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夏バイトに行て機械娘にされてしまった  作者: ジャン・幸田
第一五章:薫の忘れえぬ夏の日
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15-06 トレーニング

 サイバーテック・ロイドのパワードスーツには”自動モード”がある。自動車の自動運転モードと一緒で、目的地に行くまでスーツが歩いて行ってくれるものだ。このモードを利用したものにシェイプアップのための強制トレーニング歩行マシーンがある。


 亜佐美ら新人女優三人は劇中で使用するガーディアンスーツによる演技指導を受けていたが、これはマニュアルモードによる訓練だった。いかに自身の動きをスーツにうまく反映出来るようにしていた。だが、三人のうち亜佐美は悪戦苦闘していた。元々演劇部で舞台をやっていたので台詞をいうのは自信があったが、パワードスーツを着用して演技するのは不得意だった。


 「アサミ、あなたいくら劇中でアクションをしないといっても最低限の演技をしてもらわないとこっちも困るわ」 アクション担当のスーツアクトレスのナンシー・チャンの叱咤激励の声が運動場中に響いていた。この様子を太田垣と石橋、薫が見守っていたが、そこから遠く離れたところで夏草を刈っている老人がいた。


 「あんたねえ、こんな機密スペースで草刈しろという指示を誰がしたんだ? さあ入構許可証を見せなさい」と警備員の男性が詰問していた。その老人は汚れた作業着の下から首に下げた社員証を見せた。そこには”サイバーテックグループ 最高代表取締役 江藤英樹”とあった。これには警備員も驚いてしまったが、江藤会長は「日常業務ご苦労様、これからも不審者と思えばすぐに尋問しなさい」といって草刈を続けていた。


 その様子を薫は見ていたが、よっぽどガーディアンレディの進捗状況が気になる様子だった。江藤会長の顔はガーディアンスーツ姿の四人に常に向いていた。その四人であるが、うち二人はエリカでアサミとナンシーが着用していた。アサミがあまりにも扱いに不慣れだったため、ほぼ付きっ切りだった。だから二人のエリカが常に並んでいるかのようだった。


 三時間が経過しお日様が西に傾き始めたとき、なんとかアサミも様になってきたので、この頃にはナンシーは三人の新人をみっちり指導していた。その様子を大勢の社員が見守るようになっていた。この劇場版ガーディアン・レディは全社あげて協力することになっているので、いやようなく関心を集めていた。


 その社員の中に江藤会長もいたが大半の社員は気付かなかった。会長はいつもお忍びで社内訪問する時、擦り切れて汚れた社業服を着ていることを知るものは少ないからだ。その横にサンドイッチとお茶を飲みながら話す薫がいた。


 「おじいさま、どうですかガーディアン・レディの出来映えは? 性能的には最新型戦術パワードスーツと同じみたいですけど、劇場版の撮影に使うにしては物騒のような気がしますけど」


 「ああ、お前あのスーツの性能をネットワークを通じて知ったのかい? あのスーツだが今のところ世界の誰にも納入する気はないぞ。なんだってガーディアン・レディは現実世界でも唯一無二の存在であって欲しいからな。もっとも高価すぎて今のところ誰も購入しようとしないだろうけど」


 「それにしても、スーツのパワーソースに従来の高性能燃料電池じゃなくてマイクロ核融合炉を使うというのは少々やりすぎじゃないですか? それで短時間でも空を飛べるようになったといっても、オーバースペックではないですか。私の電脳の起動電力ですらあそこまで必要ありませんよ。何か目的があるのですか」


 江藤会長は目の前の孫娘が機械脳である事をふっと不憫に思った。いくらやむを得ない事とはいえ”奴ら”のように人とは違う身体にしてしまったからだ。外見は母の香織に似てきたが、その頭の中身は血が通わぬ機械が入っているのだから・・・


 「どうだ薫、よかったらガ今夜ガーディアン・レディのメンバーを呼んで夕飯にしないか? そうそうワシは会長ではなく薫媛のおじいさんという事にしよう」

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