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VTuber.8



あれから4日経った。まだVTuberモデルは完成していないが、美心は頻繁に私の部屋にくるようになった。打合せ的な側面はあるけれど、彼女と居るのは面白く楽しい。


そんなこんなで今日もまた彼女は私のところに来て配信部屋にいる。そして、Pwitterアカウントを開設し終わったところだ。


「じゃーん!!できたよ、ママ!!」

「むむ。おお、いいね」


良いねと言ってもホントに開設したばかりで名前と簡素なプロフィールしか載っていない。けれど、これから自分で運営していくコンテンツのSNSが完成したんだ。そら嬉しいもんか。


「よし、んじゃ私のPwitterをフォローしてくりゃれ」

「あいさー!」


ぴっ、と敬礼する美心。私は思わずわしゃっと頭を撫でる。よーしよしよし。


「んじゃ、美心のPCに送ってあるイラストをPwitterのアイコンとヘッダーに設定しようか」

「え......あ、ホントだ、イラストある!いつの間に」


「VTuberモデルに必要な別パーツ描くついでに色々描いといた。描き下ろしなのだぜい」

「流石ママ!!すごい!!」

「はっはっは。ちなみに衣装リクエストがあれば言うと良い。描くから。時間あればだけど」


「わあ、嬉しい!でもママ......お仕事の方は大丈夫なんですか?こちらに凄く時間つかってるみたいですけど」

「でーじょぶでーじょぶ。しばらく予定は入ってないからさ」


実は今はちょっとした長期休暇中なんよね。だらだらとAチャンねるで遊んでたらこんな大事の企画が立ち上がって......うーむ、人生は何が起こるかわからんもんだねえ。転生した時点で思ったけど。


「アイコンは......どれにしよう。たくさんありすぎて逆に困っちゃうかも」

「すまん、張り切りすぎた」


描いたイラストは計6枚。どれも背景まで入れた完成されたイラストだ。彼女が「うーん、うーん」と頭を悩ませていると私のPCにメールの通知が入った音がした。


「お、誰だろ。パパかな?美心、ちょっと悩んでて」

「あい」


ふらりよろよろと美心の配信部屋を出てリビングへ。PCを操作しメールをチェックすると、やはりそこには秋葉の名前があった。ちなみにパパは艦隊物の美少女ゲームが大好きで描いている同人誌は全てその作品だ。


って、おお?


メール内容は完成したVTuberモデルについてだった。


『でけた』


と、一文がありデータが添付されていた。私はかなりの短期間で仕上げてくれた驚きもあって内心こいつ私がデータ送ってから寝てねーんじゃねえか?と不安になりつつも返信をした。


『ありがとー』


短いと思うかい?このくらいがちょうどいいんだよ。もしも相手がほんとに寝て無くて気が立っていたり修羅場真っ最中だったら下手な気遣いは逆に噛みつかれる要素になる火中の油になりかねない。


だから出来るだけ簡素にお礼を告げ、返信不要の意を込める。秋葉ありがとう寝てくれ。


それはそうと完成されたVTuberモデルが届いた今、いつでも配信をすることができる。美心にいわなきゃ。


「美心」

「はい!」


未だ頭を抱え続ける美心さん。悩ましく眉間に皺をつけている彼女が可愛くて仕方ない。


「さっきのメールね、パパからだったよ」

「パパ!なんて来たんですか?愛してる?」

「なわけねーでしょ!VTuberモデルの完成データ送ってくれたんだよ」


悩ましいお顔が一気に剥がれ、真顔になる美心。ぽかん、としているその表情もまた可愛い。写真に撮りたい。


「やったあああっ!!」


ばんざーい!と両拳を天にむけつきあげる美心。これはバンザイじゃないか。


「良かったねえ。よければ設定して操作してみるかい?」

「ぜひぜひっ!」

「あいよっ。すこーし待っててね〜」


PCに座る美心が立ち上がり私がそこに座る。嗚呼、此れが我が娘の温もりッ!!......えーと、転送したモデルデータをこちらへ移しまして。


作業を進めて少しすると隣の美心が「ふぇー」「ほー」「あー」と謎の声をあげている事に気がついた。ちょっと間の抜けた声だが、こういうところにもVTuberとしての素質がうかがえる。


