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♯80 Heavy Rain 25
「やだっ! 泣かないでよ。私はあくまで並行世界の “私” なんだから」
(……そんなこと言ったって……まさか、また話せるなんて思ってなかったから)
涙を拭う爻の前に、茉莉と同じ容姿の女性が、困り顔で立っている──
「爻? よく聞いて。今この世界で、並行世界の可能性を、消してしまいかねないことが起ころうとしているの」
(全然解らないけど……よくないことなんだな?)
「そう。最悪の場合…… “最初の者” しか残らない」
(その…… “最初の者” っていうのは?)
「それは……」
ドンっ!
突然、壁を叩く音が室内に響く──
2人は視線を交わし、ゆっくりと反対側の壁際へ移動した。
ドンっ!
ドンっ!
ドンっ!
(……気付かれたな。どうするんだ?)
「出口は……あの扉ひとつだけよ……」




