新聞の切り抜き:1895年4月
――『ニュース・タイム inマルティア』4月分から抜粋。
『グランプサンの惨劇! 実験飛行中の飛行機が魔女と衝突』
マルケニア連邦、ヌヴェール・マルタン州アルネステ郡、グランプサンから痛ましい事件の報告が届いた。今月の12日、同地にて有人動力飛行を実施していたアルネステ大学工学部の飛行機『エドワルド2号』と、同大学の魔術学部教授であるメリッサ・パドル女史の駆る飛行用箒が空中で激突したのである。パドル氏は即死であり、飛行機は大破。操縦士であったゲイル・ベーデル工学博士も、地面に全身を打ち付け死亡した。
事故時、飛行機は1分間900フィートの距離を安定的に飛行しており、着地に成功していれば世界初の有人動力飛行の成功例となるはずだった。
事故の直前までパドル氏は学生達と青空の下でパーティーを開いており、連邦保安連盟によると同氏が多量の林檎酒を摂取していたことが調査により明らかになった。また、確かな情報筋によるとパドル氏は空を飛ぶ飛行機を発見した際に呂律の回らない様子で「あのトンマを叩き落としてやる!」と叫び、箒に跨って突撃したという。
アルネステ大学の学長は今回の事件に関して「我々は、工学と魔術学の権威を失いました。連邦学会における暗黒の日です」とのコメントを出した。尚、パドル女史の死によって、飛行魔術を使える魔術師は世界で二人だけとなった。飛行魔術は今後三十年以内の消滅が確実視されている。
『国際魔術協会が複数の生物の魔物認定解除を発表も、マルケニア連邦とルテリア大公国が猛反発』
今月の18日にプレタル連合王国の首都リンドニウムにて国際魔術協会による会合が行われた。会合の主な議題となったのは、魔物認定の見直しである。
国際魔術協会による魔物の定義は大まかに『非常に高い攻撃性を有し、体内で魔力を精製できる』というものである。しかし、現行、魔物の定義は各国の慣例や風俗に従ったものが多く、本来は魔物とは呼べない生物も魔物として計画絶滅の対象となっていることも少なくはない。
よって、協会は定義の標準化を進めると共に、生態系の破壊や種の保存を目的としてオオカミ、クマ、ワニ、スズメバチ、ライオン、ヒョウ、ユニコーン、ペガサス等の計800種を魔物指定から外すことを決定した新条約を発布し、各国への批准を求めた。
この決定を受け、プレタル、フレンシア、帝国、ビタルス、エスパーニュの代表は条約への賛成を表明したが、マルケニア連邦とルテリア大公国は難色を示している。
両国は国際魔術協会内で数少ない、魔物が生息している未開発地域を本土内に抱えている国家であり、近年において活発に開拓政策を実施している。
連邦大統領、並びに公国宰相は今回の協会の決定に対して連名で「これは魔物の脅威を先んじて解消したエウロパ各国による露骨な内政干渉であり、明らかに我々の政策を妨害する意図がある」との声明を出した。
一方で協会の議長であるグラッツ・タルネン氏は「今回魔物指定が解除された生物は元来危険性が低く、開拓政策の推移には影響し得ない。両国の反対は、魔物の剥製や毛皮から得られる莫大な利益が今回の魔物指定解除により失われることを懸念しての行動だ」と反論した。
『フィリップ・ルヴィエ逮捕か? パリシアの殺人鬼が驚愕の自供』
昨年、パシリア市内にて複数人の女性を強姦し殺害した容疑で逮捕された美容師のセモン・ヴァイヤンが獄中にて自身の正体がフィリップ・ルヴィエであるという旨の供述をしたことを、パリシア市警が明かした。
ヴァイヤンは自分こそが『パリシアの死神』その人であり、五年間に渡り無数の殺人を重ねたのだと語った。
だが周囲の反応は冷ややかである。市警はヴァイヤンの発言について「彼は末期の梅毒に冒されており、現実と妄想の区別が著しく困難である」と述べ、氏の発言を否定した。また「『フィリップ・ルヴィエ』の噂は全くの出鱈目であり、彼が関わったとされる事件に相互の関連性は見られず、92%が解決、もしくは事故であることが立証されている」と説明を付け加えたした。
また、パリシア高等裁判所のオリヴィエ・ドゥプラ判事は我々の取材に対して「彼が本当にフィリップ・ルヴィエで、噂通りにダーキン亭の虐殺、エリオン号沈没、マリオン・ギドン暗殺、その他諸々の事件の主犯であるとすれば、彼はギロチンで頭部を一ミクロン単位でスライスされることになるでしょうね」と述べている。




