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#5.5 読書の時間
爻は抜け出せずにいた。
艾のおすすめという本を、読み始めたのはいいものの……。
途中で本を閉じることが出来なくなってしまったのだ。
スピンという紐のしおりが、この本には備わっているので、決してしおりが無いからではない。
「……残りのページ数が少なくなってきたなぁ」
一気に読んでしまいたい気持ちと、一度落ち着き、ゆっくりと噛みしめるように読みたい気持ちとが、爻の心をグラつかせる。
「もうこんな時間か……よしっ! このまま読んで、艾さんに明日、感想を伝えに行こう」
時計の針は頂点で交わり、日付が変わっていた。