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♯84 Heavy Rain 29
艾は待っていた──
店の前でひとり、爻が来ることを信じて。
「……私、気づいてあげられなかったらどうしよう」
シャッターの下がった店の前、艾はずっとそのことだけを考えていた。
次第に辺りは暗くなり、頼りない灯りが街をぼかす──
近付く音があれば立ち上がり、爻ではないかと姿を捜す。
「……本当はここに……いたりするのかな?」
手を伸ばし、何かに触れるかもしれないと思いながら、艾の心に芽生えるは恐怖。
「……逢いたいよ。爻さん」
触れた感触のない手を握りしめ、空を見上げる艾──
「…………雨、降りそう」




