対抗するために組織された国際連邦機構側が把握できなかった。
そのため知らず知らずのうちに”機械娘”にされた一般人女性を「殺人ガイノイド」として”破壊”する悲劇が各地で起きたほか、大戦当初投入された自動軍事用殺人マシーンが誤作動する原因にもなったため、現場が混乱する事態が多発した。
その後、”奴ら”の”機械娘”製造プラントの破壊や製造スタッフの収監などにより現在では”機械娘”の大量製造される悲劇はおきにくくなっているが、現在も”奴ら”による少数の”機械娘”によるテロが横行している。
それに対抗するためにサイバーテック・ロイドの機械娘が開発されたが、いかにして人体を極力改造しなくても、”機械娘”以上の能力が備わっているとされている。だからこそ狙われたのであった。




