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夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第五章:機械娘へと改造される日々
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機械娘になるー真実の場合ー 

 機械娘にされた美咲が、違和感を感じながら第五研究室に向かっている間、栗田真実を機械娘にする準備が行われていた。真実は先ほどの美咲と同じ姿でスタンバイしていた。ただ違うのはGスーツインナーの色が赤色であった。


 真実は、好きな格闘技であるマシンガールプロレスの女子レスラーの登場シーンのようだと感じていた。そうリングサイドに向かうかのような。


 そのシーンは概ねこんな感じだった。まず二人のレスラーが競泳水着もしくはレオタードのような女子プロレス用の衣装を着た二人が入場してきた。しかし二人はリングに登らず、観衆の前で身体をパワードスーツの中に入り、リング下で機械の身体になり、リングで機械と人間が一体化した格闘をする。これが、マシンガールプロレスの大体の流れである。


 この格闘技が始まったのも、世界同時多発テロ戦争が当初は大規模な核兵器や化学兵器が使われた戦いだったが、その殆どがテロリストが国家の中枢部を操作し世界の大国の共倒れを狙っていたことが判明。大規模な正規軍同士の戦闘がなくなった、


 一方でテロリストを犯罪者として逮捕もしくは殺害するため、パワードスーツを着用した機兵部隊が活躍した。それにより、世界各国で暗躍したテロ組織は大方壊滅し、近年になってようやく新たな世界秩序が構築されつつあった。そのため、パワードスーツが国際社会で正義の象徴のようにもてはやされるようになった。


 これらの機兵部隊の退役軍人や名声にあやかった者たちが、パワードスーツによる格闘技を興行としてはじめたが、マシンプロレスであり、そのうち女性、特に若年層が行うのがマシンガールプロレスだった。真実が特に好んでいたのがこの格闘技だった。


 このプロレスには様々な団体があり、顔は覆わないものを着用する団体から、プロポーション抜群の女性が、醜い機械の身体にある団体まで様々なものがある。中には”悪役”もいて醜悪な外骨格を纏い素顔すら見せないレスラーもいた。


 真実は高校卒業時に好きが高じて入門しようとしたが、どの団体もおおむね身長150センチ以上が入門の条件であり、141センチの真実が入門できる団体は無かった。すなわち門前払いになった。そのため夢を諦めざるを得なかった。


 真美は背が低く幼い顔つきなので、この時代成人が18歳にも関わらず、中学生と間違われるのもしばしばで、大学に授業を受けに行く時ですら、中学生扱いにされる始末だ。ひどい時には夜中に繁華街を出歩いていた時に”不良中学生少女”として補導されかかったことすらあった。


 今回、研究所のバイト募集に応募したのは大学で機械娘の噂を聞いたかららしかった。機械娘は本当は機密であるはずだが、薫が何を思ったのか機械娘に調整した研究員達を野外で陸上自衛隊のレンジャー部隊さながらの演習をやらせたため、どうも研究所で新型パワードスーツの開発を行っていることが伝わったようだ。


 無論、機械娘の件はマスコミにリークする時期は、宣伝効果も計算し、あらかじめ今年の国際見本市が開催される直前と決められいたが、研究所のある県内では都市伝説のような話になっていたようである。


 真美は機械娘の概要はしらないものの、もしかすると格闘用パワードスーツに関わりのあるバイトだと思っていたようだ。つまりマシンガールになれなくても、そのレスラーが着用するものに関われるのかと考えていた。


 そのため機械娘としてパワードスーツの一種であるガイノイドスーツの被験者になれると知った時、大変うれしくってたまらなかった。美由紀がエリカになれることに感激したのと同じく。


 真美は機械娘に調整されると、憧れのマシンガールプロレスのレスラーのようになれるのだと信じていた。もっとも真実が思っていたのとは違うのは、パワードスーツで闘うわけでもなく、試合の前後だけでなく四六時中一ヶ月も機械娘の”部品”になることであった。真美は身体を機械の中に埋め込められることとは思っていなかった。


 それはさておき真実が被験者に選ばれたのは、薫が中学生か高校生かの若くて背が低い被験者を求めたためだった。薫はどうやら将来の機兵部隊のような特殊部隊の候補生や宇宙開発のための人材を養成する、学校で使うようないわば”体操着”感覚のスーツを出品したかったようだ。


 研究所員の多くは標準的な身長のものが多数で、薫もその中に入るので、真実のような”標準以下”のバイトは重宝であった。いわば両者の要望が合致したのだ。


 なお真実の機械娘のカラーは赤色であった。これは「ガーディアン・エンジェル」のリーダーのサヤカと同じものであった。昔エリカとして活動していた当時、向こうが大変美人でプライドが高く意見がぶつかっっていたので、薫と仲が悪かった。それで敢えてこの色にしたようだ。


 真実の小さな体は、あっという間に全自動着装装置によって機械娘にされて、扉の中から出てきた。すると機械に改造された悲壮感もなく薫に対しはしゃぎながら「江藤主任ありがとうございます。なんだが生まれ変わったようで嬉しいです。すぐにでもプロレスで闘いたいです。明日からトレーニングを頑張ります」と言った。


 薫は、あっけに取られてしまい、一瞬言葉を失ったが気を取り直して、「あのう栗田さん。これから試合をするのじゃなくてバイトをするのよ。なにもあなたをマシンガールプロレスのレスラーにするわけではないのですから。あんまり変な事を言わないでください」と頭を抱えながらしゃべっていた。


 どうやら彼女は真実のあっけらかんとした言葉に面を食らってしまったようだ。薫は心のなかで「こいつ、ここまでミーハーな娘だったの?いくら背の低い機械娘がいると思ったけど失敗だったのかな?なんとかしてバイトだけは最後までしてもらおう。いまさら代わりを探すわけにも行かないし」と選択を間違っていたのかなと後悔していた。


 薫は眼帯をしている左目を抑えながら「あのう、そうだね栗田真実さん。あなたはね機械娘になったのよ。レスラーとしてじゃなく、覆面レスラーでもないのよ。機械娘なのよ。これから機械娘として私達の実験に協力してもらうし、見本市にガイノイドのモデルとして頑張ってほしいのよ。別にトレーニングというか運動などをしなくてもいいのよ。それでねえ、あなたが言う試合ですが、あのう、そのう、まあ見本市も他のメーカーさんの製品との戦いですし、商談をまとめるのも戦いですから、あなたもその競争というか試合に立ち向かって欲しいのよ。取り合えず、これからあなたが機械娘として問題なく活動できるかを確認するから、第四研究室に行ってくださいね。お願いよ」といままで聞いたことがないような混乱した話しぶりだった。


 機械娘になった真実を見送りながら薫は「あの娘はもしかすると駄目なのかもしれないけど、なんとか戦力になってもらいたいな。あんなに機械娘にされて喜んだ人は始めて見たしね」とつぶやいていた。


 一方、真実の方はというと、機械娘にされて感傷的になっている美咲とは対照的に、機械娘の外骨格に覆われることで逆にハイテンションになったようだった。それで機械娘の機能確認中も検査をする研究員もあきれてしまうほどだった。


 この様子を見ていた美由紀は、あまりにも対照的な二人を目の当たりにして明後日に機械娘になることが不安に思ってきた。取り合えず美由紀は明日はバイトの一環として、新作のパワードスーツの着用モニターを頼まれていたため、その準備をすることになった。とにかく明日のことが終わってから考えようと思っていた。


 

 

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