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ネット掲示板のノリでVTuberのママになったTS絵師とその娘の物語。  作者: カミトイチ《SSSランクダンジョン〜コミック⑥巻発売中!》


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VTuber.16


私は何とか平常心を保ち、美心へと聞いた。


「......ゲドウツクル、遙華......知ってるの?」


こくりと頷く美心。


「ゲドウツクルは、その......あたし......あたしの、親友が歌い手として活動していた時に使用していた名前で、遙華はその子の本名です」


ドクン、と心臓が鳴る。指先が小刻みに震えている。


時計の刻む音。


(.......まさか、本当に......あの子か?)


「でも変なんです......」

「......え?変って、何が?」


美心はぼんやりと画面を眺めている。そして、2、3度何かを言おうと口を動かし、小さな声でこう言った。


「.......彼女、事故で死んでるんですよ」


.......え?


「なので、こんなチャットできる訳ないんです......」


そう言いながら、美心はチャット欄から『ゲドウツクル』の名前に矢印を合わせクリック。すると彼女のユーザーページへと画面が切り替わる。


現れたのは、彼女がかつて歌い手として上げていた動画。最後に投稿されたのは18年前。それ以降は更新されていない。


「アカウントが乗っ取られている?」


「......どうでしょう。乗っ取る意味も無さそうですが......広告もついてないですし」


確かに。じゃあ彼女がこの人にアカウントを渡したか、か。......いや、無いかな。彼女は事故で亡くなったらしいし。渡す意味も、理由もわからない。ていうかそもそもアカウントを譲渡するのってダメだろ?......いや、まてまて、っていうか――


(......死んだ......死んだ?死んでるって、死んでるのか......)


――腕を組み思考する私。ふと美心へ視線を移せば彼女はそのユーザーページをじっと見つめていた。何を思って何を考えているのか。


不安気な表情を貼り付け虚ろな目をしている。


(......それは、そうだよな)


亡くなった親友のアカウントで急に謎の誰かが現れたらそりゃいい気しない。それに私も似たような気持ちだ.......ゲドウツクルが亡くなっていたというなら尚更。親友だった彼女の遺したモノが好きに使われているという事実に悲しみを通り越して怒りのようなものを覚える。


美心と私の思いはおそらくは同じ――。


......なら、やることはひとつだ。


「連絡、とってみよう」

「......え」


ギシッと椅子が鳴り、彼女は体ごと顔をこちらへ向ける。


「どうして」

「私も気になるから。......その、実は私もゲドウツクルのファンだったんだよ、私」

「そう、なんですか」


きょとんとする美心。不思議なことに虚ろな瞳に生気が戻っていた。


「うん。なんなら彼女にイラスト描いてあげたりしてたし」

「......あたしに?」


ん?


「え、いや......ゲドウツクルにね?」

「あ、そっか。そう、ですよね......ん?」


「「ん?」」


噛み合っているようで噛み合ってない謎の感覚。お互いの顔を見ながらもほぼ同時に頭上に「?」を浮かべ、首を傾げた。


「......どしたの、美心」

「......えっと、考え中。ちょっと色々おきてて頭がショートしそうで......」

「まあ無理もない。色々とあった配信だったから......美心、こんな中で言うのもあれだけど、チャンネル登録者3万人おめでとう」


ハッ、とする美心。バッ、とこちらへ顔を向け、眉間に寄せていたシワが一気に開放され和らぐ。彼女はにこりと微笑みこう言った。


「......ありがとうございます、ママっ!」


可愛いすぎる......この笑顔はきっと将来何かしらの難病の特効薬になるに違いない。もうすでに私にたいしての癒やし効果が半端ない。


でもおそらくは用法用量を守らねば心臓に負担がかかりすぎる恐れが......ほら、今もバクバク言ってる。


しかし......それだけに許せないな。こんなに可愛いウチの娘にあんな顔をさせたこのニセゲドウツクルが。


(......)


......でも、ってことは、あれが本当に偽物なら.....ゲドウツクル、遙華はもうこの世には居ないって事なんだよな。


――目まぐるしく回る情報の波の中、私はふと冷静になる。


(......ちょっと、胸が苦しい)


――死んでいる、という美心の言葉。


信じないわけじゃないけど......そうは思えない自分がいる。不思議と現実味も無く、なぜか心が否定している。


いや......どこかでゲドウツクルの死が美心の勘違いであることを願っている私がいるのか。


......そんな訳ないのに。


(けど、このアカウントを使っている人が誰かを確認する必要はある)


......うん。ゲドウツクルに連絡をとってみよう。


悲しむのは今じゃない、悲しむなら......彼女の死が私の中で確定してから、一人でだ。


抑えろ......美心を心配させるな。


私は美心の、ママなんだから。



◆◇◆◇



――週末。土曜日、昼12:53。


この日、私と美心は例のゲドウツクルに会う約束を取り付けた。


「......美心、大丈夫かい?」


「はい」


とは言うモノの、彼女は明らかに怯えているような雰囲気と表情だった。


『もしも叶うならお会いしたいのですが』


連絡をするとニセゲドウツクルから直接会いたいとのメッセージが送られてきた。これ幸いと了承し、アリスのマネージャーとしてひとまず私が会うことに。


美心にはとりあえず遠くからゲドウツクルのアカウントを使用していた人間を確認してもらう、という流れになった。


「それじゃあ美心はそこのカフェの窓際に座っていて」

「......わかりました」


いやマジで大丈夫か。顔面蒼白だったけど......これは、早めに確認してもらってすぐ切り上げないとヤバいかな。


そして、予定の時刻より早い5分前。


――コッ、とヒールの音が私の背後で止まった。


「あの、アリスさんのマネージャーさんですか」


若い女性の声。振り向けばそこに一人のスーツを着た美人がたたずんでいた。


――ショートボブの黒髪。ツンとあがる目尻。


「はい.......え?」


――そこには、死んだと聞いていた彼女が、ゲドウツクルが立っていた。



「ゲドウツクル......」

「?、はい、そうですが.......どうしました?」





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