15-18 はだかの薫
劇場版ガーディアン・レディのメンバーのスーツは特殊なインナースーツを着用した上で外骨格を着る設計であったが、薫は殆ど裸に近い状態でスーツの中に入っていた。この方法は軍事用パワードスーツの多くに採用されているものであった。そうしているのも前線に派遣されたら危険が伴う着脱作業を省く目的があった。なのでパワードスーツ隊員は一度出動したら基地に戻るまで脱ぐ必要がなかった。
薫はブラック・エリカの姿のままで床についた。ただ床についたといってもベットでは重量もあるし寝具が痛むので、座敷のような床の上で寝ていた。文字通り床の上で眠りについた。
「わたしって、いま裸で寝ているのよね。むかし母さんが愛媛のお爺さんは夏になると暑いのでパンツ一丁で寝ているなんて話をしていたけど、いまもしているのかな、お爺様は?」
薫がまだ薫媛だった時、江藤会長はまだ田舎の鉄工所の道楽経営者に過ぎなかった。しかし時流に乗ったとはいえ今は世界的な企業グループの総帥だ。そうなったのもパワードスーツの販売に成功したこともあったが、薫の父の張建軍が発見した特殊核融合理論を応用した反応炉を実用化したことがあった。確か記録よれば父の生前それを正当に評価していたのは僅かで、もし核攻撃を受ける前に北京市を脱出していたら、いまごろは巨額の富と名声を受けたはずだそうだ。
そんな評価も薫、いや薫媛からすればどうでもよかった。本当に優しい父だったのに会えなくなった方が大きな悲しみだった。死ぬ前の日に交わした父の最期の言葉を思い出していた。
「たしか、日本のおじいさんは優しいし頭も良いし稼ぎ上手だと褒めちぎっていたね。でも許せないことはある。時々身分を偽って隠れて調べようとしたり、人の都合を考えずに人にパワードスーツを無理矢理着せようとすることだと。確かにねえ、父さんが言う事は間違っていなかったわね。こうやって孫娘を裸同然の姿でパワードスーツに閉じ込めるからね。それにしても、このスーツってスペックが強力すぎないかな? おじいさんの事だから映画のついでに新型スーツを開発するという事なんだろうね。それにしても核融合炉を搭載するなんてビーム兵器にでも使う気なのかな?」
そう考えていたが利点があることも気付いた。全身が気持ちよいということだ。身体は閉じ込められているけど、スーツの中でなんか優しいものの中に浮かんでいるような感覚であった。しかも寝苦しい気温であってもずっとお風呂に入っているようで過ごしやすかった。
「なんか全身ガードされた温泉に入れられたようだよね。でも男の人にスーツを着ていてもお風呂に入っているような感覚って言ったらスケベになるのかしら? 私の裸なんて男の人に見せた事ないけど、やはり間違いが起きるのかしら。でも大丈夫だわ。こんな強力なスーツを纏っていたら誰も襲わないだろうしね」
そういいながら薫は眠りに落ちた。彼女からすればガーディアン・レディ・スーツはセキュリティーを兼ねた巨大寝袋のようなものかもしれなかった。薫はスーツの中で裸で眠っているような気になっていた。




