付きまとうアンドロイドと娘
かつて都が置かれていた京の都から東に向かうことを「東下り」といったが、今は日本の首都は東京であり現代では不適切な表現なのかもしれない。今、一行は京都付近を通過して琵琶湖の南側を走行していた。その時薫は美由紀と連絡を取りそのまま一緒に富山に行くと伝えた。
これは、聖美と真実が乗った運搬車と合流すると”奴ら”の尾行にまで泰三の存在を知られる恐れがあったためだ。それで美由紀と一緒に富山に一度行ってから祐三の車でサイバーテック東京本社に向かうことにした。また、そうした理由も出来るだけ父と一緒にいる時間を長く取ろうとも思ったからだ。
祐三と泰三び一行はそのまま北陸方面へと進路をとったが、聖美と真実を乗せた運搬車は関が原方面から東に向かっていった。その時合流しないという方針を伝えられた望月はもう一つ別の方針を伝えられた。停車しても極力出てはいけないし、後ろを尾行している不審なワゴン車があるけど気が付かない振りをしなさいというものであった。
この事を聞いた望月はなにか大変な者につけられている事を知って恐ろしいと思った。たしかに今回の機械娘のプロジェクトは社内でもいわくつきのもので、新商品とは別の目的があるのではないかという噂があった。そのためライバル企業や他の国家機関が探りをいれているとの噂は根強かった。
しかし彼は気が付いていた。尾行をしているのが”奴ら”に違いないということを。過去に創業者の江藤英樹が何度も襲撃するなどサイバーテックに対するテロを実行しているからだ。だから「気が付かない振りをしなさい」と言われたのだと感じた。
その頃、尾行をしている明奈は「停車」しない運搬車にいらだっていた。副所長の予測では琵琶湖付近のパーキングで薫達と合流すると思われていたのに、今は岐阜付近を走行している。もしかすると浜名湖付近で停車する可能性もあるが、最後まで合流しないかもしれなかった。それでもしかすると尾行しているのがばれたかもしれないと思った。それで副所長にメールを打ったところ尾行がばれているなら振り切るために高速を降りたりするはずだ。それをしないならばれていないはずだというアドバイスが帰ってきた。
運搬車は浜名湖近くのパーキングに入り長時間停車していたが何ら動きはなかった。二時間ほどして男が一人降りてきたので、運転していたアンドロイドも一緒についてきた。この時望月は薫から一度降りてもいいけどその時大きな男が付いてくるはずだから気が付かない振りをしなさい。もし拉致するかのような行動をしたら逃げてもかまわないというものだった。
望月の後ろをワゴンから大男が降りてきた。彼はジーパンに黒いティーシャツを着た浅黒い肌をしていたが、”奴ら”の工作用アンドロイドであった。それは望月の後ろを付いてきていた。取りあえず望月はトイレに入って自動販売機コーナーに行って缶コーヒーを買ったが、やはりさっきの大男がそばについてきた。それで薫の指示のように気が付かない振りをして行った。
戻る時に運搬車を見ると車の後ろに女の影があった、そう”奴ら”の明奈だった。彼女は望月に近づいてきて「お仕事なのですか? どこまで行くのですか? 」と尋ねた。「東京まで資材を運んでいるのですよ。世間ではお盆休みが近いというのに当分家に戻れないのです。あなたこそ何をするのですか」と逆に質問した。
「東京で開催されるイベントに参加するのです。それでコスプレ衣装などを積んでいく途中です。もしよろしければわたし達のブースにきませんか? 」といってチラシを渡された。そこには「東京ベイエリア文化祭」の参加ブースの宣伝が書かれていた。彼女は「ガーディアン・レディ」の同人サークルのメンバーであるかのようだった。
望月は車に戻ると探査装置を作動させた。すると車の後ろには研究所で付けられていたGPSだけでなく得体の知れない装置が付けられていた。




