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戦場主婦  作者: ヤサシイキ
10/19

祝福の痣

「い、いでよー防壁!いでよいでよいでよいでよいでよ…」


唸って捻ってやっとカプセルが出てきた。

なるほど、透君も唸ってた訳だ。初めは楽しいかもと思っていたが、かなり疲れる。

こう、ぐったりとのしかかる感じ。


カプセルが転がっていき、ドーム型へと変形する。


ーーーこれで、12人目だ。

1人目の人はもうすでに、ほとんどの傷が完治していた。


聞けば、円状の光るものは魔法陣というらしい。

なんでも、魔力と魔法の交換通路になっているんだとか。


ラインさんが興奮気味に説明してくれた通り、ドーム型の防御魔法は回復力がとても高い。

観察していると、どんどん、というほどではないが、徐々に傷が癒えていき、3分程あれば完治するようだ。


この魔法さえあれば、透と薫は守れる。

まあ、あの子達に助けが必要なのかはともかく。


「そういえば、シホさんの祝福はなんなんですか?」


アルベルトさんが、穏やかな笑顔で聞いてきた。


「私、は...」


祝福なんて、どうやって知るんだ。


「ごめんなさい、それが、わからなくて....。」

「え?でも、祝福の痣はどこかに現れていますよね?」

「祝福の痣?」


私がそう聞き返すと、アルベルトさんは心底驚いた、というように目を見開き固まってしまった。


「えっと、祝福の痣は、体のどこかに現れるんです。背中とか、胸とか、耳とか、例えば、俺なら雫の形をした痣、ラインさんなら、葉っぱの形をした痣ですね。」

「そ、そうなんですか...」


(痣かあ)

自分がどんな祝福を受けているのかは、とても気になる。

なんだか、少しワクワクする。私も、アルベルトさんみたいに水を集めたり、ラインさんみたいに葉を操ったり出来るのだろうか。


少し期待しながら、手首、腕、足など、痣を探してみると、それらしいものを発見した。


「あ、これ?」


手のひらに、ハートマークの痣が出ている。

あら、なんだか可愛い。


「あの、アルベルトさん、これ...」


アルベルトさんに手のひらの痣を見せると、アルベルトさんは首を傾げた。


「なんでしょう、このマーク?魅了、は唇の形をした痣だし...」


でもなんだか可愛らしい形ですね、と朗らかに笑った。

ああ、癒される。

この人、いくつぐらいなんだろう。

見たところ20代だけど...。

透にも、こんな青年に育って欲しい。


「アルベルトさんは、どこに痣があるんですか?」


私がそう聞くと、アルベルトさんはにわかに固めたチョコみたいに、カチコチに固まってしまった。


「え、あ、あー…、お、俺は、その、ですね...」

「?」



「お、お尻、です...」


その場が、というより、私たちの間の空気がなんだか妙に生暖かい、微妙な感じになってしまった。


「....い、位置は関係ありませんよ。」

「はい…」


この人も、なんだか変なところで残念な人だ。

まあ、痣の位置なんて関係ない。うん。


「おーい、テントの掃除終わったぞー!!」


ラインさんが爽やかに駆けつけてくる。

ああ、この人も残念なんだよね。脳筋、というか、お人好しなのかな…。


「ありがとうございます。じゃあ、乾かしてから、また組み立てましょう。」

「いや、乾かす必要はないぞ。」

「え?」


どういう意味だ、訝しげにラインさんを見ると、後ろを指差した。


「?って、あ。」


薫が助けたうちの1人が、起きていたのである。

明るい茶髪の青年だった。

茶色い髪を指先でくるくるといじりながら、アルベルトさんと楽しげに話している。


「そいつは風の祝福持ちだ。ここは風もそこそこあるし、乾かしてくれるだろうよ。」

「グッドタイミング、ですね」


これなら、日が暮れる前にテントを立てて、一晩過ごせそうだ。


ーーーあのテントに私達が入りきるかどうかは別として…。

まあ、座りながらでも、人間寝れるはず。




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