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地下坑道


 ストーリークエストが実装されたと同時に町に存在するノンプレイヤーキャラクター、つまりNPCの数が増えた。

 まずはクエストについての内容を調べるために、これからストーリーに関係してくるだろう彼らに話を聞いてまわる事にする。

 

 「まずは情報収集からだな。俺とルート、シュリ姉とマイカで二手に別れてNPCに聞き込みをしよう」

 

 僕たちはシトロンの指示に従い、町中のNPCを調べ上げる。

 どうやらNPC達はうわさ話という形で断片的な情報をプレイヤー達に教えてくれるようで、最近一部の地域でモンスターが活性化している事や、各地で行方不明事件等が起きていると言う話をしてくれた。

 

 「これどう思うシトロン?僕としては結構王道な物語な気がするんだけど」


 聞いた話をまとめ結果、モンスター達の活性化の原因は新しく実装された地域に強力な魔物が住み着いている事が原因らしい。

 その影響で数々の人間が姿を消したりいくつかの村がモンスターの群れに襲われて滅ぼされた、という話のようだ

 

 「だな、多分ストーリークエストの目的はその魔物を倒す事だろう。とりあえず最初の目的は新しく実装されたエリアにどうやっていくかってとこだな」

 

 この一ヶ月で多くのプレイヤーが探索した結果、今いるこの地域は大きな山脈に囲まれている事が知られている。

 今まではその山脈を越える事はできなかったので、恐らく新エリアはその山脈の向こう側にあるのだろう。

 

 「飛行能力のある召喚獣がいれば山を越えていけるのかもしれないし、フィオーレなら行けるかもね。とりあえずまずは舞花たちと合流しようよ」

 

 僕たちに割り振られた範囲は調べ終わったので、舞花達に連絡を取ろうとするとちょうど向こう側からメッセージが来た。

 どうやら彼女達も情報収集が終わったようだ。

 

 再び一番最初に集まった町のすぐ外を集合場所にする。しばらくシトロンと二人で待っていると舞花達が手を振って戻ってきた。

 

 「おーい、ふたりとも!クエストアイテムみたいなの手に入れたよ!」

 

 舞花が大喜びで駆け寄ってきた。どうやら向こうはこちら以上の収穫があったようだ。

 

 「おぉっ、どんなものを手に入れたんだ?」

 

 僕とシトロンが舞花に詰め寄りアイテム情報を見させてもらう。

 そこには、封印の間への鍵というアイテム名だけが書かれていた。

 

 「町の統治者達のいる役場のNPCから貰ったアイテムでな。どうも山脈の下に坑道が存在しているらしい。だが強大な力を持ったモンスターが住み着いた事で坑道ごと封印したそうだ。それでそのアイテムがそこに入るための鍵らしい」

 

 後からゆっくり歩いてきたシュリが舞花のもつアイテムの説明をする。

 

 「となると、まずはその坑道をクリアして次のエリアに行けってことかな」

 

 僕の言葉にシュリも頷く。

 

 「恐らくそう言う事だろうな。まだ時間もあるしこのまま坑道に向かうか?」

 

 まだ時間はあるし、シュリの提案に賛成する。

 舞花とフィオーレに飛行魔法をかけてもらい、僕たちは坑道まで移動する事にした。

 

 

 坑道の入り口があると言われた場所に行くと、そこは鬱蒼とした木々に囲まれた森の中だった。


 「この辺りのはずなんだが、近くには木しかみえんな」

 

 シュリが辺りを見回すが、それらしい物は見つからない。

 

 「いままでこの辺で坑道っぽいものがあるなんて聞いた事無いし、隠されてるんじゃないですかね?」

 

 きょろきょろと辺りを見回しながらシトロンが言う。

 恐らくは今回のアップデードて追加されたと思われる鍵のアイテムをどこかで使う事で道が開かれるのだろう。

 僕たちは散り散りになって、鬱蒼とした森の中を歩き回る。

 少し探索していると、何やら祠のような物を見つけた。

 

 「これじゃないかな皆」

 

 辺りを探しまわっていた三人をよび戻し、祠の扉をあけてみる。

 すると中には、鍵穴のついた南京錠のような物が固定されていた。


 「おぉ、ビンゴっぽいね!さすがルート!」

 

 そう言うとさっそく舞花が鍵を鍵穴に差し込んでまわす。

 かちゃりという音とともに、祠を中心として魔方陣が浮かび上がった。

 それを確認すると同時に、急速に意識が遠のいていく。

 

 次に意識が回復した時、僕たちは辺りを岩壁に囲まれたダンジョンのような場所に立っていた。

 足下にはさきほどと同じような祠があり、他の三人もすぐそばにいる。

 どうやら今のは転移魔法陣だったらしい。

 

 「ここが言われていた坑道か。いかにもって感じだな」

 

 シトロンがシェルを召喚して辺りを警戒しはじめる。

 ここは既に知らないエリア、いつ何が起こってもおかしくない雰囲気だ。

 

 「私が先頭を努めよう。この中だと一番目が利くからな」

 

 シュリの言葉に従い、アルコを先頭に縦一列になって坑道の奥へと進んでいく。

 薄暗く照らされた坑道の中は、すぐにでも化け物が襲ってきそうな緊迫感に包まれていた。

 

 「なんだかお化け屋敷をあるいてるみたいだね……」

 

