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#32 タイミング
とにかく慌てて身支度を整えた為、若干の寝ぐせを跳ね上げたまま、爻は2人が待つカフェへと急いだ。
(店には来るなって言ったのに……艾さんに余計なこと話してないだろうなぁ?)
そんなことを思いつつも、爻の足取りは決して重いものではなかった。
「あっ! 来た来たー! ここだよー!」
「朝っぱらからオープンカフェで大声出すなよ。おはようございます。艾さん」
途中から声色が変わり、ニコッと笑顔を見せる爻。
「昨夜の電話の件で、爻はわたしに貸しがあるんだからね?」
「貸しって……寝落ちしただけだろう?」
──お待たせいたしました。
席に着く爻の前に、ホットコーヒーが差し出される。
「あれ? まだ注文して……」
「あ、あの……私がしておきました。でも、コーヒーでよかったですか? 何か他の……」
「いいえ。ちょうどコーヒーが飲みたかったので、ありがとうございます」
どこか満足気に2人のやりとりを眺める万理華。
「……ふぅ、それで? 何で万理姉は艾さんと一緒なんだ?」




