#52 テーブルマナー
「食事が運ばれてきたら、カトラリーは一番端、外側から使っていくのよ。途中でナイフやフォークを置く場合、そのお皿に八の字のように置くと、まだ食べていますという合図になるの。ちなみに、もう下げてくださいの時は、揃えておくのがサインよ」
万理華にテーブルマナーを教えられる艾。
「爻君。どうしてボスの弟だということを、黙っていたんだい?」
チラリと万理華を流し見た爻は──
「……別に黙っていたわけではないよ。ハル君が万理姉の手下だということも知らなかったしね」
「手し……まあ、そうだね。ははは……」
(ああ、きっと美味しい料理なのだろうが、ひとつも味がしない……)
「スープスプーンは、手前から奥へと入れるのが英国式。今回はフランス料理なので、奥から手前にスプーンを入れて飲むのが正解ね」
艾は万理華の手元をコピーするかのように食事をしている。
(あれじゃあ、艾さん、楽しくないだろうなぁ……)
「サメちゃん。もし間違った物を使ったとしても、給仕の人は呼ばなくていいからね。ちゃんとしたお店なら、お客様に恥をかかせないように、そっと並べてくれるから。まぁ、そういうところで、私はお店の品や格なんかを見てるわ」
ドヤ顔が凄い万理華へ、尊敬の眼差しを向ける艾。
「じゃあ今日は、皆で飲みましょう」
その一言に手を止めたのは、爻とハルであった──




