10. 汝、疑うことなかれ
街の麓に立った二人は、夕陽を受け、橙色に染まった石壁の建物を見ていた。首を上に傾けると、そんな光景がどこまでも、段々畑のように連なっている。なだらかな山の斜面に作られた美しいルーユの街は、見る者を感嘆させ、上る者を落胆させるのだ。
「思ってたのと……違うかも」
「何がですか?」
「道が思ったより急だなって」
「魔物を避けるためですよ。南部は山がちですから、山の斜面に街を作れば守りやすいんです」
「もう魔物は居ないんだから、降りてくればいいのに……」
そう愚痴をこぼしながら、フレッドはテーブルクロスのように街を斜面から引っ張り下ろす妄想をした。
「フレッドさん、無駄口を叩いてないで仕事しますよ。もう夕方です。もたもたしていたら夜になっちゃいます」
「……探すって言ってもさ、たかが二人でどうやって探すの?」
「よくぞ聞いてくれました! プランは考えてます」
自身あり気に鼻を鳴らした彼女が、街の地図を取り出して広げる。
「いいですかフレッドさん。この街で重要だと思われるのは二点です。まずは麓にある馬車停留所」
地図に印した赤い点を指で叩いてから、アリーヌは麓の一方向に指を向けた。釣られて視線を向けると、そこには街の中でも一際大きい正方形の倉庫がある。
「街は全体が坂になってますから、通行する馬車の重量に制限があります。ですから街に入る際は必ずあの場所で車体の測定を行う必要があるんです。つまり、街を誰が出入りしたか、あそこに行けば一発でわかります」
「なるほど」
「次に」と、彼女は地図に印した別の赤い点を指で叩いてから、街の天辺に向かって指を向けた。
「あの大きな教会です。あそこは街の人が通える唯一の教会になります。人が集まりやすいということは情報も集まりやすいということです。幸い、まだ夕方の礼拝にも間に合います」
「さすが! 理にかなってる!」
「ふふん。そうでしょ?」
フレッドが小さく拍手をすると、彼女は誇らし気に腰に手を当てた。
「で、先にどっちに行くべきかな?」
「効率を考えると二手に別れるべきですね」
「そっか、じゃあ僕が停留所に行くよ」
「いえ、私が停留所に行きます」
「ん? いやいや、僕が行くよ」
「いえ、私です」
「い、いや、僕も停留所が――」
「フレッドさん」
「はい?」
「わ、た、し、が、考えたプランです」
◇◆◇◆
フレッドの目前には坂が、壁のように聳え立っている。いざ自分が上るのだと思うと、坂はより急で果てしなく思える。
「ふん、何がプランだよ。僕だってあのくらい思い付けたさ」
文句を呟きながら、煉瓦で舗装された道を歩き出す。一歩進む度に、明らかに鈍い疲労が足に溜まっていくのを感じる。
歩きつつフレッドは、ポケットから例の似顔絵を取り出して広げた。いつ見ても少女は、少女らしからぬ大人びた佇まいでそこに居る。
今回の人探しの依頼は一つ大きな問題がある。それは少女を探す上で役立ちそうな手掛かりが、似顔絵を除いて現状一つもないということだ。バリス老人曰く、少女は街の飲食店で家族で食事中に突然、それこそ始めから居なかったかのように、その場から消えてしまったそうだ。慌てて付近を探しても痕跡一つなかったという。
坂を上っていると対面から恰幅のいい婦人が歩いてくるのが見えた。教会に直行するよりも、道中で聞き込みをして少しでも情報を集める方がいい。
もしかしたら教会に着く前に手掛かりが見つかるかもしれない。そんな淡い期待を抱き、婦人に声を掛け、少女の絵を見せる。
「すみません。実は人探しをしていて……こんな子を見ませんでした?」
「さあ、見ないわね。もっと上の方に行ってみたら」
