表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒魔法使いファントム   作者: 光影
3/26

生徒会長


 生徒会長が笑顔で首を傾げる。


「あら。私に反論して来た人はこの学校では初体験の事でビックリです。でも何故ですか? 普通なら喉から手が出る程喜ぶ事ですよ。クラス代表までは任意で決まる部分が大きいけど、生徒会や学年代表者は学校全体で見ると高権限者になる為、基本的に任命されないとなれないのですけど」

「ただ単に面倒だからですよ」


 春奈や他のクラス代表者はこの状況を納得できないと言った感じだ。


「何故こいつが学年代表なんですか?」

「普通はクラス代表からの選抜ですよね?」

「おい。生徒会長だからってふざけてるのか?」

「こいつは早乙女に負けてる。それに入学時俺たちの中じゃ最下位だった。そもそも学園ランカーなのも不思議なくらいな奴だ」

「赤城てめー汚い事したなー」


 生徒会長が小さく声を出して笑う。


「貴方達は私を怒らせたいのかしら?」


 その瞬間、周囲が一気に静かになる。生徒会メンバーは眉間一つ動かしていない。


「まぁいいわ。理由をお話します。ただしこれは他言ですよ。赤城君の実力は貴方方以上のものです。学校と私はその事を事前に知っていました。だから学園ランカーにも任命されていますし、今私からのお誘いも受けているのですよ。確か貴方方は全員Aランク魔法、魔術までしか使えませんよね? しかし私と同じように彼は本気を出せばSランクまで扱えます。そして国家非常緊急事態に対して私と彼は国の補充要因として呼ばれ最前線で戦う事になります。ここまで言えば分かると思いますが彼は私と同じ高校生としては数少ない国家戦闘員で精鋭魔術師の一人です。と言っても学生では二十人程いますが。Sランク魔法と魔術は国でも扱える者が一割もいない事は貴方方もご存知ですね。それでも彼の実力が不十分だと言えますか?」


 鏡月華は何故か大和の秘密を知っていた。大和は鏡月と言う名前は知っているが大和が知っている鏡月はこんな奴じゃない事に戸惑いを感じていた。大和の知っている国家戦闘員の鏡月はこんな話し方ではなかったからだ。どうも引っかかるが大和はしばらく様子見をすることにする。これには何か裏がありそうだと考えたからだ。 

 生徒会メンバーですら国家戦闘員と言う事を初めて知ったのだろう。皆が鏡月華の言葉に唖然としている。先程まで文句を言っていた五人ですら何も言わなくなっている。一人を除いて。


「生徒会長のお話は本当ですか?」

「早乙女さんは私が嘘を言ってると?」

「決してそんなわけではありません。ただお話の内容が大きすぎて頭での理解が間に合っていないのが事実です」

「なら見せた方が早いわね。赤城君今から私と演習するわよ」

「え? 俺は……」

「もし貴方が勝てば学園代表の件は取り消すわ。ただし負けたら受けて頂戴。それならいいわね」

「はい。わかりました」


 だから春奈と言い、鏡月華と言いちゃんと選択肢を与えて欲しいと大和は願うがそれが叶う事はしばらくなさそうだ。こんな面倒な事は絶対に間違っている。そもそも大和の意思が何処にも反映されていない時点で勘弁してほしかった。

 蓮華学園の生徒会長の強さは前に何回かテレビ越しで目にしたことがあるけど本気の大和でも勝てない。それなら適当に負けた方が楽で良さそうだ。どうせ勝てないのに粘っても学園代表になる運命は変わらないだろうし。


 大和たちは全員で生徒会室地下にある特別演出室へと移動する。生徒会メンバーとクラス代表の五人は観覧席に行き、大和と生徒会長である鏡月華は演習広場に行く。ガラス越しに皆の姿が見える。二階が観客席になっていて一階が演習場になっていた。それにこちらの声は向こうに聞こえているみたいだけど向こうの声は聞こえない仕組みになっているみたいだ。


