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00-05 伊達マスク

 朝になり、出かける前に美由紀はもしかすると40日間留守にすることになるかもしれないので、大家の家に行った。大家の家はアパートの隣にあったが、ここもアパートに負けないぐらい古い家で、窓枠が木枠という部屋もあったり崩れ落ちたりヒビが入ったところにモルタルを塗りこんだところがあるなど、ほとんど維持費にお金をかけていない様子が見て取れた。この家に住む大家は90歳近い老婆であったが、かなり自分が思ったことをズバズバ言い過ぎるたちなので美由紀は苦手だった。


 「大家さん、いつもお世話になっています今井です。もしかすると長期のアルバイトが決まるかもしれないので、一ヶ月以上部屋を空けるかもしれないのですが、大丈夫でしょうか?」と話しかけた。すると大家は「アルバイト?あんた山小屋の住み込みでもするのかね、それとも海水浴場の海の家かね?」と逆に聞かれた。それで美由紀は「いいえ、成内にある研究所の面接に行くんです。受かればいいかと思いますけど、どうでしょうか」と不安げに言った。そうしたら大家はここぞとばかり駄目だしし始めた。


 「今井さん。前から思ったんだけどあんたの顔のマスクは伊達かね?わたしゃ最初は花粉症かなんかと思っていたけど、梅雨が明けてもしているからやはりそうじゃないかと判ったよ。前にもいったけど、これからアルバイトの面接に行くんでしょ?そんなに自分の素を見せるのが恥ずかしいのかね。いくら人間外見ではないといったて、マスクをしていたのではどのような人か判らないでしょ。だから何回アルバイトの面接に落ちてしまうのよ。いまどきの若い者はなぜ花粉症や風邪がはやっている時期でもないのにマスクをしているのかわからないけど、そんなに自分の素顔を他人様にお見せできないというのかね。ホント面接の時にははずしなさいよ」と説教された。


 美由紀は大家の言うように普段マスクをしている。マスクをしてなくって成功したことといえば今の大学の入試のときだったが、この時は居眠りしたマスクを電車の中で落としたので、仕方なく受けたからだ。しかし本命の大学の時には「勝負マスク」とばかりにしていったため、あえなく撃沈していた。そのときは同じようにマスクをした受験生が多くいた安心感もあったが、自分を隠す意図でマスクをしていて自分の実力を隠してしまったのではないかとすら思ってしまった。


 一年中マスクを美由紀がするようになったのは同級生の男子から「地黒」や「ヤマンバ」といわれたトラウマからであったが、今思うとかえって損をしていたのかもしれない。そう思うと美由紀はその場でこれからはマスクを掛けるのをやめようと思いその場で外した。すると大家は「あんたの全体の顔を見るのははじめてだけど、なかなかどうしてかわいいじゃないの。今まで相当存していたんじゃないのかい」と大変驚いていた。美由紀は今日は泊り込みになりますのでお願いしますといったが、大家は「がんばってきなはれ」と激励し見送ってくれた。


 ここで大家がふっと気が付いた。成内にある研究所といえば得体のしれない異形の創造物が闊歩しているという噂があることに。彼女がそこに行くといったが、一体何をさせるというのか疑問に思った。

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