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戦場主婦  作者: ヤサシイキ
13/19

あり合わせスープを作ろう後

(あ、いいかんじかも)


一旦冷ましたあと、試しに細切れにした干し肉を少し味見すると、かなり塩味が感じられた。

スープは、味が薄く水に近かったので、ポペリ花と塩をまた投入した。


最後に、ミモミ草とキキニ草の甘く、シャキシャキした茎の部分を入れて、コルドフさんに熱して貰えば完成だ。


手で草をちぎりつつ、塩を少しずつ足しながら調理をしていく。

いや、調理というよりは、どんな味になるのかの実験といったほうがいいか。


「コルドフさん、あっためてください」

「はいっす」


そう言って、コルドフさんはまた指でくるくると鍋をかきまぜる。

鍋の上に、静かに泡が上がってきたのを見て、コルドフさんにやめてもらう。


「なんか、おもったよりも美味そうっすね!」

「そうですか?私、これでも専業主婦ですから!」

「センギョウシュフ?あ、なんかのシェフっすか?」

「うーん、違うけど...。あ、ちょっと味見します?」

「するっす!」


近くでテントを組み立てていたアルベルトさんも呼んで、味見してもらうことにした。


お皿は、先程ラインさんが大きな葉っぱを丸めて作ってくれたのがある。

なんでも、繊維が強く葉も厚いので、皿代わりには最適なのだとか。

でも、お皿が葉っぱだと虫なんかが付いてそうなので、念入りにチェックしたものだ。


「どうぞ」

「どうも」

「どうもっす」


そう言って、2人は少しフーフーと息を吹きかけ冷ましたあと、恐る恐るというようにゆっくりスープを啜った。


「!うまいっすね」

「これ、干し肉ですよね...?柔らかいし、味も干し肉より濃い気がするんですけど...」

「はい、干し肉は、味を染み込ませたんです。」

「美味しいです」

「ありがとうございます!」


良かった。どうやら、うまくいったようだ。

ホッと胸を撫で下ろすと、後ろから小さな体が抱きついてきた。


「おなかすいた」

「かおるもー」

「今できたよ。ちょっと物足りないけど、スープだよ」


2人の頭を撫で、鍋をテントの中に運ぼうとする。


(お、重っ!!しかも、鍋熱っ!)


「あ、俺が持ちますよ。男ですし」


そう言って、アルベルトさんはひょいと鍋を持ち上げた。

(紳士だ…。素晴らしい)


こんな人と結婚したかったなあ、なんて頭の片隅で考える。

いや、夫も最初はすごく優しかった。

君は、俺のそばにいてくれるだけでいいって、それで幸せだって言ってくれた。



(...いや、そんなこと考えても仕方ないか。)


「おっ、美味そうな匂いだな。さすが衛生兵」


そう言って、ラインさんが嬉しそうに鍋を覗き込む。


(取り敢えずの目的は、生きることなんだから。)


アルベルトさんの後に続いて、テントに向かう。


「薫ちゃん、あそこでお寝んねしてる人達、運べる?もう傷も治ってるし、さっきみたいに優しくしなくても大丈夫だと思うけど…。」

「わかったー」


薫はそう了承の返事をすると、ズルズルとテントに5人いっぺんに運んでいった。

なんだか、娘の背中がとてもたくましく見えるよ、ママ。


怪我人をテントに運び、鍋を真ん中に起き、私たちも入るとギュウギュウだった。

こ、こんな状態で寝れるのか…?


兵士の人達は、皆無口でしんみりとした空気だ。

ラインさんみたいな人が特異なのかな。

ーーーそりゃそうか。

だって、戦争に駆り出されてるのに楽しくお話ししながらスープ飲もう!とはならないよね。


「じゃ、葉皿もったか?」

「はい」


兵士の人達も、コクリと静かに頷いた。


「では、女神に感謝して頂こう。」


いただきます、とは言わないのかとぼんやり考え、スープを口に含む。

うん、まあまあかな。


もう少し味が濃くてもいいけど...。

干し肉も柔らかくなっているし、おもったよりも干し肉からいい出汁が出てたようで、ただの塩胡椒スープよりも少し美味しい。


そう思って、他の人にも感想を聞こうとして目を配らせた。


「うん、よくあれだけで作れたな。うまい。」

「なんか、久々の食事って感じです」

「ママー。このはっぱきらい」

「とおるにちょうだい!」

「あいがと」


そんなやり取りを聞いて、満足気に私は頷いた。

でも、そんなに言うほど美味しいかな?いや、美味しいっちゃ美味しい。

まあ、戦地だし、なんでも美味しく感じるのかもしれない。


ガツガツと無言で食べる面々を尻目に、私はスープを口に含んだ。




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