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#4 おすすめ
「こんなに本があると、何を買ったらいいか迷いますね」
周囲を見渡した爻が、ポツリと洩らす。
「あ、あの……爻さんは普段、どんな本を読まれるんですか?」
「実は……あぁ……あんまり本を読んだことがなくて」
申し訳なさそうな顔で、爻は頭をポリポリと掻きながら答えた。
「ごっ、ごめんなさい。そうですよね? 皆さんが読んでいる訳ではありませんもんね。私ったら……やだなぁ……もう……」
艾もまた、申し訳なさそうにしながら俯いてしまった。
それを見た爻は、すかさず──
「あの……艾さんのおすすめは?」
「わっ……私のおすすめですか?!」
爻を従え店内を歩き回ること数分。
「あった! これ……読んでみて下さい。私、この本好き過ぎて……もう何十回も読んでいるんです」
楽しそうに話す艾を見て、爻はこの本に決めたようで──
「それじゃあ、この本を下さい。読んだら、感想……聞いてくれますか?」
艾は満面の笑みで頷いた。
「……はい! 是非、聞かせて下さい!」