15-05 レクチャー
一岡彩夏は当時も今も第一線で活躍するトップスターだ。だから「ガーディアン・レディ」の出演のために製作元のサイバーテック・エンターテイメントは破格のギャラと日程上の優遇を与えていた。この作品の目的に企業イメージの向上もあったからだ。だから彩夏の場合マネージャーといった付き人も大勢ついていた。
今日ここに来ているのは新人三人なのでマネージャーばかりか付き人がいるはずなかった。しかし永川亜佐美だけは周薫媛という付き人がいた! この事に孫玲美と会澤喜美恵は不満に思っていた。
「永川さん! なんであなたには周さんという付き人というけど何者なのよ? おかしいじゃないの。同じ新人なのに付き人が何故いるのよ」
亜佐美は答えに窮していたので周薫媛こと薫は差し出がましいとも思ったが説明した。私も新人だけど役が決まっていないので手伝いしていなさいといわれたので来たと説明した。今回の出演者のうち新人の多くはサイバーテック・エンターテイメント所属なので、他にも同じような人がいるともいった。
本当の事をいえば薫は女優志望ではなかったが、亜佐美と一緒に夏休みを過ごしたいという希望を祖父と義父に言ったところ、特別に割り込ませてくれた。もっとも”付き人”なので雑用全般をしなければいけなかった。そのうえ亜佐美にはマネージャーがいなかったので事実上薫が務めていた。後には他の二人も担当するようになった。
薫の頭脳は機械脳なので、プログラムさえダウンロードすれば日程管理といった業務はこなすことが出来た。そのため”上からの指示”といっては書類を示していたが、全て薫の機械脳で作成したものをプリンターで出力したものだった。
「わたしって本当は機械なのよね。みんなと同じ血が通った肉体を持っているのにね。でもそのおかげで亜佐美と一緒にいれるのだからいいけど」と薫は考えながら、次の作業に必要な書類をネットワークを通じて工場内の事務所でプリントしてもらっていた。
そう考えている目の前で新人女優三人はガーディアンスーツの中に身を沈めようとしていた。既にインストラクター役のナンシー・チャンがガーディアン・エリカのボディに入っていた。そして三人はおっかなびっくりしながらガーディアンスーツに収まっていった。
「亜佐美、玲美、喜美恵。スーツを着た感想はいかがですか? 体調が悪くなったらすぐに申告してください」そういって三人に薫媛は質問をした。
「薫媛、いまのところ大丈夫よ。なんかあたしロボットになったみたい。それに窮屈だと思ったけど裸でいるよりも身が軽くなった気がするわ。あなたも今度着てみたら?」
「あたしも大丈夫よ。薫媛だけ着れなくて残念じゃないの? 本当はあなたも着たかったんじゃないの? 本当に身体に力が溢れてくるわよ」
「あたし遠慮するわ。それにガーディアン・レディのメンバーじゃないでしょ? 」と薫媛は返事をしたが、頭脳が機械なのに身体も機械に覆われる事を考えると、それだけで気持ちが悪くなってしかたなかった。 そうやり取りをしていると、ナンシー・チャンがやってきた。
「さあ、三人さん。これから私があなた達を指導するわよ。動作はある程度自動的にしてもらうことも出来ますが、あなたたちは機械に覆われていますが女優です。だから人と変わらないように動作できるようにマニュアルで動いていただきます」
四人のスーツを着た女と少女は場所を工場内の運動場に移動して特訓を始めた。