「う、上ですか?」
「ええ、住宅街や飲食店は上の方に集中しているから」
婦人に礼を告げ歩く。婦人の言う通り、上に行くに連れて、街に少しずつ活気が出てきたような気がする。
次にフレッドは前から来た中年の、紳士然とした男性に声を掛けた。
「すみません。この子知りませんか?」
「この辺じゃ見ないな。もっと上の方にいるのではないかね?」
「う、上ですか?」
「ああ、街の中心はここよりも上の方だからね」
紳士に挨拶して坂を更に上る。段々と呼吸が辛くなり、足が痛む。
それから少しして、藁にも縋る思いで道で遊んでいた小さな女の子に声を掛ける。
「ねえ、お嬢ちゃん。この子知らない?」
「知らなーい! もっと上だと思うよー!」
「…………そう」
少女に手を振って、更に、更に坂を上る。
街の中心部に近づくにつれて、どんどん坂が急になる。一体にこの街の人々はどうやって暮らしているのだろうか。そんなことを考えるフレッドを、大荷物を背負った老婆が足早に追い越して行った。
その後もフレッドは途中何度も立ち止まりつつ、聞き込みを続けながら坂を上り続けた。しかし、有用な情報らしいものは一つも手に入らない。彼は自分が教会に行くという本来の目的を忘れ、段々と聞き込みから情報を得ることに躍起になりつつあった。
「ねえ、あの、すみません。この子見ませんでしたか」
フレッドは荒い呼吸をしながら、写真を突き出す。その写真を、ハンチング帽を被った男達がジロジロと眺める。
声を掛けたのは酒場の入口に集まっていたガラの悪い男達だ。服を着崩し咥えタバコをしている彼らは、本来避けるべき人種だ。だが、この日のフレッドは相当にムキになっていた。
「あー?」
男達は片目を大きくしたり、細めたりしながら、絵の少女にガンを飛ばすように凝視していた。それから先頭に立っていた男が顔を上げ、フレッドを睨んだ。
「お前、派遣された冒険者か?」
「え?」
問いの意味が理解できずに首を傾げる。
「だから、お前はこの女を探すために派遣された冒険者かって聞いてんだよ」
「え、え、は、はい」
睨み付けてくる男に気圧され、フレッドは頷いた。同時に頭の中で思案を巡らせる。この男がなぜ、自分が少女を探すために派遣された冒険者だと知っているのだろうか。まさか――
「あのー、もしかして……みなさんもこの子を探すために雇われた人達ですか?」
「あ? そうに決まってるだろ」
フレッドの予想は的中していた。しかし『決まっている』とは随分と強気な表現に思えた。彼らは、それこそ金持ちが嫌う、ならず者の典型例といった出立ちをしているからだ。
「え、えっと、何か進展はありましたか?」
「ねえよ、俺達はお前の到着を待ってたんだ」
「ぼ、僕の?」
フレッドが自身に指を向けると、男達が一斉に頷いた。バリス老人が伝えたのだろうか。それにしては彼からこの男達について一つも説明されていない。
「本当に待ちくたびれたぜ、どうも凄腕らしいなアンタ」
「え? そ、そうかな?」
「おいおい、謙遜かよ。可愛くねえ奴だな」
場にドッと笑いが起こる。相変わらず状況は読めない。読めないが、悪い気はしない。
「ボスが待ってる。早く行くぞ」
「え?」
男が言うと、他のゴロツキ達も、手に持っている酒瓶を放り投げて、移動の準備を始めた。
「ちょ、ちょっと待って。ボスって誰?」
「あのなぁ」
男が腰に手を当て溜息を吐く。
「アンタの仕事柄、『知らない振り』が大切なのは理解してるが、そこまで徹底する必要はないんじゃねえか」
男がフレッドの両肩を掴み、体をくるりと回転させ、通りを向かせた。彼はそのままフレッドの肩に手を乗せて強引に押すように通りの方に歩き出す。間近に近づいてみると、男からは酒とタバコが混じった酷い悪臭がした。
