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プロローグ

 五年ほど前、VRヴァーチャルリアリティ技術が軍事産業から民間へ渡り、それをきっかけに世界中でとある物が大流行していた。

 全感覚没入型インターフェースを用いた大規模多人数同時参加型オンラインゲーム。

 つまりVRMMORPGだ。

 現実とは全く違う世界で、物語の登場人物になりきってゲームをプレイできるそのシステムは瞬く間に社会現象となる。

 いまや子供から老人まで誰もが一度はプレイしたことがあるといわれているほどだ。

 

 流行った内容は主に、VRMMOの魅力を最大限に発揮できるアクションゲームだった。

 その中でも作られた仮想世界の中で剣を振るい、魔法を放つファンタジー物の誇る人気は相当な物だ。

 しかし、世間が剣と魔法のファンタジーRPGに熱中する中、とある無名の会社があるタイトルを発表した事によってその情勢は大きく覆る。

 タイトル名はサモンクロニクルオンライン、今の流行に逆らうようにプレイヤー本人のアクション要素を一切取り除いたそのゲームは、最初誰一人として注目していなかった。

 だがそのシステムは画期的な物で、数年前から国民全員が所持を義務づけられるようになった携帯端末と連動できるという今までに無い物だった。

 仮想世界に接続しなくても気軽にゲームに参加できると言う事で、学生を中心として徐々にその知名度を上げていく。

 そして正式サービス開始から1ヶ月後、数あるタイトルを押しのけその人気は国内最大の物となった。



 

 「ねぇ、涼太もやろうよサモクロ!」


 今日の授業が全て終わり、帰る準備を全て終わらせていた僕に一人の女子が話しかけてくる。

 彼女は森川舞花もりかわまいかいわゆる幼馴染みと言う奴だ。


 「サモクロって舞花がやってるゲームだっけ。最近よく聞くやつだよね」


 そうそう!とテンション高めに舞花が頷く。


 「正式サービス開始から一ヶ月でプレイヤー人口は数千万人!クラスの子もみんなやってるよ!という事で涼太もやろう!」


 ということでの意味がわからないが、実はこのゲーム僕も少し気になっていた。


 「それに明日から開始一ヶ月記念として大規模クエストを実装するんだって!初心者サポートも実装されたばっかりだし始めるなら今だよ!」


 僕の様子をみて好感触だとおもったのか、更に彼女が畳み掛けてくる。


 「そうだな……。そこまで言うならやってみようか」

 

 彼女の勢いに苦笑しつつも、僕は舞花の誘いに乗る事にした。

 

 「よっし、それじゃあ決まり!今日の夜一緒に遊ぼうね!約束だよ?」

 

 「はいはいわかったよ。じゃあ帰ったらすぐゲーム始めるから二十時くらいから一緒に遊ぶってことで良いかな?」

 

 「わかった!楽しみに待ってるね。それじゃあまた後でっ」

 

 そう言って手を振りながら元気に教室からでていく。

 彼女の元気すぎる性格にはいつも振り回されてばかりだ。

 

 「相変わらず仲いいねぇ、お二人さんは」


 後ろから今のやり取りを聞いていた悪友が声をかけてくる。

 振り向くとにやにやとこちらを眺めていた。

 

 「まぁ長い付き合いだからね。それよりいつきもサモクロやってるんだっけ?」

 

 柚木樹ゆうぎいつき、彼も舞花についで付き合いの長い友人だ。

 確か樹も正式サービス開始直後から例のゲームやっていると聞いた気がする。

 

 「おう、これでも結構やりこんでるぜ。いやーついにお前もサモクロデビューか。森川との約束が終わったら俺とも遊ぼうぜ。色々と教えてやるからよ」

 

 「お願いしようかな。とりあえず僕もそろそろ帰ってまずはゲームをやってみるよ」

 

