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#60 Heavy Rain 5
「生き続ける? ……茉莉が……爻君の中で……」
(えっ?! ……なんだって?!)
爻は自分の胸の辺りを押さえて、目の前でやり取りされた会話に耳を疑った。
(俺は……茉莉に生かされたのか……)
(茉莉が……今も俺の中で生きている……)
『臓器提供意思表示カード』
茉莉は一枚のカードを持っていた。
「もう本当に、茉莉は助からないのでしょうか! 1%でも望みがあるのなら!」
医師は目を伏せ、静かに首を横に振った──
「そう……ですか……」
力なく立ち上がり一礼すると、茉莉の母は一言……。
「……お願い致します」
と、呟いて部屋を後にした。
(……そうだっ! 茉莉……あいつに会わなきゃ!)




