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夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第一章:適正とは一体なんのことなのよ!
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適正試験の裏側 (新装版)

 今回の適正試験に対して研究所の女性研究員も違和感を感じていた。ここにあるシュミレーターは全てサイバーテック・ロイドのグループ企業が製造したもので、今回の機械娘開発プロジェクトのために用意されたリース物件であった。


 そのため本体に”グローバル・リース・ジャパン”の所有者票が付けられていた。いずれのマシーンも価格はわからないが、研究員が数年働かないと購入できそうにないものばかりだった。


 しかも価格もさることながら、いづれも国連機構軍のパワードスーツ部隊用が訓練に用いる以上のスペックがあったのだ。このような高級タイプを素人の女子大生の選考に使うことが不思議だった。しかも何人かは玄人のようなポイントを出していた。


 このことを考える研究員は少なくなかったが、一人だけ真相を知っていた者がいた。江藤薫にかわり今回の適正試験の取り仕切っている菊池優実だ。この適正試験の目的は強制学習能力機能の相性を確認することだった。


 この強制学習能力機能は外付けの外部電脳に収められたプログラムで、被験者の生体脳に直接干渉して、知識や経験がなければ出来ないような能力を使えるようにするものだった。いわば被験者を即戦力化できるすぐれたものだった。


 ただ、このプログラムにも欠陥があり誰にでも使えない代物だった。その理由はわからないけど、概ね若い女性でなければ機能を発揮できなかった。そのため研究員が被験者になる場合に支障があったので、現在では被験者になれるかもしればいという理由で主任の江藤薫と副主任の菊池優実よりも年長の研究員がいなくなっていたぐらいだ。


 それはさておき、適正試験が終わる頃には10人のうち誰を残すかが決まっていた。別室にいる薫 -ガイノイドのように振舞っているが- の指示で三人は残せということだった。そのうち07こと津田美咲は適正はあるものの必ずしも高くないのに残せということはおかしかったが、薫の「まあ、少し適正があるから採用して効果があるかを確認したい」ということで、採用と決定した。また同じ理由で別の受験者も合格とした。また美由紀は何故かエリカモードにした場合に他の受験者よりも高い能力を発揮していたので残すことになった。


 残りの七人のうち一人は義体だったので関係機関に問い合わせる間、残ってもらうこととなり保留付きで合格。最も背の低いのも保留付きで残留とした。また三人は適正無しとして帰宅してもらうことになった。


 残った七人のうちにあの美咲に猛烈なライバル心を抱いていた藤井明奈もいた。彼女は平均的以上に適正があると判断され、判定プログラムによれば二番目に高かった。ちなみに一番高かったのが美由紀で美咲はぎりぎりの七番目だった。


 「あの10の子、明奈というのね。あの子なら今回のプロジェクトの成功につなげることが出来そうだよ。まあ薫は何人残すつもりかわからないけど、この子なら間違いないね」と思っていた。


 実際残された七人は、誰もが被験者になるだけの最低限の適正があるのだけは間違いなかった。あとは薫が判断することであった。だが優実はやりたくない役目があった。選考の結果落ちた三人に伝えないといけないことだ。取り合えず、食事はしてもらってこのような山奥の交通機関はこの時間運行終了しているので、タクシーで自宅に直接送ってあげる手配をしなければならなかった。


 「北吉備観光交通さんですか? こちら成内町のサイバーテック研究所です。タクシー三台の配車をお願いします。いづれの方も長距離ですし女性なので、出来たら自動化装置搭載型にしてください。料金ですが後でいつもの口座に送金いたしますのでお願いします」と優実は連絡を取った。


 この時、薫は二人の受験者のデータに不審なものを感じていた。一人は義体の赤松聖美で、こっちの方は防衛省と保健労働省義体管理部からの連絡待ちだったが、もう一人は理由はわからないけど不審なデータが記録されていたのだ。


 「とにかく時間がかかっても仕方ないけど確認しよう。明日の朝までに結果をださなければいけない」

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