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ネット掲示板のノリでVTuberのママになったTS絵師とその娘の物語。  作者: カミトイチ《SSSランクダンジョン〜コミック⑥巻発売中!》


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VTuber.49



――朝、起きると横で美心が眠っていた。


すやすやと寝息をたて幸せそうにしている彼女。


(......かわええ)


私は彼女の額にかかる髪を指先でのける。微かに笑みを浮かべる美心。

それを見て自然と私の頬も緩み、ふふっと声が漏れ出た。


カーテンのかからない窓の外。朝日が差し込む部屋の中で、二人の呼吸と秒針の音だけが聞こえてくる。


(......朝食、作るか)


ギシッ、とベッドに手をつくと隣から「......んっ」と美心の声が漏れ聞こえた。


「おはよ、美心」

「......おはよう、ございます。ん.....ぅっ」


目を擦り、にこりと笑う。


「今から朝食作るからさ、美心まだ寝てて良いよ。......あ、バイトあるのか?」

「ううん、無いです。でも起きます......お手伝いします」

「......そっか、ありがと」


開けたパジャマからのぞく白い肌。ほのかに赤い髪にくりんくりんと寝癖がついている。


洗面台、美心が歯を磨く。その隙に私も歯ブラシをくわえつつ彼女の髪をとかす。


(相変わらず美心の髪は綺麗だよな......)


「あ、そうだ」

「?」


「今日、夜に橋田さんとえまちゃんくるから」

「ああ、昨日のライブ配信の打ち上げですよね」

「そーそー。ちょっと遅めの時間になるけど」

「わかりました」

「美心はどうするの?みんな来るまでウチにいる?」

「そうします!あと配信もしたいし」

「そかそか。了解」


その時、私の携帯に着信が。みれば蓮華さんからDMが来ていた。『こういう感じでお願いできますか』という一文と共に添付されている画像を開く。


(ふんふん、なるほど......これをベースにするなら、結構早く完成しそうだな。あとはまあ、スレ民に相談してアイデアを出してもろて)


「どうかしました?ママ」

「ん。蓮華さんから」

「おお、蓮華ちゃん!今日もお仕事なのかなぁ。大変そうで心配だぁ」


......そうか、美心にはまだ言ってないのか。


いや、言ってないんじゃなくて、言えないでいるのか。仕事を辞めるって事自体、かなり勇気が要る事だしな。それを口にすることも後ろめたさで言いづらいんだろう。


(......けど、決断できた蓮華さんは本当に凄いと思う。実際、私は前世で辞められずにずるずると終わりを迎え死んだわけだしな)


携帯に送られてきた画像を改めて見る。これが、彼女の望む姿......。


人は居場所によって姿を変える。私が社畜から絵師になり成功したように、美心がバイト戦士からVTuberで成功しようとしているように......もしかしたら、蓮華さんのその場所も美心と同じ場所なのかもしれない。


まだわからないけど、でも彼女が可能性をみたそれに私も力を添えたい。

アリスに似たこのラフ画に命を宿そう。彼女が輝けるように。


(パパにも連絡しとかないとな......秋葉も忙しいと思うし早めに伝えとかないと)


「?、ママ?どーしたんですか、ぼーっとして」

「いんや、なにも。ところで今日なに食べたい?出前もとるけど私も美心の好きなもの作ってあげるよ」

「マジですかっ!!」

「うん。なにが良い?」

「クレープが食べたい!!」

「おー、良いね。何入れる?」

「えっとねー、生クリーム!苺!バナナとチョコソース!!」

「ふんふん。よし、朝食たべたら少し買い出し行くか。美心も行く?」

「はーい、いきまーす!!うへへっ!!たーのーしーみーっ」


クレープの味を想像しているのか、とろんとした表情になる美心。食べる前から幸せそうだ。そして、そんな顔をみると私も幸せな気持ちになる。


窓の外、青い空が広がり雲が流れる。風があるのか、数秒も経てばまるで違う空模様に。それはまるで人の心模様――時と共に揺れ動き色を変える。


(......蓮華さんの決めた事だ。私は、彼女の居場所を用意して待っていよう......)



......つーか、そう言えば、えまちゃんどーしよう。急募(打開策求ム


スレ立てるかこれ。安価でどうするか決めちゃう?


って、馬鹿なこと言ってる場合じゃないよな。ちゃんとえまちゃんには伝えないと。――私は、美心の事が好きだって。





◇◆◇◆◇




――深呼吸。


深く吸う空気。社内の廊下を歩き、オフィスへと足を運ぶ。


鼻をつく煙草の臭いと、重苦しい雰囲気。辿り着いた自分の所属する職場。扉を開くのにこれほど勇気を要した事は無い。


「......」


息苦しさが増していく。呼吸がいつの間にか浅くなり、額には汗が流れ始めた。


(......だ、大丈夫......できる。ちゃんとして、辞めるんだ......あとの人が困るから、ちゃんと引き継ぎして、それくらいしなきゃ......)


「おい、邪魔だよ!」


後ろから怒鳴り声に近い声量で声をかけられ、ビクリと体が跳ねる。


「す、すみません、ごめんなさい......」


そう言い避けた時。それが同期の男だとそこで気がついた。


「あ?西野じゃねーかよ!......つーか、おまえ今まで何してたんだよ。仕事に穴あけといてよ、のうのうと出社してんじゃねえーよ」

「ご、ごめん、ご迷惑おかけしました」

「いやんな言葉意味ねーから。働きでかえせっつーの。ほら、はいれよ」


扉が開かれた。







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― 新着の感想 ―
[一言] なんだか穏便に辞められ無さそうだなぁ… 退職代行なんてサービスがある位ブラックは何処までもブラックなんだよなぁ…
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