「さて着きましたけど準備はいいですか?」


 鏡月華が髪をほどく。その刹那大和は全てを察する。あの時、大和が自然に学校に溶け込めるように女王陛下に魔法で記憶の一部に細工されていた事を思い出す。


「生徒会長、質問いいですか?」


 鏡月華は笑顔だがその笑顔の裏に何かあると思うとめっちゃくちゃ不気味だ。数ヶ月前……。


「第一部隊撤退開始、第四部隊と第六部隊通信途絶、第七部隊シグナルロスト……指令指示を」

「くそ……あの魔獣の強さはなんだ。間違いなく精霊レベルだ。主の魔人を倒されなければここも終わりだ」


 モニター越しに国の精鋭魔術師をどんどん倒していく魔獣。それを見つめ、指令からの指示を待つ作戦本部と現場。この時多くの者が生きる事を諦めていた。この状況では逃げるにも負傷者が多く連れて逃げる事ができず皆の魔力もほとんど残っていたなかったからだ。魔人が使役する魔獣は魔術によって生まれる使い魔だが初めて目にする者がほとんどの精霊レベルだった。精霊レベルは人の域を超えた強さに値するがその魔獣を他の戦場から駆け付けた一人の若い女の子が次々と倒した。魔獣の数が多く結局ジリ貧になるが、その強さは圧倒的であった。仲間ですらその強さに畏怖を覚える者は少なくなかった。大和はそんな女の子を目の前で見ていたが特に何も思わなかった。

 何故なら正直どうでも良かったからだ。命があっただけでそれ以上何も思う必要はなかった。


 あの時は髪を結んでいなかったが今は髪の毛を結んでいて喋り方もあの時と比べるととても穏やかなせいで気づかなかったが今なら分かる。鏡月華の正体はコードネーム銀幕(ぎんまく)。国家戦闘員は一人一人にコードネームを与えられ基本名前は使わない。国家戦闘員の特徴の一つとして基本的に国が抜擢したメンバーは強制的に軍人となるがそれと引き換えに権力やそこそこの生活が約束される。それと同時に学生の場合は学校に行かなくても無条件卒業保障や、周りの学生にバレないよう生活する為の生活拠点も与えられる。


「貴女は銀幕ですね。最初は誰か全く分かりませんでしたが髪をほどいた貴女を見て察しがつきました。女王陛下の記憶操作と言い何が目的ですか?」


「目的はただ赤城君には学年代表となって私のお手伝いをして欲しいのと学年代表としての力をあの子達に見せてあげて欲しいだけですよ。残念ながら女王陛下の事は知らないです」


「では何故、生徒会メンバーにも国家機密である事を口留めだけで教えたんですか?」


「あぁ~それは今年の生徒会メンバーは今の三年生の副会長が引退しても他のメンバーは私と同じ二年生です。なので来年も今のメンバーで行くのと今後副会長権限を与える者の秘密を教える事で信頼関係を構築する為ですよ。それにいずれ時間が経てばばれますからね」


「もしかして半年後の生徒会役員選挙で副会長になれと?」


「そうですよ。知っての通り他の有力な魔術学園は全て会長、副会長は国家戦闘員がなっています。それだけ学校通しのパワーバランスも大事なの。何より重要な事は魔人が攻めてきた時にすぐに対応できるための準備としてもね」


「いい加減にしてくれ。ただでさえ国家戦闘員ですら嫌なのになんで学校生活まで面倒な事に巻き込まれないといけないんだ」


「それが力を持つ者の宿命だからです。今回は簡単に手合わせと思いましたが丁度いいですから一回貴方に現実を教えてあげましょう。ファントム全力で来なければ死にますよ?」


 華の雰囲気が変わる。今までの笑顔だった華が目の前の人間を殺す目になり、肌が焼け付くような殺気が伝わってくる。大和は全身に冷汗をかく。このままでは死ぬと身体が警報を鳴らしている、ビビってたら間違いなく死んでしまうと震える身体に何度も言い聞かせる。


「魔力全開放。全魔力目の前の敵を葬る剣となり我が身を護る盾となれ。敵は眼前にあり。明日の光掴みたくば、己が限界を超えた力を我に授けろ。異論は認めない。太古からの契約の名の元に命ずる我が名はファントム。来い、幻影にまといし大いなる力」 