「ちょ、ちょっと、どこ行くの?」
「アジトに決まってんだろ? まあ、黙って着いてきな」
◇◆◇◆
扉が閉まった途端に、それまでの夕陽の暖かさは失われ、太陽に見放されたような不安を覚えた。
フレッドは男に連れられ、街の中心部の一角にある大きな建物のエントランスに通された。
エントランスの中は、あらゆる窓がカーテンで塞がれ、陽の光が入らない。唯一の光源は天井にあるシャンデリアの薄明るい光で、屋内の古めかしい調度品や幾何学模様の壁紙をぼんやり照らしている。エントランスの奥には大きな青い扉がある。
「……ここは?」
「劇場だよ。普段はここで演劇なんかやってる」
普段は、ということは今は違うようだ。
「奥の部屋に行け、ボスがお待ちだ」
フレッドは促されるまま、青い扉の前まで歩み手で押し込む。
開けた扉の向こうには、暗い観覧席と煌々とした明かりに照らされた舞台が広がっていた。
「待ちくたびれたぞ!」
光の中で、シルクハットを被った恰幅の良い男が声を張り上げる。男は舞台上に机と椅子を置き、そこに座っている。それはまるで、安っぽい劇のセットようである。
「さあ、来い! 話をしよう」
フレッドは呼ばれるままに、真っ暗な観覧席の中心を通って、男の元に向かった。
「よお、会いたかったぜ」
舞台に上がるなり、椅子に腰掛けた男が言う。口髭を生やした中年の男だ。男は綺麗な黒のスーツに身を包んでいたが、どこか粗野な雰囲気を隠し切れていない。
「……えーと」
「まあ、座れよ」
男に着席を勧められ、フレッドは対面に腰掛けた。この男からも酒とタバコの臭いがする。先程の男達と比較してそこに趣味の悪い香水の香りも加わる分、より酷い。
「遠路はるばる、ご苦労だった」
「あ、どうも」
フレッドが微笑むと、男は頬の膨らんだ丸顔に満面の笑みを浮かべた。
「で、どうだ?」
「はい?」
「この劇場だよ。借りたんだ。だが、貰った資金を無駄遣いした訳じゃねえぜ、今はたまたま劇団の巡業がない時期で安く借りられたのさ」
『貰った資金』というのはきっと、イザベラ嬢の両親から貰った資金のことを指しているのだろう。だが、それを使って劇場を借りた言い訳を、なぜ自分にするのか理解できない。まさか、依頼主にチクられるとでも思ったのか。
「それで……長旅疲れのところ申し訳ないが、事態は急を要するからな、早速仕事を始めてもらいたい」
「ああ、はい。そのつもりですよ……」
「女の顔はわかるか」
「もちろん」
フレッドはポケットから似顔絵を取り出してテーブルに置く。すると、男がそれを覗き込んだ。
「まったく憎たらしい女だ。町中探して何から何までひっくり返したのに見つかりやしねえ。聞き込みだってやった。知らねえって野郎もぶちのめして吐かせようとしたが、歯が全部折れても喋らねえ」
「そ、そこまでやったんですか?」
「ああ、当たり前だ。お前も劇場の周りがすっからかんなの見たか? 街の連中はな、俺らにビビっちまって、ここが街の中心だってのに誰も近寄らねえんだなよ」
男の朗々とした語り口は、その一切恥じていないようで、むしろ自分の力を誇るようであった。彼の手法は明らかに、単なる人探しの域を逸脱している。こんな連中を雇うなんてバリス氏は何を考えているのか。
「まあ、とにかく。早速、このガキをぶっ殺してくれ」
男が人差し指で力強く似顔絵を叩いた。その軽やか音が反響し、消え入っていてからも、フレッドは呆然と似顔絵を見つめていた。
「…………え?」
長い沈黙の後、ようやく小さな疑問符が口の端からこぼれ落ちる。