きっとこういうのもリスナーにいじられ、愛されていくのだろう。


「ママはスゴいですね」

「ん、そーかい?」

「絵もかけて、PCも使えて、コスプレして売り子にもなれる。なんでも出来るんですね」

「何でもはできないよ。できることだけ、っておいコスプレはしとらんぞ」

「え、そーなんですか」

「するわけがなかろう」


否定すると美心は私の横顔を覗くように観てきた。じーっ、と見つめられる私。ちょっとした居心地の悪さに目を細め美心に聞く。


「......なに?作業に集中できないんだけど」

「あ、すみません。でも、ママそんなに可愛いお顔しているのにコスプレしないんですね。人気出そうな幼い顔してるのに」


「んなに褒めても何も出んぞ。お世辞を言われるのは得意じゃないんだ、私は」

「えー、お世辞じゃないのに」

「はいはい。ほら、美心もちゃんと見て。このセッティングも自分でやれるようにしないとなんだから」

「うっ、これを......」


青ざめる美心。いずれはVTuberとして一人で歩けるようにならないとだからね。私もいつどうなるかなんてわからないし。この子が一人でも困らないようにしないと。


だから捨てられた子犬みたいな顔してるけど、私は知らんぷりを決め込むぜ。はっはっは。

決してさっきの仕返しとかじゃあないぜ。はっはっは。


「ところで初配信は何をするか決めたの?」

「はい!」

「おっ......何するんだい?」


「自己紹介と雑談です」

「ふんふん、なるほど」


まあ最初は当たり障りのないそれでいいか。多分相当緊張するだろうし、まともに喋る事もコメントを読むことも出来ないだろうね。でも、こういうのは後々ネタになる。あと思い出にも。


(......初配信)


初配信というのは宝物だ。自分のスタートを見ることができ、あの時の思いや信念を顧みることができる。

そして長い時間を費やし歩いた先、その映像に自身の成長を感じられる。


「初配信は私はリビングで観てるからね。なんかあったら呼んで」

「え」


「えって?どした?」

「いえ、ここで一緒にいてくれるのかと......」

「私がいたら集中できないでしょ」

「ひとりで配信は、その、ちょっと心細いといいますか」


「だーめ。リスナーに誰かいるとか悟られたらまずいし」

「え、ママだっていいますけど」

「それでもだめだよ。部屋にママがいるって言って皆が皆信じてくれるわけじゃないでしょ。「男か?」とか思われたら後々面倒になる」


「な、なるほど......」


しゅんとする美心。ちょっと胸が痛く感じる。けど、リスナーはそういうのに敏感だし、男の陰を嫌がるリスナーは多い。私だって美心に彼氏の陰がチラついてたら動揺して寝込むかもしれないし......って、あれそういや美心って彼氏いるのか?


私は美心の横顔を見つめる。こんだけ可愛かったら......ふつーは居るよな?でも、バイトで忙しいのに彼氏つくれるんか?いや、逆に忙しいからこそ彼氏をつくって癒やされてたりする?


「な、なんですか?」

「......あ、いやなにも。ほら、これがウェブカメラ。ここで美心の動きを真似てモデルが動くからね」

「あ、はい!りょうかいです」

「ほい、それじゃあ座って。アリスを動かしてごらん」


「はい!」と、椅子にすわりカメラに向く。ぱちくりと2回瞬きする美心。それと同期し画面上のアリスがぱちくりと2回瞬きをする。ゆっくりと、VTuberモデルに......イラストに魂が宿りだす。


「マイク入れるよ。ほい」


カチリ、とスイッチをいれた。すると備え付けられたスピーカーから『はい!』と美心の声が放たれる。『わあ!びっくりしたっ!!』


驚く美心。そのまま画面のアリスが表情を映し出す。勿論、表情の切り替えはあるが、その動きで感情の色がモデルに映し出されている。


「ふふ、びびる美心おもろ」

『ちょっと!あたしで遊んばないでくださいよーっ!!』


お、いい反応。VTuberっぽいねえ。


「悪い悪い。えっと、ここでモデルの表情切り替え。やってごらん」

『はーい!ポチッと、おおお!!怒った!!アリスがむくれてる!!どした!?何があった!?』

「いやお前がやらせたんだろ!」


美心マジでいいな。おもろい。うん。


『はじめまして!アリスです!でへへ』


いや笑い方ー!!


「いいね。初配信、いつにする?この感じならいつでもやれそうだけど」

『Pwitterとかで宣伝したほうが良いんじゃないですか?』

「んー。大きい企業とかならそれも良いけど、多分効果ないと思うよ。まずは見てもらうモノ......配信のアーカイブだったり、動画だったりを上げるのが先かな。人呼び込んでもアピールできるモノがなければ意味ないし」


いやまあ私がPwitterで呼び込めば結構な数は集まるだろうけどね?でも最初は少人数のリスナーで慣れたほうが良いと思うんだよね。掲示板スレに入り浸ってるみんなくらいの人数で丁度良いかなって。っていうか、人多すぎたらコメント読むのも大変だろうからねえ。


『それじゃあ、今日は?』


「......え?」


私がきょとんと彼女の顔を見ると、美心とアリスは同時に笑みを浮かべた。







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