 大和は本気で行くことにした。ここまで来たら面倒とか言ってられない。生きるか死ぬかの問題だ。


「あら、完全詠唱と言う事は本気でくるのね」


 大和からしたらさっきまでの華の言葉遣いは嘘みたいにな光景だった。本来華の口から日常的に敬語が出る事はない。むしろさっきまでが異常すぎて大和ですら正体に気付かなかった。今も一応敬語と言えば敬語を使っているがさっきまでみたく一言一言に気持ちがこもってない。


「精霊レベルの魔獣を簡単に殺す貴女相手ですから」

「最高ランク魔法、魔術はS+ランクに対して魔力のオーラは完全詠唱でもAランクまでしか防げないのを知らないわけではないわよね?」

「完全に防ぐ必要はないからこれで十分です」


 その刹那両者が動く。


「五大元素の一つ水よ、球体となりて直進せよ。球水」

「我に力を与えよ。レジスタンス」


 大和が二つ詠唱をする。

 華と接触するまでに剣の生成と球水による先制攻撃。正直Cランク魔術では通用するとも思えないがないよりましだと考える。高位魔法は魔法陣が複雑になり、高位魔術は呪文が長くなる。勿論例外は何事にも存在はするが基本はそうゆう仕組みだ。


「光の矢よ。汝の敵を射抜け」


 大和は華がCランク魔法とは珍しいと思ったが今は置いておく。普通に考えればまだあるからだ。大和の読みは当たる。


「魔法陣展開」

「裁きの光を目前の敵に示せ」


 大和は焦る。三つの詠唱を華が一瞬で終わらせたからだ。光の矢四本が大和に向かって直進してくる。光の矢には追尾性能がある。大和は水の球水の攻撃対象を華から光の矢に変更して対応する。華の詠唱により魔法陣が演習会場の一角に大きく展開される。お得意の魔法を使うみたいだが、魔法陣に呪文を唱えていない今はただの飾りだ。華と接触する刹那、大和は右手に持っている剣で斬りかかるが華の剣がそれを阻む。華はさっき「裁きの光を目前の敵に示せ」の詠唱で生成されたSランクの光の剣を持っている。 あの剣は光属性で最高位の位置に値するが故に光魔法と魔術はほとんどあの剣で反射されてしまう。唯一光で反射出来ないのが剣より上位クラスのS+ランクの魔法、魔術だ。彼女のコードネーム銀幕はこの銀鏡から来ている。今の一太刀で大和の生成した剣が砕けたので魔術移動で間合いを取るが、華はそれを読んでいたかのように詰め寄ってくる。

 大和は魔力のオーラから魔力を生成して魔術移動で剣劇を避けながら詠唱を開始する。この際Cランクでは歯が立たない。あいつと同じSランクの剣じゃないとまたすぐに折れてしまうと考える。


「闇の力よ。目の前に我が道を阻む者を切り裂く為の力を分け与えたまえ」

「光に招かざる者、その闇の罪を受けよ。全てを焼き付くせ聖なる光。汝が敵は我の行く末を阻む者。ならば焼き尽くして構わない」


 武器系統の呪文は比較的短いが戦闘中となるとそれでも生成するのには一苦労する。

大和の頭が警報を鳴らす。今の詠唱はまずいと。今すぐに魔法陣が発動する事もなさそうなので大和は一旦無視する。闇と光の剣が交差して鍔迫り合いになる。


「私の一撃を止めるとは流石です」

「ギリギリだけどな」


 その瞬間お腹に痛みを覚える。身体が華の左拳で殴られたと判断する時には後ろ蹴りがくる。大和は一歩後ろにジャンプして威力の軽減を図るが壁まで飛ばされてしまう。流石に魔力のオーラでは物理攻撃は防げない。防げるのは魔法と魔術攻撃だけだ。今回は魔力の乗った蹴りだが蹴り自体が物理攻撃となっている為、女の子とは思えない重たい一撃を喰らってしまう。大和は壁に衝突すると同時に口から少し血を吐いたがすぐに魔力のオーラで治癒を開始する。完全詠唱だとオーラが自動治癒をしてくれるが魔力を結構消費するので長期戦になればキツイ。そもそも格が違い過ぎる。


