部活見学
坂田たち新入生に向けた部活動紹介も無事に終わり、生徒たちが各々の教室へ戻っていった。教室ではどこの部活の見学に行くかの話題でもちきりだった。既に入る部活に決まっている人や、まだ決まっておらずとりあえず気になった部活に見学に行く人。坂田はクラスメイト何人かで弓道部の見学に行くことにした。
弓道部の部室は少し離れた場所にあり、少し行くのが大変だった。午前中の学校案内でもざっくりとした場所しか説明が無かったから余計にだ。弓道場という場所がそもそも授業では使わないことから、致し方ないといえばしょうがない。
『こんにちは!見学に来ました!』
坂田含め、何名かの見学者たちは声を揃えて弓道場の引き戸を開けた。戸を開けると、部活動紹介の時と同じ格好をした先輩方が笑顔で出迎えてくれた。先輩に案内されるがままに進むと坂田たちよりも早く来た見学者たちが弓道部員の練習を見学していた。
坂田たちのあとにも数名の見学者たちが来て頃合いをみて、袴姿の先輩たちが見学者たちをグループ分けして弓道についての説明を始めた。
「まずは今日見学に来てくれてありがとう。私は弓道部2年の松本遥です。よろしく!」
簡単な自己紹介をした松本先輩は一礼をした。松本先輩の第一印象はというと、坂田よりも少し身長が高くすらっとした体系をしているのが袴姿とマッチしてとても似合っている。周りの反応はというと、男子は鼻の下を伸ばして、女子は憧れの眼差しで松本先輩のことを見ていた。
「それじゃあ弓道がどんな競技か説明するね。」
松本先輩はスッーと息を吸う。
「見ての通り、弓と矢の扱いを間違えたら人が死ぬ競技になってます。例えば、バットで人を殴ったら人が死ぬけど、普通の人は意図してそんなことしないけど、弓道は意図しなくても自分のせいで人が死ぬ可能性がある競技です。」
先程とは違い、声のトーンが下がり真面目な話しだということはその場の全員が理解し、見学しにきた生徒たちに緊張感が走る。
「だから、そこを理解できない人は入部を受け入れることは出来ません。」
みんな声には出さないが驚きと戸惑いで困惑している。
「でも、そこさえ理解すればとても楽しい競技であることは私が保証します。それじゃあ、そこを踏まえたうえで、先輩たちの練習を見学しようか!」
また最初の時のトーンに戻った松本先輩は見学を再開した。
松本遥 桜宮高校2年 弓道部