 舞花が僕の腕をぎゅっと握りながらすこし青ざめた顔で呟く。

 こういった雰囲気を舞花が苦手としていることを知っているので、手をつないで歩く事にした。

 

 「皆とまるんだ」

 

 先頭を歩いていたシュリが静止をかける。どうやら何かを見つけたらしい。

 

 「あれは……スケルトンか?まったく、ここの雰囲気も相まって完全にお化け屋敷だな。舞花ちゃん、フィオーレの魔法であいつらを焼き払えるか?」

 

 舞花は頷き、通路の先からカタカタと音を立てて近づいてくる人骨に向かって炎の矢を放つようフィオーレに指示する。

 

 避ける事も出来ず直撃した骨達は、魔法の炎に燃やされてその姿を消していった。

 

 「ナイス舞花!」

 

 となりでふう、と深呼吸をしている舞花を励ます。

 やはりああいったモンスターは苦手らしい。

 

 「うぅ……ホラー系はにがてだよ……。手、離さないでねルート」

 

 さっきより強く手を握っている舞花が涙ながらに訴えてくる。

 そんな幼馴染みの様子に苦笑しながらも、僕たちはさらに先へ進んでいく。

 

 その後も何度かスケルトンと遭遇したが、その都度アルコの矢に撃たれるか、フィオーレに焼かれていったので、特に何事もなく進む事が出来た。

 

 しばらく歩くと、やけに広い場所に出てくる。

 そして今まで一本道だった通路が、その広間のさきから二つに別れているようだ。

 

 「ここで分かれ道か、困ったな」

 

 先頭を歩くシュリがどうした物かと頭を悩ませている。


 と、その時だった。

 

 いきなり洞窟の中を大きな振動が走り、今まで来た道を天井が崩れ岩が塞いでしまう。

 

 更に、先に続く二つの通路から今までとは比べ物にならない量のスケルトンがおしよせてくる。

 

 「これは、強制戦闘イベントというわけか」

 

 あまりの物量にさすがのシュリさんも冷や汗をかいているようだ。

 

 「何、一体一体はたいしたことない強さなんだ。4人で連携すりゃ余裕だろ」

 

 シトロンがシェルに防御態勢をとらせ、戦闘の準備を始める。

 僕もフェリルと共に、いつでも戦える態勢を整えた。

 

 「シュリ姉さんは少し下がっていてください。まずは俺からいきます。シェル、ハウリングボイス!」

 

 シェルのハウリングボイスで、スケルトンの注意を引きつける。

 

 「続いてロックシェルター!」

 

 そして防御力をあげ骨達の攻撃に耐えながらハウリングボイスの効果をうけたスケルトンがすべてシェルの近くにくるのを待つ。

 満を持してシェルにロックシェルターを解除させ、次の一手をうつ。

 

 「ロックシェルターを解除してそのままアースニードル!」

 

 シェルが防御態勢をやめ、そのたくましい前足で地面を叩く。

 すると、地面から鋭い岩が大量に生え、近くにいたスケルトン達を串刺しにしていく。

 

 「やるじゃないかシトロン。僕も微力ながら加勢するかな!」

 

 シトロンのおかげで大分減ったが、まだまだ通路からはスケルトンが押し寄せてきている。

 シュリとアルコは相手が骨しか無いため相性が悪いようで、あまり戦果があがっていない。

 

 「いくぞフェリル。舞花、とどめは頼んだ!」

 

 フェリルはその身軽さと攻撃力を生かし、次々にシュリに貰った新しい装備を使って骨の頭を砕いていく。

 頭を狙えなかった敵は、足等を攻撃して機動力を削ぎつつ一カ所に集まるように誘導する。

 

 「未だ舞花!」

 

 進路の先からスケルトンが現れなくなり、全ての骨達が一カ所に集まる。

 そこに、まってましたとばかりにフィオーレの魔法が炸裂した。

 

 「やった!」

 

 思わず声をあげて喜ぶ舞花。

 フィオーレによって巻き上げられた土煙がはれると、スケルトン達は全て跡形も無く消えていた。

 

 しかし、ほっとしたのも束の間。

 再び洞窟内に大きな振動が走る。

 そして今度は僕たちの頭の上にある天井が崩落してきた。

 

 「危ない舞花!」

 

 降ってくる岩が舞花の上に迫っていたため、全力で舞花を押し倒してなんとか避ける。

 轟音が収まってから、ゆっくりと目を開けると広間は完全に二つに区切られていた。

 

 「いたた……。大丈夫か舞花」

 

 

 どうやら舞花を庇った際に腰を強く打ったようで鈍い痛みを感じる。

 もっともVRなので相当いたみは軽減されているが。

 

 「だ、大丈夫。庇ってくれてありがとう。危うく死ぬかと思った……」

 

 僕の腕の下で彼女はほっと安心したようにため息をつく。

 

 「やられた。パーティを分断する罠かこれは」

 

 シュリが二つに分けられた広間を眺めながら苦々しい言葉を吐く。

 今の落石で完全にパーティを分断されてしまった。

 

 「仕方ない、入り口にも戻れない以上先に進むしかないな。ルート君とマイカちゃんはそのまま目の前の通路を先に進んでくれ、私とシトロンはこの先を進んでみる」

 

 合流は出来そうにないので、インスタントメッセージで随時連絡を取り合いながら別れて探索をする事を決める。


 そして僕と舞花は二人でぽっかりと口を開いている暗闇に足を踏み入れていく事になった。


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