表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第二章:本当に私で大丈夫なんですか
28/130

機械娘にするための打ち合わせ

 薫は副所長の横山と打ち合わせをしていた。横山は予算執行の責任者でありどの機械娘に予算をどれくらい使うかの見積もりが必要だった。もっとも薫の要求はほぼ満額認められるのであるけど、きちんと精査しなければならなかった。今回機械娘に四人を調整するので必要となる装備の準備も同時に進めるため、研究所全体の動きがあわただしくなった。


 薫は今後のスケジュールについて「今回の四人ですが、今日は7月29日の金曜日ですが、日曜には全員の調整は可能です。しかし彼女らのメンタル面の調整もありますし、先に私の身体をエリカから取り出す処置を日曜日に行います。そして栗田真実と津田美咲はまず8月2日の火曜日に調整し、水曜日に今井美由紀、8月5日の金曜日に赤松聖美を調整します。それまでに土曜日に赤松聖美を除く三人には排出器官の機械化処置を行います。それから調整の間まあ座学でも受けてもらおうかと思います。まあガイノイドと融合すれば強制的に学習機能によって訓練されますけど。それから8月8日の月曜日から三日間、今井と赤松の二人に川島カンナをいれて養老ヶ原演習場に連れて行って自衛隊の広報活動の手伝いのついでに実弾発射試験を行います。これは前々からの決定事項です。本来は自衛隊の機兵部隊の方にガイノイドに装備するシステムの試験を頼もうかなと思っていたのですが、今回適合する被験者が見つかってよかったです」などと話していた。


 その後のスケジュールについても話していたが、横山に対し今回の被験者として彼女らを選んだ理由を語り始めた。「一人目の今井美由紀はね、私と体型などがそっくりだったのでエリカの外骨格の中身にするのに適任だと思っていたところ、適正試験の時からエリカに興味をもっているのがわかったので採用したのよ。まあ、普段はあまり目立ちそうにないタイプだけど機械と融合すればそんなことは関係ないから問題ないということよ。二人目の栗田真実は頭脳明晰ということもあるけどずばり身長が低いということ。以前、所長に中学生か高校生の女子生徒を被験者にできないかなと相談した未成年用ガイノイドタイプに打ってつけよ。あの時は高校生を機械娘にすると何かと法的問題になりかねないからと反対されたけど、今回これで実現できるから本当によかった」と言った。


 横山はこの人の考えていることは人体実験に他ならないと思っていた。そうやって研究員を機械娘に調整しようとするので、何度もトラブルになって他の研究員と交代させたり辞めるのを食い止めようとしたりして、いつも迷惑するのは誰なんだといいたかった。


 「三人目の津田美咲は大学でガイノイドのプログラミングを専攻しているので、本当は研究員候補としてバックアップ要員として採用したかったけど、折角だから彼女もガイノイドにしてしまおうと思ったのよ。ガイノイドを制御する方法を学んでいる彼女には気の毒かもしれないけど、この際機械と融合するのも勉強だと思って頑張ってもらいたい。もう一人の川島カンナは今度の見本市でうちの研究所のブースでガイノイドスーツの着脱を見せるモデルになってもらうわ。とりあえず週明けから本社の研修センターに行ってもらってみっちりトレーニングをしてもらうわ。ついでに養老ヶ原演習場に来る時以外は本社のショールームでアルバイトさせてから、見本市の前に合流してもらうということで決まりよ」と機関銃のようにいった。


 ここでも横山は折角だからといって機械娘を一人増やすというのはどうゆう事なんだと内心いらだっていた。機械娘一人を調整するのに経費以上に必要資材の調達などの事務処理も考えてもらいたいし、現場の忙しさを増やすことは極力さけてもらいたい。それにガイノイドの着脱モデルなんてマシンガール女子プロレスのように、水着を着たかわいらしい女の子がマシンをドレスのように着込んで闘っている試合じゃあるまいし、あんたの趣味を実現するための事ばかり要求すること言うのかと文句言いたかった。しかし薫の祖父はこの会社のオーナーで、しかも世界有数の実業家。一介の雇用人がわざわざ首になるような事を言って逆らう事など絶対に出来なかった。言い返しても得することはなにもない諦めるしかなかった。


 薫は機械娘にする被験者の改造処置の計画案を作成しデーターベースにアップしていたが、一番時間がかかっていたのが聖美の機械娘化のプランニングであった。大抵の事は研究所内で実施できるのに他の研究部門の協力が必要だという。そのため処置が一番最後になったのだという。なんと彼女は半分機械の身体だという。


 聖美の履歴書には高校を卒業して大学に入るまで四年間の期間、様々なアルバイトをしたと記入していたが、そのどれも確認できずウソだった。「最初あまりにもウソを書いているので、二日目の朝に不合格にして帰ってもらおうと思っていたけど、彼女の就寝中の身体スキャン検査で半分機械化されていたのがわかったのよ。本当に一番驚いたよ!あの子の下半身は義足なのよ。しかも一般的な義足ではなく軍事用サイボーグと同じ高性能のものだったわ。他の循環器の一部と左手も人工のものに置き換えられていて、生身なのは頭と右手と胸部と一部と腹部の消化器と生殖器だけ、外見は人間のガイノイドと同じだったんだ。それで履歴書に書かれていた事を調査したら出鱈目な経歴だったので何か裏があると思ったわけ。幸い機械義足の製造元がうちの関連会社だとわかったので納入先を聞いたら防衛省中央防衛病院だというからさらに驚いたよ。それによれば二年前に現役の女性自衛官に移植したというが判ったの、あの子自衛官だったんだってよ」といった。


 横山は「それじゃ、彼女は既に半分ガイノイドというわけですか。それで義体と外骨格を融合させるのが難しいから、他の研究部門に協力を求めるわけなのですか?」と聞き返した。義体の研究部門といったら東第二研究所の達川義体開発部長を招く手配もしなければならないと考えていた。松代からここまで研究所のバスで来てもらおうかと考えていた。


 「それで何故下半身を失うような事になったのか気になって、伝手で防衛省の幹部職員に内緒で教えてもらったわ。あの子二年前の首都機兵第三小隊事件の数少ない生き残りだって」といった。横山はその事件は確か自衛隊の機兵部隊が訓練中に誤って携帯型核融合炉を破壊して隊員130名が犠牲になったはずだと思い出した。しかし薫はなぜ「事故」を「事件」といったのか気になっていた。しかもあの事故では確か現場に生存者はいなかったはずでは無いかと思った。


 「それで聖美は機兵隊員ではなかったと思ってさらに聞いたところ、これは国家機密保護法の最高ランクの機密に指定されているので詳細は教えてもらえなかったけど、聖美は操縦していたパワードスーツごと地対地ミサイルで撃破されて身体が粉々になった。ただバラバラになっても奇跡的に生存していたので再生可能な組織を集めて組織再生したそうよ。将来が嘱望されていた機兵隊員だったので、軍事用サイボーグとして改造されたそうよ。でも事件で尊敬していた先輩を失ったショックで、除隊したそうよ。本当はここまで防衛予算を使って改造した隊員は除隊できないけど、彼女が巻き込まれた事件の性質上、上層部も機密指定された事件の詳細を六十年間関係者以外に語らないという条件で認めたそうよ。彼女には軍事用ガイノイドを割り当てたけど、相談した幹部の方によれば本当は時が来ればショックから立ち直る強い女性だといっていた。それでかけてみようと思ったんだ」と清美のファイルを弄りながら語った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