機械娘・栗田真実の場合
”機械娘”の一人に選ばれた栗田真実が昔からあこがれていたのは、マシンガール女子プロレスのプレーヤーだった。この競技は世界同時多発テロ戦争が収束しようとしていた2030年代初めごろ、余剰となった各地の戦闘用強化服を使った格闘技が流行したが、その中に女性が参加するものがあった。
最初のうちは兵役や警備などで業務用に着ていた者が試合に参加していたが、ある時期から美しい女性が参加する団体が登場した。この団体が主催する試合では、プレーヤーは競泳水着やランニングやレオタードなど他のスポーツ用具、しかもかわいらしいデザインのもの、を着てリングサイドに登場し、観客の前でこれまた女性らしいデザインをした戦闘用強化服を装着しプロレスを行うというものであった。
悪役のプレーヤーの中には着替え途中の相手を攻撃したり、生身の人間では命に関わるような反則技をけりだすなど過激なものもあったが、キレイでカワイイ女の子が戦士と菜って戦うのが好評であった。これは各地で繰り返された対テロ戦争で鬱積した市民の感情の捌け口になったといえる。
真実はそんな競技に憧れていたが、小学校のときから背が低くそれだけでも劣等感があったのに、この競技に参加できる身長が、強化服の設計上156センチ以上でなければ無理だった。高校で成長が止まったとき身長が141センチしかなかった真実はショックを受けてしまった。この時点で体験入門の道すらたたれてしまったから。
幸い真美は理数系の科目の成績がよかったため、強化服の専攻のある地元の大学に進学することが出来た。ここで勉強して将来はマシンガール女子プロレスの強化服の製作に関わりたいと思っていたところ、今回の研究所のアルバイトのことを知って、合格したのである。
美由紀の大学とは違い、真実の大学にはサイバーテックロイド社に就職したOBやOGが大勢いたので、西第三研究所の評判は伝え聞いていたため、ガイノイドというのは強化服を開発していることを隠蔽しているようだという事だという噂をしっていた。いわば彼女は機械娘になることでマシンガール女子プロレスのプレーヤーの疑似体験が出来るというわけだ。
とりあえず真美は研究員の斉藤芳実の運転で自宅に戻ったが、必要なものを持ってすぐに出た。どうも最近両親とそりが悪いようで家出のような事をしたようだ。そのため芳実は自宅に入り事情を説明した上で出てきた。真実に留学するならその時ちゃんと挨拶するようにというものであった。どうも両親とも娘を許していなかったようだ。これから娘が人間ではないモノへと改造されることを知ることはなかった。




