00-09 どの娘を機械娘にしようかな
この時代、機械娘といえば忌まわしい”奴ら”と人類との抗争で生じた大きな傷跡の一つだった。”奴ら”は軍事力と工業力の維持増強を狙い、征服した地域の人類を素体とした新たな人類を生み出そうとした。人類の身体を機械に改造したのだ。
詳細は今も明らかにされていない面もあったが、人体組織を素材に人工強化筋肉や強化外骨格、電脳化を施して、人格を否定し機械として使役されるだけの道具にへと変えていった。その被害者の総数は不明であるが、数億人から十数億人といわれている。
それら機械化人のうち、”奴ら”によって機械にされた若い女性の事を機械娘と人類社会は呼んでいた。彼女らの多くは生殖機能を奪われ同じく機械化された男性のパートナーにされたり、後方の労働者にされたり、前線で戦闘員にされたりしていた。
多くの機械娘は製造バグのため数年で寿命を迎えたり、人類側の国連機構軍との戦闘で破壊されたが、今もなお多くの機械娘を初めとする機械化人が残されていた。多くの機械化人は人類と共生していたり、独自のコミュニティーを築いたりして生活していた。また改造の程度によっては元の人類の外観や機能を取り戻せた人も少なくなかった。
北吉備市成内町にあるサイバーテックロイド西第三研究所では、それら機械娘を基にした人類着用タイプのパワードスーツを開発していたが、コードネームとしてあえて機械娘の名称を使っていた。このパワードスーツの特徴は従来型よりも長期間の着用が可能で、理論上は五年近く着用することも可能というものだった。
これは、原則として健康な人間を使った機械化人製造が禁止されているうえ、”奴ら”による機械化人製造も最早行われることが無かったからだ。それに人を機械の身体にするのは人体に修復不可能な損傷が起きた場合などに義体化する場合に限られていた。
薫は次から次へとやってくる女子大生達をこっそりと覗いていた。今回のアルバイトとは、その機械娘の被験者のことだった。彼女らは生身を機ぐるみのように機械化組織で覆い、一ヶ月間かつての機械娘のように機械の身体に改造するわけであった。
そのような面倒なことをしたのは機械娘の被験者に”奴ら”のスパイが紛れ込む危険が生じたので、一層のこと何も知らないアルバイトを調整することにしたのだ。
「あの娘たちは、私のように10ヶ月も機械娘になってもらうことはないけど、それなりの苦労をするでしょうね。だから耐えられる娘を慎重に選ばないといけないね。それにしても、叔父さんたら私を心配して別チームの機械娘を秘密裏に選抜しているようだけど大丈夫かな? 」
この日集まったバイト希望の女子大生のうち、何人かが機械娘に改造されるのは間違いないということだった。つまり彼女らの何人は一ヶ月間機械の身体に肉体を封じ込められる苦しみを味会うわけだ。
「本当に私みたいに機械娘になる快感を味会える女の子を選ばないといけないわ。だから早くプログラムを完成させなきゃ」