「ん? どうした? アンタはガキを殺すためにわざわざ王都からやってきたんだろ?」
「……あ、んー、そう……です」
「違う」と、即答しそうになって咄嗟に堪える。男は求めていた返事を聞けて安心したのか、表情を緩めて、葉巻入れを引き出しから取り出した。
――人違いをされている。小さな違和感は感じていた。この段になって、ようやくそれを確信した。
「全くよ、お宅のボスは随分と気が小さいようだな。あんなガキ一人殺すのに俺らを雇って、更にアンタみたいな凄腕を寄越すんだもんな」
「あはは……はい」
「聞いたぜ、王都は最近忙しんだろ? 大変だろうなぁ、需要はたっぷりあるのに『アレ』が辞めちまって」
「あの、一ついいですか?」
「どうした?」
「えーと、そのー、僕はどこの誰ですか?」
「は?」
状況を把握しようとして、咄嗟に口を突いて出たのはあまりにも間の抜けた質問だった。その突拍子もない質問に驚いた様子の男がピタリと動きを止める。
「アンタ……頭でも打ったのか」
「いや……その、一応」
「一応ってなんだよ」
「はは……」
男が瞳を細め値踏みするようにフレッドを睨んだ。フレッドは苦笑いを浮かべながら、ポケットに手を忍ばせ、杖を握った。
「はあ、さては俺を試してんのか?」
男は溜息と共に全身から力を抜き、椅子に深くもたれた。幸運なことに男は自分にもフレッドにも都合のいい結論を出してくれたようだ
「お前は冒険者ギルドの『私生児』のロランだろ」
男が発したのはフレッドにとっての、古巣と旧友の名に違いない。
「……そうです。僕がロランです」
「わかってるよ。これで満足か? もしかして俺の名前も忘れたか、俺はボドワンだ。分かるか?」
「そ、それは覚えてます」
動揺しながらも、取り敢えず頷いてみせる。するとボドワンは、今度こそ葉巻を咥え、火を付けた。濃い香りが漂ってくる。
状況が少しずつ明るみになるにつれ、フレッドは自分が不味い状況にあることを理解する。理由は不明だが少女は命を狙われており、しかも、よりにもよって冒険者ギルドが絡んでいる。
フレッドは自然と机上の少女に視線を向けていた。彼女は相変わらず理知的な大人のような印象を受ける面持ちで佇んでいる。だが今はそんな少女が不気味だ。
「じゃあ、そろそろ僕は……その、仕事に」
「おう、任せたぜ。生皮剥いでやれ」
「はは……気が向いたら」
フレッドはその場を後にしようと立ち上がった。だが、ふと思い立って口を開く。
「その『私生児』って呼び方、止めた方がいいですよ」
「あ?」
「彼……じゃなく、僕はそう呼ばれるのが好きじゃないんです」
「……おう、それは悪かったな」
ボドワンは軽い謝罪ををして右手を上げる。
「あばよ、ただのロラン君」
◇◆◇◆
劇場の扉が背後で閉まっていく。
――パタリと、背後で音がした。
同時に息を止め、早足で歩き出す。恐らくロランがこの街に向かっている。彼と会うのは非常に不味い。だから、それより早くアリーヌを見つけてこの街から出なければならない。
フレッドは駆け足で広場を抜け、下り坂を走る。もう依頼どころではない。フレッドはすれ違う人々を躱しながらアリーヌがいる街の麓を目指した。
その時、腹の底に響くような地面が揺れる程の重低音が周囲に鳴り響き、フレッドは反射的に足を止めた。それから音のする背後に視線を向ける。すると遠く、坂の頂上にある教会の鐘が大きく揺れ動いていた。礼拝の時間だ。
「驚いたかね、旅の人」
真横から老人の声がした。視線を向けると、背の曲がった老人の上目遣いと目が合う。
「この街の教会の鐘はとびきり大きいんじゃ。それはのお、あの教会は昔、魔物が襲ってきた際に物見櫓としても使われてたからなんじゃ、魔物が麓に現れればあの鐘が三度鳴って住民にそれを告げる仕組みじゃ。ほれ、見てみろ。あの位置からなら町中が見渡せる」
