#37 姉として
お会計を済ませた万理華──
「艾ちゃん、ありがとう! あと、そこの店員さんもどうも」
「ああ、はい。よそよそしいの、逆に助かります」
「むぅ! ……えーん! 艾ちゃん、こいつ態度悪い! クビにしていいよ!」
抱きついてきた万理華を、優しく抱きしめながら、艾は天使のような笑顔を爻へと向けた──
「艾さん。申し訳ないです……」
「さぁ、行くかぁ!」
何事もなかったかのように、本の入った袋を持つと、親指と小指を立て、それを顔の横にあてた。
「何だそれは? まさか “電話するね” の合図じゃないだろうな?」
「カフェで爻さんを待っている間に、連絡先を交換したんです」
「掛かってきても、出なくていいですからね!」
(……どうせ、大事なときに繋がらないんだから)
「じゃあ、気を付けて帰れよ。事故とか洒落になんねえから」
そういうと見送りを終え、爻は店の奥へと消えていった。
「……艾さん。爻をよろしくお願いします」
「はい。いつでも遊びにいらして下さいね」
深々と頭を下げ、万理華は帰路についた──