 そう言って鞄をもって席を立つ。

 舞花と遊ぶまでにすこしゲームにも慣れておきたいしあまりのんびりしていないでさっさと帰る事にした。

 

 「おう、楽しんでこいよ、まじではまるからなっ!あと出来ればPIDの連携は設定しとけよ、あのゲームの醍醐味はそこだからな」

 

 帰り際に樹にそう忠告される。

 PIDとはPortable information devicesの略で携帯式の小型情報端末だ。

 国民は皆これの所持を義務づけられており、今では生活に欠かせない道具となっている。

 授業にも使用したりするので、僕も毎日持ち歩いていた。

 

 「わかった、設定しておくよ。それじゃあまたね」

 

 まだ帰る気配のない樹に声をかけて、教室を後にする。

 

 

 

 家に帰ると、早速VR装置を用意する。

 昔一度別のタイトルを樹と一緒に遊んだ事があり、その時購入した物だ。

 そのゲームを引退して以来一度も使っていなかったので少し埃をかぶっている。

 

 早速サモンクロニクルオンラインをネット上からダウンロードする。

 このゲームは内部課金のため本体自体は無料だ。

 内部課金といっても、ゲーム本体に影響する物はあまり無いらしい。

 主にアバターアイテムや、一部ゲーム内レアアイテムを購入できるらしいので課金をすれば有利にゲームを進める事が出来るのには違いないが。

 とはいえ無課金でも十分最後までゲームをプレイできことには違いなく、それも人気の理由の一つだろう。

 プレイ人数が多いため、重課金必須にしなくても十分利益が得られているためこのようなサービス展開ができているらしい。

 

 「よし、準備完了っと」

 

 ダウンロードが終わり、VR機器の設定もばっちりだ。

 全ての準備が終わった事を確認した僕はゲームの起動ボタンを押す。

 

 『ようこそサモンクロニクルオンラインへ。私たちはあなたを歓迎いたします』

 

 脳内に機械音声が流れ、それと同時に視界が暗転する。

 再び目の前が明るくなると、電子的な空間に立っていた。

 恐らくここでキャラクターやゲーム設定をするのだろう。

 

 『まずはキャラクターの名前を決めてください』

 

 音声のガイドと共に、目の前に仮想インターフェースが現れる。

 

 「名前か、昔使ってたやつで良いか」

 

 前に別のゲームをやったときの名前をそのまま入力する。

 

 「ルート、っと」

 

 僕の名字である根本から取ったわりと安直な名前だ。

 だがまぁ呼びやすいので結構気に入っている。

 

 『次はキャラクターの容姿を決めてください』

 

 目の前に大きな姿見といくつかの新しいインターフェースが現れた。

 

 「あんまり変えすぎると向こう行った時動きづらくなるんだよな」

 

 現実世界と仮想世界であまりに容姿が違いすぎると、普段のように上手く身体を動かせなくなるという弊害がある。

 そのため、最近では少しいじる程度で基本は自分の姿をそのまま使うのが主流になっていた。

 姿見を見ながらキャラクターの設定をしていく。

 身長はそのままで髪だけ少し長く、目の色とかを変えたりはしなかった。


 「こんな感じかな。あんまり変わんない気もするけど」

 

 現実よりすこし整った顔立ちになった気がするがそんなに差はない。

 もっと髪や目の色を変えたりしたら印象も大きく変わったのかもしれないが。

 

 『遊ぶサーバーを選択してください』


 キャラクターメイキングを終了して次の設定にうつる。

 現在サモンクロニクルにはサーバーが五つあるので、事前に舞花から聞いておいたサーバーを選ぶ。


 これで全ての準備は終わり、ついにゲームの開始だ。

 意識が自分の身体から切り離され、仮想世界の中に取り込まれていく。

 

 『それでは、この世界を心行くまで楽しんでください』

 

 その音声をきっかけに、再び視界が暗転していく。

 そして僕はサモンクロニクルの大地に降り立った。

 

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