フレッドは老人が指で示す通りに、教会をもう一度仰ぎ見た。確かに、あの高い位置からなら魔物の動きを逐一観察できそうだ。
「あ!」
「ど、どうしたんじゃ?」
その時、フレッドのツルツルの脳に電流が走る。全ての点と点が繋がって、ある仮説を生み出す。
「あ、ありがとう! お爺さん!」
「え?」
フレッドは踵を返し、再び坂を駆け上がった。
◇◆◇◆
「はぁー、はぁー、はぁー、もうやだ……」
広場に辿り着く頃には口一杯に血の味がし、ヒューヒューと、肺に穴が空いたかのような音が呼吸に混じった。坂を上るのが、下ることと比にならないくらい苦しいのは、きっと神様の設計ミスに違いないとフレッドは心から思う。
フレッドは重い足を引き摺って、劇場の先程と逆の、裏手に回った。そして、ボロい裏口のドアノブをゆっくり回す。予想通り鍵は掛かっていない。
立て付けの悪い扉を押し開けると、カビ臭い匂いが鼻をついた。裏手側は灯一つなく、古い機材や小道具が乱雑に積まれている。
足音を殺して、手探りで目的地に通じる扉を探す。少しの間探索して、ようやくお目当ての古びた扉を見つけた。
扉を開くと更に濃いカビ臭が、風に乗って顔面を撫で、咳き込みそうになる。目を開けると、そこには上に続く木製の階段があった。
慎重に階段を上り切った先にあったのは広い空間だった。そこはワイヤーや器具が張り巡らされ、その上に格子状の細い通路が設置されている。遠目に見るとそれはパイのようだ。たしか、ここはキャットウォークと言うらしい。
フレッドはその細い通路を、真下のボドワンに聞かれないように慎重に進んで少女を探した。彼女が似顔絵から感じた通りの、気の強い少女であるなら、きっと男達の動きを把握するために、この劇場内に隠れているはずだ。
そして、そうならば隠れられそうなのはここだけだ。
「イザベラ、イザベラ出ておいで僕は味方だよ」
小声で呼び掛けてみるが反応はない。更に奥に進――
「動かないで」
突然、背後から声がしてフレッドは動きを止めた。それは底冷えするような冷たい声であったが、それでも隠しきれない幼さがある。
「イザベ――」
「黙って」
振り向こうとしたフレッドは再び制止され言うとりに黙った。すると、イザベラが淡々とした声で話し始める。
「状況を説明してあげる。アンタは今、私に二連式の散弾銃を向けられてるの。だからちょっとでも不審な動きをしたらグチャグチャになるわ。理解したら首を縦に振りなさい」
彼女の声には有無を言わせぬ迫力がある。それは正に写真のイメージ通りであって、彼女がイザベラに違いない証拠だ。フレッドは嬉しさのあまり飛び跳ねそうだったが、そうすると撃たれるので大人しく首を縦に振った。
「えらいわね、褒めてあげる。そのままジッとしてて」
要求通り、ジッとしていると、何にやら腰の辺りに違和感を感じる。見るとポケットを漁られていた。
「ちょっと」
「黙りなさい」
少女は瞬く間にフレッドから杖やら、その他諸々を奪い銃を構え直す。
「腹這いになりなさい」
「だから僕は君を……」
「二度は言わない。口を開いたら気絶させるから」
撃鉄を起こす音が聞こえ、渋々、物音を立てないように、膝から地面に置き、次に掌、胴体、最後に顔を埃まみれの地面に付ける。
こうなると問題は、どう彼女の誤解を解き、信頼を得るかだ。幸い、説得に関してフレッドは大いに自信がある。ましてや相手が年端もいかぬ少女であるなら、余裕だ。
「イザ――」
口を開いた瞬間、後頭部に衝撃が走り、フレッドの意識は暗闇に沈んだ。




