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夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第一一章:それぞれの想い
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11-04 明奈の憂鬱

 ”奴ら”の正体については、今もはっきりとしない面もあるが、その目的は世界の軍事的・政治的均衡を崩壊させて戦乱の世にして、その課程で人類を大量粛清した後に最後に生き延びた自分達が新たな世界の創造者になろうとするのが目的だとされている。いわば自分達の理想にそぐわないと判断すれば抹殺したわけである。


 2022年に始まった混乱は2024年に核保有国各国が内乱状態に陥いり自滅したことで危機が頂点に達し、さらに各国の敵愾心を煽らせ民族同士を殺し合いさせて人類の大多数を死に至らしめる事をしようとしていた。実際に互いに”排除”すれば平和が訪れるとの誤解が同時多発テロ大戦中は蔓延していた。


 また混乱に陥ったいくつかの国では”奴ら”の影響下にある者による”独立国”が出現し、過去存在した如何なる国にも当てはまらないような恐怖政治を敷き、さらに多くの人類を殺害していった。


 この”奴ら”による人類滅亡の陰謀は、残された国の指導者が対抗組織である国際連邦機構を創立し、”奴ら”側のテロリストの殲滅と、新たな富の再分配制度の確立による社会秩序の再構築による民衆の支持獲得によって、滅亡寸前から逆転することが出来た。


 その後、「戦争を企てる者は犯罪者として制裁する」という国連軍による奴ら”への討伐に成功。2044年現在では、”奴ら”の組織は大半が消滅されたとされるが、依然として地下ではなおも陰謀を張り巡らせていた。


  東京の用賀にある、とある古い鉄筋四階建てのビルに日本各地に点在する”奴ら”の活動拠点のひとつがあった。アーティスト向けにスタジオや工房を提供しているのだが、その一つが”奴ら”の日本活動細胞が使っていた。


 ここでは、市販のパワードスーツを改造してテレビのキャラクターのコスプレ衣装を作ってイベントに参加するという名目だったが、本当は”東京ベイサイト文化祭”に潜入し新たな洗脳の”適合者”探しをするのが目的だった。これは洗脳ワクチンを当局が秘密裏に接種しているので、新たな”適合者”を探せなくなっているためであるが、中には社会に不満がある者を見つけ出して”奴ら”にリクルートすることもあった。そのために一般の同人サークルの振りをしていた。


 このサークルは”ガーディアン・エンジェル”のコスプレをすることになっており、悪の道に落ちた彼女らという設定でデザインしたスーツであった。急造された工作員の藤井明奈もそのコスプレをすることになっていた。コスプレに使うといって工作活動や破壊活動をするための機材を会場内に持ち込みやすくなるからだ。


 今回の目的は会場内で行なわれるサイバーテック・ロイドの機械娘の披露会への潜入と、津田美咲の拉致であった。なお、美咲の拉致については決行しないこともありうるということだった。


 明奈が着る”グリーン・エンジェル”は緑色のパワードスーツで、劇中では情報担当の三島みどりが装着していた。奇しくもこれは津田美咲が着せられた機械娘の外骨格と同じものであった。これに対し彼女はいやな気持ちでいっぱいだった。よりによって何で奴と同じ色なのよって。


 その時、奥から「今度の15日が作戦決行だ。お前ら4人が本物の”ガーディアン・エンジェル”に対する工作を行なう。なお、相手に油断があればメンバーの拉致を行なうからな。それまで準備を怠るな」という声がした。この声の主こそが現在の”奴ら”の日本支部リーダーだ。


 この時、明奈は憂鬱でしかたがなかった。いくら美咲に対する嫉妬心があったとはいえ、それを利用されて工作員に改造されてしまったからだ。大変後悔しているが手遅れだった。今は操り人形でしかなく、次は”ガーディアン・エンジェル”の機ぐるみに入れられてしまうからだ。しかも自分の意思に関係なく。


 もはや明奈の体は”奴ら”の洗脳チップが指示するようにしか動かなくなっており、インナースーツに着替えた後、機ぐるみのパーツを自分の手で付けていった。「どうして美咲が着ている機械娘に似た衣装を着なければならないのよ。本当は洗脳されなければあいつのかわりに本物の機械娘になれたはずなのに」と悔しいさで心は満たされていたが、口から出たのは「ボス、この機ぐるみですが最高にフィットしています。ありがとうございます」であった。そう明奈の身体から心は奪われ、代わりに”奴ら”にとって都合の良いものに乗っ取られていたのだ。


 その日には、明奈ら4人の機ぐるみを着た女性は、本物の機械娘に対する工作活動を行なおうとしていた。




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