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尾行するワゴン

 研究所を出発した機械娘を乗せたガイノイド運搬車は大阪の北側付近を通過していた。このあたりは同時多発戦争の時、旧中国軍が保有していた巡航ミサイルによる核攻撃を受けた被災地だ。多くは自衛隊による迎撃に成功したが、何発かは着弾し核爆発したほか、迎撃されたミサイルに搭載されていた核弾頭の核物質が飛散したため、現在でも立ち入り禁止になっている地域がある。


 そもそも日本は「核の傘」に守られているし、互いに抑止力が働いているから相手も迂闊に全面戦争になる愚行はありえないといわれていたが、実際に限定的なものとはいえ核戦争は起きてしまった。そのため日本各地の数多くの中小都市が壊滅したほか、大規模な核攻撃を受けた大陸や半島から数千万単位で難民が押し寄せたため日本社会の混乱が収束するのに十数年かかってしまった。


 現在では人類の大規模な”粛清”を目的として”奴ら”に協力したり踊らされた政治家や軍人が引き起こしたとされているが、当時は大混乱に陥り人類滅亡の一歩手前まで状況が悪化していた。二十年が経過しても日本各地に「核汚染地域」が点在している状況には変わりなかった。


 そうした核汚染地域の南側の高速道路を移動しているが、道路の北側は真っ黒なのに南側は急速に発展した高層ビル群が林立しており、対照的な様相を呈していたが、その北側よりを運搬車が走行しているが、少し離れたところに使い込んだ2036年式レベッカ型ワゴンが追走していた。これは”奴ら”の工作員が乗っていた。整備士の山崎がつけた発信機を頼りに尾行していた。


 そのレベッカの後ろをさらに尾行していたのが薫と祐三が乗る新型リパブリック乗用車であった。そう二人は山崎の行動はお見通しだった。


 「いまどき尾行だなんて古い手を使うもんだ。でもこうして私等も尾行しているから一緒か。あの車は岡山からずっと尾行しているのは間違いない。これから追い抜く際に中を確認しよう」といって祐三は運転モードを手動にして横を追い抜いていった。自動運転では一定の車間距離を取るようにするため抜くことができないからだ。


 祐三の乗用車の横にあるセンサーが工作員が乗る車内を探査していた。怪しまれないように運搬車よりも遠くで自動モードに戻して分析を始めた。その結果車内には工作員二人がいる事を確認した。


 「運転手の方は巧妙に中年の労務者に偽装したアンドロイドのようだな。”奴ら”も最近では仲間の確保が難しくなったのでアンドロイドやバイオロイドを多用しているという噂は本当だったんだ。もう一人は若い女だ、拡大してみよう」といって祐三は車内の解析コンピューターを操作した。すると一人の思い当たる人物がいた。薫の電脳のデータベースにヒットした。


 「彼女は機械娘のバイト募集の際に来て最終専攻まで残った藤井明奈だ。本当は美由紀や美咲よりも適合性が高かったので採用しようと思ったけど身体に不審な点があったので不合格にしたけど、やっぱり”奴ら”の側の人間だったんだ」と驚いていた。


 そもそもバイト募集をネットではなく大学の教務課に貼るという半世紀近く前の手段を取ったのも”奴ら”の監視網に極力かからないようにするためであったが、やっぱり”奴ら”は薫達の研究所をずっと監視していたのは間違いないようだった。


 「あの藤井はたぶん東京で機械娘に近づこうとするのは間違いないだろう。東京では事を起こさないだろうけどスパイ活動などを行なうだろうな。それに帰れば横山らの罠がまっているから、これから気はぬけないだろう」と二人はこれから直面する問題の対応を考えていた。

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