今日は帰さない
ふと、時計を見ると二十三時半を過ぎていた。
午前中から一人暮らしの彼女の家で過ごしていたけど、もうこんな時間か。そろそろ帰らないと終電時間に間に合わないな。
帰る準備をしていると、お風呂上りの彼女が髪をタオルで乾かしながら近づいてきた。
「祐司、もう帰るの?」
「もうって、終電なくなっちゃうだろ」
俺がそう言うと、彼女は突然俺の横に座った。そして腕をつかみ、いたずらっぽく耳元でささやいた。
「明日は仕事ないでしょ。今日は帰さないよ。」
彼女の火照った体から伝わる体温、シャンプーの匂い、つかまれた腕の感触、耳にあたる声と吐息、それら全てが俺をその場から動けなくした。
ふと、時計を見ると二十三時半を過ぎていた。
午前中から会社でずっとパソコンとにらめっこしていたけど、もうこんな時間か。仕事はまだあるけど、そろそろ帰らないと終電時間に間に合わないな。
帰る準備をしていると、上司が靴音を鳴らしながら近づいてきた。
「もう帰るのか?」
「はい、終電がなくなってしまうので」
俺がそう言うと、上司は突然俺の真後ろに立った。そして肩を掴まれ、ねっとりした声が耳元で囁かれた。
「まだ仕事終わってないでしょ。今日は帰さないよ。」
上司の手から伝わる体温、加齢臭、掴まれた肩の感触、耳にあたる声と口臭、それら全てが俺をその場から動けなくした。