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#3.5 艾の日常
買い取った本に値段をつけると、艾は数冊持ち、棚へと挿しに行く。
「あっ……この辞書欲しかったんだよなぁ。買おっかなぁ……」
この店は艾の祖父が経営しているが、体調を崩している為、お店は本好きの艾に任されていた。
「何日かして残っていたら、あなたは私のものです」
辞書へ言葉を掛けると、あまり人の目に触れそうもない場所を探す。
「うわっ……」
いいところを見つけたようだが、身長が150センチも無い艾には、ジャンプしても届かない、遥か上空の世界のようで。
「本を買う前に……台が必要みたい」
ポロロロン♪──
ポロロロン♪──
出入り口のセンサーが反応して、お客様が来たことを知らせる。
「いらっしゃいませ」
艾はにっこりと微笑み、元気な声でお客様を迎えた。