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夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第一章:適正とは一体なんのことなのよ!
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どうしてこのような選考をするのだろう

 本当、目立たない私がどうしてここまで選考に残ったのだろうか、と美由紀は疑問に思っていた。今までのアルバイトの選考といえば、履歴書を持って行って担当者と面接して後日合否の連絡があるというものが多かった。筆記による適正試験はともかく奇抜な衣装でアルバイトの何に役立つのかわからない実技試験のようなものをやらされる試験などは、前代未聞であった。そもそも、どのような業務に従事するかさえ教えてもらっていない。


 大学生になってから行った面接でも、仕事に対し積極性もなく存在感がないので遠慮していただきたいという趣旨のことを言われたぐらいだった。ある時などは、同じく目立たない友人と一緒に面接に行った飲食店では「二人同時に面接に来た女の子を採用しても、同時にバイトをやめてしまう可能性があるので採用されない」と後で聞いたこともあった。


 その目立たない美由紀が簡単に入れたアルバイトといえば年末年始の郵便局の年賀状の仕分けのバイトだったが、それも日数も短かったから問題なかった。あと労働経験といえば中学校で職場体験でスーパーの陳列などをやったぐらいだった。職場体験のときも短期のバイトの時も目立たないので担当者に忘れられていたことさえあった。


 しかし今回はどの様な基準で選考しているのかはわからないけど、最初から半分になるまでは残っている。ただ、これから先は落ちるかもしれないので、もしかすると明日の朝担当者から「残念でした」と言われてお金を持って帰るのかもしれなかった。それでも適正試験を受けただけで5万円をあげるというのも案外儲けものかもしれないといえた。他のバイトの面接は交通費は自腹だし飲み物をもらえばいいぐらいだったからだ。本当にこの研究所はいったいなんなんだろうか、不思議に思えてきた。


 そういえば、担当者だという江藤さんは女性のようだけど、これまでの試験で一度も姿を見ていない。もしかするとモニターか何かで観察しているのかもしれないけど、姿を見せないというのはいかがなものかといえる。


 そうこう考えているうちにガイノイドのエリカに案内されたのはビジネスホテルのユニットバスのような浴室だった。脱衣場でエリカに手伝ってもらって肌にすっかり張り付いたボディスーツを脱ぐことが出来た。そしてゆっくり入浴したが、実は美由紀の下宿は浴室が共同という物件なので、他人が来るのを気兼ねしないで、これほどゆっくり入浴するのは久しぶりだった。しかし本日最後の試練はその次にやってきた。


 入浴後、一糸纏わぬ姿で脱衣場に出るとエリカが渡したのはパジャマでも浴衣でもなく、また下着でもなく何故かビキニの上下だった。エリカは「これからあなたは他の方と同じくスリープカプセルに入っていただきます。弊社の今回の業務に際して耐えられる事が出来るのかを確認するため、立体スキャナーなどを使って就寝中にボディチェックをします。あなたからすればプライパシー権の侵害だと抗議されたいのかもしれませんが、アルバイトの業務でどうしても必要なのですので、ご協力をお願いします。また、このカプセルは心を癒す効果がありますので、疲れが取れます」と言った。つまりは水着を着てカプセルの中で寝なさいというものだった。


 美由紀は言われるままに青いビキニを付けてカプセルに入った。これが疲れてなく元気があったら抗議したのかもしれないが、憧れのエリカの頼み事を断れなかったうえ、疲れてすぐに眠りたい状態だったので結われるままであった。ビキニは美由紀の大きな胸と豊満な腰にフィットしていた。美由紀はどちらかといえば着こなしに問題があったためか、女性らしい身体であることをアピールする能力に掛けていたようである。青いビキニが女性らしさを強調していたが、その姿だけを見れば目立たない人という評価があるのが意外と受け止める人は少なくないだろうといえた。美由紀が目立たないのは自己アピール能力が欠如していたためかもしれない。実際、彼女は適正試験で機械に対する高い適応能力が実証されていた。


 美由紀が入ったカプセルは近未来のSFに出てくるようなチューブのような半透明なカプセルでなんだか得体の知れないジェル状の物質が敷かれていた。その感触はとてもよくぐっすり眠れそうだった。それにしても一体何のために私の身体を調べるのだろう?いくら同性の研究員ばかりといっても恥ずかしいと少し感じていた。エリカは「それではおやすみなさい」といって照明を落としていった。


 カプセルの中で何故か大の字のようポーズを自然にした彼女であったが、明日の朝になったら自分がサイボーグになっていたりして、といった妄想をしていたが、やはり美由紀は「どうしてこのような選考をするのだろう。今回のアルバイトで採用されたら私はどうなるのだろう」と思いつつも睡眠薬でもかかされたかのように深い眠りに落ちた。

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