「学年代表になってくれるのであればここで終わりにしますけどどうしますか?」


 華の大和に対する殺気が弱まる。生徒会長として大和に質問をしているからだ。


「学年代表はまだ受けてもいいが副会長はいやだと言ったらどうする?」

「力尽くになりますがどうします?」

「ならまだ続けるさ」


 大和の答えを聞くと同時に華の姿が消える。大和は空間魔法で前方四百メートルの場所に空間転移をする。大和が先程までいた場所を見ると華の剣は大和が先ほどまでいた場所に刺さっていた。正に間一髪だった。と大和は心の中で思う。


「何故ですか? 貴方は何故いつも私の思いを踏みにじるのですか?」

「いつも?」

「あの時も私が貴方の戦場に行かなければ間違いなく貴方の部隊も魔獣に滅ぼされいた。そして貴方も殺されていた。だからあの時私の部隊に戻れと命令したのにも関わらず、今回はどこでも言いなんて言って断わったのですか? 勿論私の部下と仲違いしていた事は知っていましたが命と比べれば安いはずでした。貴方は今回も私の提案を全て断ろうとしている。何故ですか?」


「俺は俺自身が思った事をするだけだ。それ以上の理由は家族がいなくなった日からいらなくなったからな」

「そうですか。ならば行きます」


 華が大和に向かって突っ込んでいく。大和も華に突っ込み剣と剣の勝負になる。国家戦闘員の本気の剣の勝負。普通の人には早すぎて目で追うのが精一杯だろう。それでもあちこちで剣と剣がぶつかる音が幾多に聞こえる。魔力を使った高速移動でぶつかっている最中にも詠唱はされる。


「聖母よ愛するものを守る為に私に光の加護を与えて下さい」 


 華が詠唱した魔術効果はある一定回復量までの自動回復。

 Aランクの回復魔法となるとかなりのダメージを回復してくれる。

 大和は回復魔法を使う華に臆せず攻める事にする。


「魔装の力よ。闇の力を開放し目の前の敵を貫き殺せ。暗殺魔術ダークスピア」

 更に追加詠唱をする。

「魔装生成後複製、汝の敵を自動追尾しその命を貫け」


 一本の槍が十本、二十本と数を増やし空中に静止した状態で増え、華の心臓を目掛け勢いよく発射される。華は大和の剣での攻撃と飛んでくる槍全てを躱すか受け止めて捌いていく。 


 華が先ほど展開しておいた魔法陣が明るく輝きだすと同時に大和に向かって勢いよく光のレーザーがとんできた。大和は魔力のオーラで防御するが三秒程すると貫通してきた。大和が先程の詠唱の時に魔法陣にSランク魔法を仕込んでいたと頭が認識すると同時に今度は五本の光のレーザーがとんでくる。大和はダークスピア十本を自分の前に展開して光のレーザーの軌道を変える。後は魔力のオーラで障壁を展開して耐えた。十本の槍が消滅してしまうとは想像していなかったらしく大和の額に汗が見える。大和は残り十本の槍が華を追尾攻撃しているがどうするか悩み、とりあえずできるか分からないがあの魔法陣奪うことを決意する。


「汝の主を変更する。前主を汝の敵として再設定し前汝の敵を主と設定する。魔法詠唱は光に招かざる者、その闇の罪を受けよ。全てを焼き付くせ聖なる光。汝が敵は我の行く末を阻む者。ならば焼き尽くして構わない」


 魔法陣の所有権奪取は相手の詠唱内容が分かり魔力の波長を合わせる事が出来れば可能だ。大和は魔力の波長合わせは魔力のオーラに全て任せた。魔力の波長合わせはかなり難しい。だからできるかは魔力のオーラ次第だ。魔術ランク的には同位置ランクにあたるので問題ない。後は魔力の波長が一致すると同時に所有権が変わり五本の光のレーザーが華を襲う。十本の槍と五本のレーザーこれには流石の華と言え焦る。剣を盾にして光のレーザーを防げば槍が身体を貫き、槍を剣で撃ち落とせば光のレーザーが華の身体に風穴をあける。この勝負大和の勝ちだ。少なくとも華が本当に本気で来ていたら、大和は死んでいたに違いない。油断して何だかんだ手加減していてくれたからこそ勝てた相手だった。


