第1話 森の中で
[該当世界への転送、正常に完了しました]
無機質なシステム音声に叩き起こされた俺はまだダルさの残る上体を起こしながら悪態をつく
「全く、特典が貰えたりする割にはこんな良くわからない森?の中に放りだしてくれるわ…、優しいんだか優しくないんだかわかんねぇなぁ…」
………
「って⁉んん?なんか声がおかしくないか?」
そう思いながら周囲をキョロキョロと見渡すと肩にかかる銀色の長い…髪?
自分の体を見下ろしたときにうっすらと膨らみがわかる胸部…
失われてしまった俺のエクスカリバー…
「なんじゃこりゃ~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」
「おいおいおいおいおい!種族:魔女ってそういうことかよ!聞いてねぇぞ!」
「おい!何とかシステムとやら!今からでも特典変更はできねぇのか?」
虚空に向かって語り掛ける俺、しかしその思いとは裏腹に何分待っても森には耳が痛むような静寂につつまれていた
-1時間後-
(フム…、女になっちまったもんはしょうがないとしてここからどうしたもんかね…)
(まずそもそもここがどこかわからねぇ、木々に囲まれて森ン中なのは間違いねぇだろうが…)
(世界の救済、それが俺がこの世界に送られた理由なんだが、そもそも何からこの世界を救済するのか…さっぱりときたもんだ)
(まぁここでうだうだ考えていても仕方ねぇ、まずは人里探すしかねぇか…)
「よっこらせっと」
重い腰を持ち上げとりあえずこの森からの脱出、ひいては人里の発見のため動きだした”彼女”のいろいろな意味での新たな冒険の幕開けであった
(しかしこの森は一体どこまで続くのかね…)
2時間ほど歩き続けているが一向に森の出口は見えてこない
(そろそろ同じような景色を見るのにも飽きてきたし、早く森から出られればいいんだが…)
(…そもそもこの森…なんかおかしいんだよな…人っ子一人どころか野生動物一匹いないのは一体なんでだ…?)
そのように彼女が考えていると先ほどまで一切の静寂に包まれていた森に悲鳴が響き渡る
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だ、誰か…たすけてくれぇ~!」
聞こえた悲鳴に反応して瞬時に走り出す俺、鬱蒼と生い茂る木々の隙間を縫って、木々を足蹴に雷のように悲鳴のもとへと向かっていく
俺が悲鳴の現場に到達して目にしたのは大きめのオオカミのような化け物3匹と戦う男2人と血を流し倒れている男1人、そしてその男を治療しているとみられる女1人と馬車の中でおびえている商人のような男二人であった。
「…ックッ、一体なんでこんなところにグレートウルフなんて魔物が出やがる…⁉」
想定外といったように愚痴をこぼす戦闘中の男
「しかしどうしたもんか、さすがにグレートウルフなんて3対1でもきついのに…2対3なんてどう考えても無理だぜ…」
どうにもならないといったように泣き言をつぶやくもう一人の男
「おい!大丈夫か!?」
駆け付けた俺は戦闘中の男たちに声をかける
「…⁉おいおい、なんでこんなところに子供がいるんだ⁉、おい嬢ちゃん!危ないから隠れてな!」
戦闘中の男が走り寄ってきたひ弱そうな少女に向かって警告する
(おいおい、嬢ちゃんって…って、今の俺は女なんだったか…)
「でもそいつやばいんだろ!大丈夫、こんないぬっころに負けるようなヤワな人間じゃないんでね」
自分を信頼してくれた男に対してそういいながら笑いかける
「………!ッッ!そんな冗談言ってられるほどこいつは弱い魔物じゃないんだ!大体嬢ちゃんは武器の一つも持ってやしねぇじゃねぇか…!俺たちが何とか抑えるからッッッ!!!!嬢ちゃんは後ろの商人たちと一緒ににげてくれや!」
激化する戦闘の中で余裕なさそうに語りかける男
「そうよ!あなたも早くこっちへ!」
簡易的な治療が終わったのか血が止まっている男を商人のような男たちと馬車に運び入れている最中とみられる女が声をかける
「大丈夫、俺に任せておけって」
そういいながらその辺に落ちていた木の枝を拾い上げ
「だから本当にッッッ⁉」
刹那
飛び出した彼女が動きを止めた時、そこにあったのは無残に殺された少女の死体…
ではなく、息を引き取り死に絶えたグレートウルフ3匹の亡骸であった
処女作です!まだまだ未熟な身ですので暖かい目でご覧ください!
ブックマーク等は励みになりますのでなんでもよろしくお願いします!