15-14 朝ボケの薫
周薫媛こと江藤薫が演じる高橋サトミは、ガーディアン・レディの敵対組織によって洗脳され、ガーディアン・スーツのデッドコピーのパワードスーツの被験者にされ、戦闘に参加させられるという設定だった。
そのため、急遽サイバーテック技術陣によって薫が着るパワードスーツが製作された。ただ製作の時間が少なかったので、劇場版ガーディアン・レディに使われる他のスーツの試作品や予備部品を流用した。そのため結果として外観こそエリカのスーツを黒くしたものであったが、性能的には他の四体よりもすぐれたものであった。
特にフェイク・エリカでは外部の情報ネットワークと直接リンクできるようになっていた。しかも通常のシステムは機械娘に改造され電脳化している人間用であったが、高度な電子頭脳対応用が装着されていた。これは薫が機械脳であったためである。
「わたし、ひとつ他の人と違っていて嫌なのは、機械娘にされた人たちは元々の生体脳があったのに、わたしは張薫媛の記憶をベースにした作られた機械脳ということだ。そもそもわたしには魂というものがあるのだろうか?」
薫は時々そう思うことがあった。意識そのものがプログラムにすぎないと言う事だ。しかし身体そのものは張薫媛の肉体であるので生身であり、一部に複製された臓器もあるが、頭部以外は普通の女子高生と同じだった。だから生理もくるし疲労もする。時には身体がしんどくて動かないような日もある。
「薫、早く起きなさい! 今日は忙しいのでしょ!」
薫は亜佐美に起こされてしまった。意識そのものは起動していたが、身体の方がだるくて起き上がることができなかったのだ。薫はゴメンねありがとうといいながら、ようやく目を開けた。他の人なら「目ぼけている」状態なので、ものがハッキリみえない場合もあるが、薫の義眼には様々な情報が表示されていた。薫の義眼そのものが情報端末の機能があった。
義眼のモニターには薫の身体の調子が良くないというデータが映し出されていた。このデータは生身の身体に装着されているセンサーからもたらされるものだった。体は生身でも管理しているのは薫の自我を持つ機械脳なので、どうしても機械的な処理になっている。
もちろん、機械的な動きをして機械だと悟られてはいけないので、友人であっても知られてはならないように、プログラム上薫は体調に応じた反応をするようになっていた。今朝は身体の不調に合わせ疲れているような仕草をし始めた。
「ごめんなさい亜佐美。なんか調子がすぐれなくてね。そういえば、あなたの撮影長丁場になりそうだってね」
「そうよ、彩夏の日程に余裕がないので、今日出来る限りのシーンを撮影するというのよ。だから遅れが起きないように、徹底的に時間管理をするそうよ。決戦じゃとかとスタッフが言っていたよ。ところで薫は別の場所で撮影ですって?」
「ええ、今日は何でも私を”洗脳”して偽者のエリカに改造させられる場面だそうよ。なんでも、もう素顔を見せることはないそうよ。だって敵役だから。この後亜佐美との絡みも多くなるから楽しみだけど」
そうはいったが、薫は実のところあまり乗り気でなかった。着せられるパワードスーツが機械脳対応だからだ。それは、自分の自我が機械と同じ事なんだと自覚してしまうからだ。
「おじいさまって、しかたないわね。この機会に新しい演算システムを私で試そうとするのだから。一層の事、完全ロボットモードでもあれば悩まなくていいのに・・・」