 その時、凄まじい衝撃が大和を襲う。何とか目を開けて見てみると、槍は全て消え光のレーザーが大和を目掛けて飛んでくる。まさかここで正真正銘の本気になるとは思いにもよらなかった。槍を切り裂き、光のレーザーすら剣で反射させてくるとはお見事だ。大和にもう防御の手段はない。魔力のオーラが大和を守るが次々と貫通して大和の身体を貫く。その一本が心臓を貫き、魔力のオーラの制御が出来なくなる。これで回復すら行えなくなった。残りの四本も両肩と両足に命中し、動くことすらままならず流血しながら地面に倒れる。流石にこれは死ぬかな。大和は静かに目を瞑り家族の事を思い出す。


「父さん、母さん、姉さん今からそっちにいくよ」


 死を覚悟する。やはり国家戦闘員でも数名しかなれない軍隊長に勝てるわけがなかった。

 声が聞こえる。空耳か。


「空耳じゃないわよ馬鹿。なんで最後空間魔法使わなかったのよ」

「あぁ銀幕か。実はお前の魔法陣奪うのに魔力全部使ってしまった。一応保険として魔力のオーラにある程度予備を蓄えてたが心臓を貫かれた瞬間に……」


 口から血を吐き大和の言葉が途中で終わってしまう。


「聖母よ愛するものを守る為に私に光の加護を与えて下さい」


 華の回復魔法が大和を優しく包み込む。しかし華が何故泣いているのかが大和には分からなかった。大和を殺すつもりで来たのなら死んでも何とも思わない、だからこそ意味が分からなかった。


「ごめんなさい。本気で殺すつもりはなかったの」


 大和は残された全身の力を使い華の涙を手で拭く。

 何故このような行動をとったのかは大和自身でも分からなかった。


「何故泣いてる?」

「家族を失って心をなくした貴方には分からない事よ」

「そうか。ならいい。勝負には負けた。学年代表と副会長候補の件は受けよう」

「いいの? 私貴方を殺しかけたのよ? それでも貴方は私を慕ってくれるの?」

「何を今さら。学校をでれば俺は銀幕の部下だ。ならば命令すればいいさ」

「面倒くさがり屋にしては珍しいセリフね。気でも変わった?」

「そうだな。さっき俺は死を覚悟した。しかしさっき気づいた。命を救ってくれた誰かの為に動くのも有りだと思った。お前みたいに」


 足跡が聞こえてくる。首を曲げて音がする方向を確認すると生徒会メンバーとクラス代表達が走ってこちらにやってくる。


「生徒会長、赤城さんの様子は?」

「今回復魔法をかけていますので後五~十分もしたら動けるようになりますよ」


 生徒会メンバー全員、死人が出なくて良かったと言った表情をしている。

 普段の生徒会活動って……。


「クラス代表の人達に生徒会長として聞きます。貴方達はこれでもファントムが……赤城君が学年代表としては力不足と言えますか?」


 五人が静まりかえる。無理もないだろう。異論を言うには実力がかけ離れ過ぎている。この学園において実力主義なのは皆が知っている。だからこそ生徒会長の言葉に反論は基本的に許されない。


「異論はないみたいですね。生徒会メンバーも今日は疲れたでしょうから皆さん今日は帰って大丈夫ですよ。私は赤城君が復活したら帰りますので」

「ではお先に失礼します」


 皆が一斉に帰りだす。大和は心の中で思う。なんでこんなにも皆は生徒会長の言葉には素直なのだろうと。容姿は正直美人だが、口を開けば可愛さなんて一欠けらもないような女に皆従順すぎる気がする。  まぁどうせ恐怖で人を支配しているのだろう。確か国の隊長達からも腹黒女と言われていた事もあったが、不思議な事に腹黒女と悪口を言っている奴ほど華に裏で告白している。世の中は怖い。


「赤城君ちょっと聞いてもいいかしら? 私の勘が当たってればいいんだけど、今私の悪口を心の中で思ったでしょ?」

「なんで銀幕はいつも俺の心の中を読めるんですか?」

「え? 私色々な人の視線を気にして生きてきたからそこらへんは何となくだけど。それよりさっきの質問当たっていたかしら?」

「銀幕は何故笑顔なんですか?」


 笑顔なのにその後ろに見える殺意が恐ろしい。ここで大和は皆が従順な理由が何となく分かる。


「私の質問に答えなさい。ファントム?」

「当たってます」

「死ぬ前に言い残す事はあるかしら?」

「まだ死にたくないです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