私たちは改造娘ということかな
美由紀は研究所内で与えられた部屋にいた。様々な機具がおかれているが、どうやら機械娘にされたあと四六時中モニターするためのものらしい。下宿のボロアパートに比べ、新しく清潔感はあったが、どことなく病室のようである意味殺風景だった。そこでモニターにHDを接続し「ガーディアン・レディ」の画像を見ていた。もう一度エリカの活躍を見てみたくなったからだ。
ある日、二木えりかの同級生の水泳部の女性部員四人が競泳水着を着たまま拉致され、暗い地下室にあるアジトで両手両足を金具で縛られ拘束されていた。彼女らはえりかが通う高校の生徒だった。水着姿のまま両手両足を縛られ天井から吊るされた状況に理解が出来ず困惑していた。みんあ「どうして連れ去ったの」や「私たちをどうするというのよ」と叫んでいた。
すると全身黒尽くめの戦闘員の男と白衣の白髪の老人が入ってきた。白髪の男は秘密結社「ブラッティ・フラッグ」の戦闘員製造の責任者、マットマック・大竹だった。時々、現れては民間人を拉致し戦闘員に仕立てる困った犯罪者だ。
拘束された彼女らに大竹は「お前らは今度のミッションに適合していると思ったから拉致したのだ。これから四人ともガーディアン・レディの姿に改造する。ただし偽者の方だ。これから本物の評判を陥れるために活動してもらう。覚悟するがよい。なあに心配するなミッションが終了すれば元の生活に戻してやるぞ」と、いつものことながら出来の悪いお笑い芸人のようなズレまくった表情を浮かべていた。
彼女らは天井からぶら下げられた状態で、戦闘員達の手によって競泳水着姿のまま次々と外骨格のパーツを装着されてしまい、ついには全身が覆われてしまい、「ガーディアン・レディ」のパワードスーツ姿にされていった。
そして大竹が外骨格と生身の間にある空洞に「ブラッティ・フラッグ」が一般人を洗脳するために使う「ブラッティ・ジェル」と呼ばれる有機物が注ぎ込まれていった。この有機物はいつも改造される一般人がもだえるもので、以前の回には女性が宇宙人のような生命体と融合させられた時には相当苦しみ暴れていたほどだ。
四人の水泳部員たちは偽者のガーディアン・レディ姿にされて悶え苦しんでいたが、そのなかのエリカの友人の川口美穂子は「どうして私たちなのよ。他にもいるのにどうしてよ!それに私はエリカじゃないのよ。彼女を陥れることなんか出来ないよ。やめてください、お願い!」といって反抗していた。
だが、大竹は「お前らだから適任なんじゃよ。よーく知っているじゃろ二木えりかを。知り合いだからだ。恨むなら二木えりかにするんだな。なんだって彼女の正体はガーディアン・エリカだからな」といった。
抵抗する美穂子の口に大量の「ブラッティ・ジェル」が注ぎ込まれ、ぐったりとなった時にフェイスマスクが被せられた。彼女は偽者のガーディアン・エリカになった。
これは「ガーディアン・レディ」第三シーズン第9話の「偽者現る!エリカの涙」の冒頭部分である。この回ではエリカの姿に高校生が改造されるが、やはり自分達もこのようにされるのだろうかと思った。
「ガイノイドスーツ」や「機械娘」といった表現をしているが、やはり外見はパワードスーツ姿に、体はそのパーツというのが実際のところだと感じていた。長期間着用するというのも宇宙飛行士や交代も間々ならない戦場のパワードスーツで武装した機兵では結構やっていることだといえる。実際聖美が指摘していたことではあるが。
それにしても聖美はなぜ別行動になったのかという理由は聞かされていなかった。やはり彼女だけが「戦闘用」というのも気になるところであった。それにしても見本市だけならベテランのコンパニオンや研究所員を使えばいいのに、なぜわざわざ私のような女子大生のバイトを使ったのかということも疑問だ。
メーカーの知名度だけで応募してしまった自分も問題があるが、初日からいくらでも疑問が出てくるなど、本当にナゾが多すぎる。この疑問もバイトが終わるころには解決するだろうと自分に言い聞かせているが、本当に答えがわかるか疑問であった。
今日のところ、美由紀ら三人が改造されたのは下腹部だけでなく胴体全体だった。胸は「これって私なの?」と思うぐらい豊満なものに盛り上げられ、腰にはくびれがあった。そう、矯正下着を着せられたような状態であった。違う点といえば、それが衣服につかわれる繊維ではなく、組成がよくわからない樹脂のような外装であった。しかも、その下は人工皮下組織で覆われていた。つまり人間の皮膚ではなく機械娘の皮膚に改造されていた。
しかも、今夜の美由紀はこの姿で就寝するように言われていた。それは他の二人も一緒であったが、このGスーツインナーを着せられているとはいえ、まるで素肌のままで過ごしているような不思議な感覚であった。この感覚は、そう既に機械娘に改造されていると気づいた。
美由紀が見ていた「ガーディアン・レディ」の中では、本物の「ガーディアン・レディ」はパワードスーツを羽織っているだけなのに、偽者は文字通り「改造」されてしまい、自らの意思では脱げなくなっていた。美由紀は自分たちは「偽者」のように脱げないようになるのだと気づいた。この話の中では偽者が銀行強盗や車両破壊などの犯罪を繰り返した挙句、「本物」と対峙した際、もう元の身体に戻れないかもしれないと不安がる改造少女の悲哀が描かれていた。特に偽エリカの美穂子がエリカとの格闘中に洗脳から目覚め、身体が勝手にエリカを攻撃し敗北寸前に追い込んでもなお自分の身体を止める事が出来ず泣き叫ぶ姿は胸を打つものだった。
最終的には裏技を使って美穂子を解放することに成功するのだが、その後の終わり方は悲劇的であった。この画像を見て美由紀はこの時の美穂子のように自分達が研究所によって操り人形にされるのではないかと、不安に思っていた。
そう思う理由は、二十四時間研究所の管理下に置かれているからだ。それに予定よりも早く機械娘への改造が着実に進行しているからだ。でも始めたばかりで投げ出すのは出来ない。私は最後には元の生活に戻れるバイトだからだ。そう、作中の美穂子のように。




