15-12 クランクイン
「薫、なんか違和感がありすぎるわね。普段見慣れている光景なのに」
「そうねえ、いくら夏休みと言ったって、なにもここで撮影しなくても」
『ガーディアン・レディ』がクランクインになり、各地のスタジオで撮影が行われていたが、今日はエリカの普段の様子のドラマパートだった。高校生活の場面だが、撮影場所が二人が通う東京第十五高校だったからだ。
高校の校舎はそのままであったが、映画撮影のためいくらか違うところもあった。制服が何故か古めかしい半袖のセーラー服で、普段のブラウスと違っていた。また『同級生』役も全員、あちらこちらのプロダクションからかき集めた若い俳優や女優が演じていた。二人は転校生にでもなった気がした。
しかもこの日から何故かふたり専属のマネージャーがついた。亜佐美のマネージャーは薫だったが、そのマネージャーは薫担当になった。どうも薫は脇役ながらずっと同行するようになった。実はこの日、薫の出番があり、亜佐美が演じるエリカと別れたところで拉致されるという場面だ。この時、薫はシナリオに変更があった事を知っていたが、半ば呆れていた。全て祖父の企みだった!
薫が演じる高橋サトミの役どころが、エリカの友人に加え、ガーディアン・レディの敵対組織に拉致されて洗脳され利用されるというようになっていた。出番が格段に増えたが、かわいそうな役回りでどちらかといえば哀れな女の子だった。
「そういえば、お爺様って昭和という時代のアニメが好きだといっていたわね。だからって、孫娘にさせなくてもいいのにね。その分、亜佐美と一緒に映画に出れるからいいけどね」
そう思ったが、困った場面の撮影が待ち受けていた。洗脳される場面だ。薫の自我は生体の脳でもないし、その脳を機械化した電脳でもなく、ゼロから構築した人造頭脳が持っていた。だから機械が『江藤薫』という女の子と認識しているだけに過ぎなかった。だからドラマの中とはいえ、洗脳といえば薫からすればプログラムの書き換えであった。
そう思うと滑稽であったが、自我の書き換えのコードを薫の機械脳が保持しているので問題はなかった。それよりも気になったのは新たなよればサトミは洗脳の上でガーディアン・レディの偽者として操られるということだった。どうも亜佐美と同じようにパワードスーツを着ないといけないということらしい。
そういうことは、機械細胞に侵食された機械娘よりも機械にちかいのに外観も機械のようにならないといけないということに気付いた薫は、もういい加減にして欲しいと思っていた。いくら機械娘のような血が通っていない身体ではなくても、もっと機械に近づくのは正直嫌だった。
「今回は、お爺様のわがままと思って我慢するしかないわよね。はやく出番来ないかな」
薫はつぶやいていた。これからエリカの目の前で拉致されるシーンの撮影が行われようとしていた。




