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夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第一章:適正とは一体なんのことなのよ!
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なんであいつが合格であたしが不合格なのよ!(新装版)

 夏の厳しい日差しが降り注ぐ北吉備の寂しい国道を一人歩く女子大生がいた。あの明奈だ。今回の適正試験は自他共に認めるほど自信があったのに不合格といわれたのだ。彼女の怒りは収まらず、優実が手配したタクシーに乗らず「倉敷に遊びに行く! 」といって、お足代だけを受け取って歩き出したのだ。


 しかし、朝のバスに乗り遅れたのうえ、次のバスが来るまで三時間以上もあるので、北吉備駅の隣の広沢谷駅まで歩くことにしたのだ。ナビによれば徒歩100分と出たが、三時間も何もない田舎で待つよりはマシだと思ったからだ。しかし、この国道は立派に整備はされていても目立った観光地もない過疎地なのでたまにしか車が通過しなかったが、こんな道を若い女性が歩くのも珍しいので、みんな徐行したほどであるが、その度にあたしは見世物じゃないと食ってかかりそうになっていた。


 「高校が休みだからといって朝のバスが運休なのよ? 本当に腹が立つわ。あの時怒らずにタクシーで倉敷まで送ってもらえばよかった」と後悔していた。美咲もであるが彼女の家は広島にあり、距離もあるのでタクシーで帰ってもよかったはずだったが、怒りで見境が付かなくなっていた。


 「もう一人落ちているとの事だったので美咲だと思ったけど、見たことも無い奴だった。て、ことは美咲のやつは合格というわけだよね。本当に悔しい! 」といって道端の斜面にある石を何個も川に向けて投げていた。その様子は恐ろしい夜叉のようで誰もが引きそうな感じだった。


 すると川の方から「馬鹿野郎!ワシらは鮎を釣っているのだぞ! 獲物を待ちよるのに石を投げて邪魔をするな! それに人に当たったらどうワビ入れるつもりかよ! オンドリャお前こっちに来い! 折檻してやるぞ」という怒声が聞こえてきた。どうやら邪魔された釣り人の怒りを買ってしまったようだ。


 明奈は急いでその場から逃走したが、ツクヅク自分の事がいやになっていた。最大の理由は美咲に負けたことだ。少なくとも”体力勝負”なら負けないと思っていたのに意外だったからだ。


 「そりゃ、試験に落ちることもあるし失敗することもある。でも他の誰よりも美咲にだけは負けたくなかった。あの運動音痴がなんで合格なのよ。対戦型の試験ではあたしの成績悪くなかったはずよ」と、まだ道に転がっている石を蹴飛ばしていた。このときは車が走ってこないのを確認してから蹴飛ばしていた。もっとも車も滅多に通らない寂れたところであったが。


 それはさておき、明奈は午前中とはいえ炎天下の日差しの下を汗まみれになりながら二時間かけ広沢谷駅についた。ここは無人駅で駅舎も屋根があっても壁のない簡便なつくりだった。そのうえ周囲に民家もまばらで、どうして駅があるのか不思議だったが、どうやら老朽化した家屋を撤去した痕跡があるので単に人がいなくなったようだ。まさに秘境駅だったので、商店もなく飲料水の自販機も一種類しかなかった。


 その後、明奈は自販機で熱いコーヒーを買ってしまい直ぐに飲めなかったり、乗った電車の冷房が故障していたりと散々な目にあった上、倉敷ではつまらないものを衝動買いしたりしたため、サイバーテック・ロイドから貰ったお足代は全部使い切っていた。


 帰宅後、明奈は入浴していたが、結局のところあの研究所で何のアルバイトをさせようとしたのかを知らないことに対し、美咲がどの様な目に会うのかを考えているとざまあないと思っていた。


 「どうせ美咲を採用するぐらいだから、ロクなもんじゃなかったよね、どうせ。なんだって私のほうが優れている筈なのによ。でもどうして私落ちたのかしら」と思いながら髪を洗っていた。すると右のコメカミの生え際に異物があることを気付いた。それは頭に刺さった針の頭のようなものだったが、心当たりがなかった。


 ふと考えると昨日、電車の中で席に座っていると、大きなバックを手に提げたおばちゃんにぶつかったことを思い出した。あの時、一瞬ちくっとしたが、お詫びにお菓子を貰ったのでわすれていた。


 「いやだなあ、これって何よ? 明日父さんの病院で見てもらおう」と思っていた。だが、彼女は次の日の朝、いづこかに出かけたきり消えてしまった。

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