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夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第五章:機械娘へと改造される日々
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機械娘になるー美咲の場合ー 後編

 ここまできて美咲は少し不安に思っていた。そのまま身体を全て機械に置き換えてしまうのではないかという気がしてきたのだ。無論、人間の身体を全て置き換えるのなら最初から機械の体を構築して、そこに脳や必要な内臓などを移植したほうが早いからだ。


 そのようなSF映画に出てくるサイボーグなどは、人体改造されて、そのように作られるが一昔前なら絵空事といえた。しかし現実にアメリカ合衆国で死刑囚とはいえ、生きた人間から脳と脊髄を摘出して機械の身体に移植する狂気に満ちた人体実験が行われたという事件が起きている。


 その事件では、人間の神経組織と脳組織を使った機械人形の起動に成功し、一ヶ月間問題なく稼動していたが、肉体を失い機械にされたことに死刑囚の頭脳が耐え切れなくなり、暴走事故を引き起こし研究所員を多数惨殺して最後は陸軍特殊部隊によって破壊される結末になった。この事件で倫理の面からも安全の面からも批判されたため、体の一部のみを使う機械に制限がかかるようになっている。


 緑色のビキニを着たような、ほぼ裸体美咲の軟らかい肌がまさに「加工」されようとしていた。まず全身に人工皮下組織が貼られていった。全て機械が包帯を巻くように美咲の身体に巻いていった。「なんか私ミイラにでもされるようだわ。でも拘束感はあるけど気持ちいいわね。なんか私の肌に潤いを与えるようだわ」とうっとりした気持ちになり、このまま眠ってしまいそうだった。


 意識が朦朧として夢心地に浸っていた美咲に突然衝撃が走った。いままで感じたことのない激しい痛みだった。この時美咲の下腹部の股間の前と後ろから管のようなものが入り、身体の奥にまで入り込んでいた。美咲もまだ男性経験はなかったが、身体の奥を突き動かされる痛みというか快感というかに襲われていた。「これって義父さんが以前言っていた大腸の内視鏡検査の時に挿入される管のようなものなの?しかし私のおなかの中を駆け巡るような感覚だわ。これから私はどうにかなってしまいそう」と、またしても不安な気持ちになった。


 人工皮下組織に覆われた美咲は首から下は湿っぽいタイツを着せられたようになり、腰から三つの管が飛び出していた。すると機械は用意されていたGスーツインナーの表皮を被せられた。その表皮も緑色で関節部分では蛇腹のようになっておりその間は固い殻のように物だった。美咲が感じる拘束感はさらにましていた。この感覚は高校の時にサイズの合っていないレオタードを着たときの感覚に似ていた。「あの時のレオタードのように一度着たら脱げなくなったような感じのようだわ」とおもったが、既に美咲の素肌は一ヶ月もの間自分でも見ることが出来ない姿になっていた。


 ここまで来るのにまだ二分もたっていなかったが、美咲の首から下はロボットのようになっていた。違っている点は呼吸とともに胸が上下しているぐらいだった。しかし、それもエリカのように確認できなくなるのは時間の問題だった。


 美咲の首から下に外骨格型ガイノイドの部品が付けられていった。一つ一つの部品が付けられていくに従い、まだ少女のあどけない美咲の体型が、メタリックな金属の外骨格に覆われていった。そしてついに首から下がガイノイドスーツに覆われた機械娘へ変貌した。


 「もう私の体を見る事は出来なくなったのね。これから顔も頭も被せられるのね」と思うと美咲は悲しくなった。美咲は自分の顔についてはある程度均整の取れた顔だと思っていた。高校時代にはラブレターを貰ったことがあり、同級生からは美人と思われていたようだ。そのため美咲は自分の顔に自信があったが、それも見納めになる時がきた。


 美咲の鼻と口に大きな管が通され、口には気道と消化器に伸びており、口内はマウスピースのようなものをくわえさせられた。唇の真ん中に開閉式の弁が取り付けられた。これでは声が出ないと思っていた時「これから脳波を探知する装置が稼動すれば、あなたがしゃべりたいことがマイクから出るようになります。もっとも機械娘から戻った時には、元のようにしゃべれるまで多少時間がかかります」とアナウンスがあった。これで美咲は顎を上下できなくなり固定されてしまった。まるでそれは猿轡のようであった。


 美咲の目の上にバイザーが被せられた。すると美咲の目の前に立体映像が投射された。横には薫の顔が映し出されており「津田美咲さん。機械娘の世界にようこそ。これからあなたを機械娘に完全に調整します。しばらくは慣れないと思いますが乗り越えてください」と言われた。この間美咲の頭髪はジェル状のものに固められ、様々な器具が取り付けられてヘルメットのようなものが被せられた。そしてバイザーの上にフェイスマスクが被せられた。美咲の体は機械娘に調整され、シリアルナンバーGGS770-005、通称”ミサキ”は完成した。


 この時、美咲は今までに無い感覚に襲われていた。自分の体が生まれ変わったかのような感覚に。全自動着装装置の扉が開き、歩き出した美咲は実感した。ついさっきまでの美人な美咲は機械娘の中に閉じ込められ、かわりに綺麗だが表情の変わらない顔面をもつメタリックなグリーンに白いラインが入ったボディのガイノイドスーツを纏った機械娘ミサキに生まれ変わったのだ。その姿は美咲のバイザーに映し出されていた。


 美咲は自分が機械の身体になったことを実感せざるを得なかった。先ほどまで軟らかい肌であったのが、硬い殻のような外骨格に覆われ、全身がガイノイドと変わらなくなっていた。外からの映像はバイザーに映し出される情報に置き換わり、音もイアフォンマイクから間接的に伝わる。手のひらの感覚はフィードバックで信号として伝わるが、生身の時と違い分厚い手袋をしている時と同じような感覚だった。


 「美咲さん、今日はこれから機械娘の機能をチェックしますので、後で第五研究室に行って下さい。これから三十分後に栗田真実さんを機械娘にしますので、それまで入浴してください」とアナウンスされた。次は真実の番だった。



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